恋しき人~天門の先~第四十話 | シンイ~信義に夢中

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村への襲撃の一件後、寺を訪れる者が増えた

ミノが必死にウンスの存在を隠そうとしたが時既に遅く寺へ怪我人を運んだ兵士達や助かった村人達が天女が瀕死の者を生き返らせたと話し、町でもっぱら噂になっていたからだ

和尚は困っている者達には門を開いていた為、病を抱えているが貧しく町医者に診せられない者達は、こぞって寺へとやって来た

普段はミノが診察をしウンスは親を亡くした子供達の世話をする
寺は平穏に見えた

その日までは…

助けて下さい
ある日、子供を抱えた若い母親が寺へと駆け込んできた

三日前から腹が痛いと…
見ると額からは脂汗が滲み意識は無いが微かに何か呟いている

早よう 此方に
ミノは診察台へと子供を寝かせると胸元を開いた

どこら辺が痛むと?
胃の腑の辺りからぐるりと腹を押さえていく
指先に気を集中させるミノの顔は徐々に緊張の色を深めた

何故直ぐに連れて来なかった
咎めるような口調に母親は泣きながら訴える

町の医者に診せたのです
医者は、ただの食あたりだと薬を頂いて、でも一向に痛みは治まらなくて
お願いします
この子を…この子を助けて下さい
母親は跪く(ひざまずく)と何度も何度もミノに頭を下げた

私の手には負えぬ
ミノが呟いた言葉が母親の耳には届いていた

そんな…
母親は力無く泣き崩れミノは自分の非力を痛感する

母なら…

えっ?

いや…あの方なら…助けられるかもしれぬ
暫し待たれよ
ミノはウンスをこれ以上、人前に出したくなかった
だが助けられるかもしれぬ命、見捨てることは出来なかった


手術が必要ね
子供を診たウンスは直ぐにミノに指示をだした

手術?
聞き慣れぬ言葉に母親は訝しげな顔で尋ねた

お腹の中で臓器が破れかけて大変な事になっているの
早くお腹を開いて縫わないと
ウンスの説明を聞いた母親は発狂した

腹を開くなんて、あの子を殺す気なのね
返して、連れて帰るわ

お待ちください
このままでは、臓器が破れこの子は直に死にます
一刻を争うのです
この方を信じて任せて下さい
ミノは必死に母親を説得した

お願い… 私にはもう、この子しかいないの
お願い…助けて
母親はウンスにしがみついた

助けるわ 必ずね
だから、お母さんは落ち着いて和尚様と祈っていて
いつから居たのか和尚は母親の肩に手をやると二人に優しい笑みを浮かべそのまま、連れ出してくれた

さあ 先生 始めるわよ
ミノが憧れた母の姿がそこにあった



 



リクエストを頂いた『恋しき人』、ヨンは出てこないのに好きだと言ってくださった方、ありがとうございます

書くのを忘れているお話がいくつかあるので、ぼちぼち書いていきますね
リクエストを頂ければ優先して書きます

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