一言に「うつ病」と言っても、病態も、合う抗鬱剤も、同じ抗鬱剤への反応も、人によって大きく異なるのはご存じのとおりです。今回は、私個人の使用実感について書きます。
まず、私は、うつ病の診断を受けたのが二度目です。が、今回「再燃」ではなくて「発病」と言っていいと思います(多分)。それと言うのも、前回の治療は数年におよび、半端なところで止めてしまい、その後、希死念慮が残り、治療を一切受けない状態でしたが、それでも、就職、結婚、出産を経て、第一子の出産と授乳中は希死念慮がありませんでした。ゆえに、前回のうつ病は治癒したと考えてもよいのではないかと思われます。
さて、今回も亜昏迷で始まり、家人が声をかけても反応なしという状態でした。それで即、精神科へとはならず、何日か家で寝たきりでした。食欲もなく、相変わらずの希死念慮がありました。それではどうしようもないので、身内が精神科へ連れていき、朝晩25mgずつ(1日50mg、中等量投与)トレドミン単剤で治療を開始することになりました。睡眠障害があったので、ロラメットも処方されました。もっとも、ロラメットは、一応は眠れても2、3時間すると中途覚醒でおしまい。全然眠れないよりは良かったかも知れない程度でした。それでも、トレドミン服薬開始後、一週間くらいで起き上がれるようにはなったので、そのときは、それで良しとしたのでした。
ただ、8時間過ぎるころから「しおしお、ぷしゅ~」という感じで椅子に腰掛けていることさえできなくて横になるという状態でした。それで、増量になって25mgずつ8時間間隔で服用するようになったわけです。ちなみに量ですが、私は体重が40んkgしかありませんので、大概の薬は普通の成人よりも少なくて済みます。
トレドミンがこのように血中濃度を体感できるのは、私ばかりではないようで、kyupin先生のブログにも次のような記述があります。
http://ameblo.jp/kyupin/theme-10002693156.html
> ミルナシプランの臨床経験で感じるこ
> ととして、半減期が短く(8時間程
> 度)患者さんによれば薬の消退をはっ
> きり実感できるというものがある。つ
> まり
>
> 「朝・夕2回服用だと、午後から薬が
> 切れてきて、3時頃にはバッドになっ
> ちゃうんですよね」などという人がい
> る。
>
> つまり刻々と抗うつ効果が血中濃度に
> 相関して変化している。こういうのも
> ダウンレギュレーションで説明がつか
> ないものだと思っていたが、この新し
> い仮説でも明快に説明できない(と思
> う)。
さて、服薬すると一応は起き上がれるようになり、まずは家事のうち、簡単な掃除と食事の支度だけ再開。さらに、昼間椅子に腰掛けて、長年やって慣れているデータ入力などの軽作業ならばできるようになりました。しかし、仕事のうちでも、もっと頭を使うものは再開できませんでした。さらに、調子が悪い日は、日中椅子に腰掛けていることはできても、軽作業もできず、意味もなくメソメソしたり、外にも出られなかったりでした。そのうち、外には出られるようになっても電車に乗れなかったりで、全体としては徐々に良くなりましたが、だらだらと快復に時間がかかり、結局、何とか買物に行ったりできるようになるまでだけでも3か月くらいかかりました。
その後、まだまだ低空飛行ですが、そのまま生活して今に至ります。kyupin先生のところでエゾウコギについて知り、煎じ茶を飲み始めて1か月半ほど経ち、睡眠の質が上がったように思います。最近、ロラメットが要らなくなりました。今の実感としては、トレドミンは睡眠を整えるためにあるみたいな感じです。早朝、うとうとする悪い睡眠がなくなったので、昼間、活動すれば夜、眠くなります。
kyupin先生がエントリ『抗うつ剤と睡眠』で書いていらしたことを思い出します。
> なおSNRI(トレドミンなど)はレム
> 睡眠と深い睡眠に影響が少なく、浅い
> 睡眠を減少させ、中程度の睡眠を増加
> させる。こういうこともあり、眠剤と
> してトレドミン、3環系抗うつ剤、レ
> スリン、テトラミドのいずれかを併用
> して服用するのは悪くない選択なのが
> わかる。
私の場合はトレドミンが合っていたようで、それ以外の抗鬱剤は服用しませんでしたが、よくなってくると、昼間、低空飛行ながら活動するのにトレドミンが是非必要という感じでもなくなってきて、むしろ早朝の浅い睡眠をなくすのに効いている感じです。トレドミンの力を借りて、いわば「断眠療法」ができてきたようなものです。
波はありますが、全体としては徐々によくなってきているので、トレドミン単剤での治療が続いています。なお、希死念慮もない日があって自分でも不思議な気がしましたが、今では希死念慮のない日連続記録が2週間を超えて延び、今も新記録更新中です。
関連エントリ:
『トレドミンの使用実感(2)』
『トレドミンの使用実感(3)』