まだ間に合う!? 脱オヤジ化を図るための5つの心得- 書評 - 君がオヤジになる前に | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

まだ間に合う!? 脱オヤジ化を図るための5つの心得- 書評 - 君がオヤジになる前に


「オヤジ」という言葉は、いろいろな意味を込めて使える言葉ではありますが、個人的には、やはりネガティブな印象が先行してしまいます。
僕は今年で35歳になりましたが、「まだまだ若い」と思い込もうとする一方で、「そんな風に思うようになったこと自体がオヤジになってきた証拠だな…」と思ったりもしています。
自分への甘えがたたって体格的には間違いなくオヤジですし…。

と、そんな自己認識をしている僕にとっては何とも耳の痛い書き出しで始まるのが本書です。

「オヤジ」の定義: 僕が本書で定義する「オヤジ」とは、年齢的なものではない。あらゆること――家族とのつき合い方や仕事への接し方、服装や体型に至るまで――を、より良き方向へ改善しようとすることを放棄してしまった者たちへの表現だ。(p.2)

嗚呼、「あらゆること」の改善を放棄してしまったわけではないですが(そうならば自己啓発書を読んで実践してみようなどと思わないでしょうし)、服装や体型など、明らかに改善の努力を放棄してしまっていることはあります(汗)
よく言えば「己を認識している」という言い逃れもできるかもしれませんが、明らかに悪化していくものを放置しているわけですから…。

本書は38歳を迎えた堀江貴文さんが、そんな「オヤジ」になんかなるなよ!と若い世代に贈る、堀江流人生論です。
ここで語られる「オヤジ」は、成毛眞さんが『大人げない大人になれ!』で書かれていたような「変化しないことにエネルギーを費やす大人」とも通ずるような気がしますが、同書ではそんな大人に自分を重ねることのなかった僕も、本書では「オヤジ」化しつつある自分を意識させられてしまいました。
(ちなみに、本書の著者である堀江さんも同書で「大人げない大人」として例に挙げられていました。)

それだけ身近でリアルな感じが本書の魅力でもあると思います。
と同時に、堀江さんはそんな「オヤジ」を「思考停止した人間」とも切り捨てていますので、何とか踏み止まって「脱オヤジ」しなければならないとも思わせてくれます。

本書は「25歳の君へ」「28歳の君へ」「32歳の君へ」「35歳の君へ」「38歳の君へ」と、一応年齢に沿ったテーマ別に章立てがなされていますが、脱オヤジ化を図るような人間は、年齢に関係なく、あらゆるところからメッセージを受け取れます。
そこで、ここでは「脱オヤジ化を図るための心得」として5つほどポイントを紹介させていただきます。

1. 一に情報、そして行動せよ

 自分の思考で情報をリサーチして、素早く行動を起こす。
 この時代に必要なのは、行動と提案だ。
 創造性を加えるか加えないかで、成績にも信用にも大きな差が出る。
 まず必要なのは情報だ。より多くの情報が、君の豊かなクリエイティビティを支える。(p.89)

堀江さんが想定しているレベルでできているのかどうかはわかりかねますが、基本的には僕もそう思って行動しています。
この辺りで、僕は完全な「オヤジ化」にないと自分を認識しているわけです。

このようなことを言われた時に、サラリーマンにありがちな反応として「そうは言っても会社がそうなっていないし…」とか「自分の役回りじゃないし…」といった組織を言い訳に使ってしまうという反応ではないでしょうか。
僕も組織人ですし、そう言いたい気持ちは理解できなくはないですが、そんなこと言っていたら仕事を面白くできないということを最近になって感じるようにもなってきました。
それに、そういう反応をする人に限って、年をとった時に若手の意見を潰すような名実共に「オヤジ」な上司になってしまうのかもしれませんよ。

2. パンツくらい自分で買え

 結婚後の恋愛に、ルックスの維持に、パンツの購入。
 君は、これらすべてを「面倒臭い」と片付けてしまうかもしれない。
 もしそうなら、残念だ。
 「面倒臭い」は、思考停止した人間の、自覚のない敗北宣言だ。(p.65)

ここが僕が「オヤジ」化している最大のポイントです(汗)
結婚以来(いやその前からですが)、ルックスの維持だとか洋服を購入するといったことにあまりにも気を遣っていませんでした。
(妻からも結構言われていますが、渋々、言われるがままに最低限従っているという感じです。)

個人的には、変えようと思って意識しても、さほど効果が期待できないことに一生懸命になることはどうかとも思っていますので、ことさらに一生懸命になるつもりはありません。
しかし、流石に今の無頓着ぶりはいかがなものだろう…と薄々感じてはいましたので、出来るところから変えていきます。
え? どこかって? それが「パンツくらい自分で買う」です(笑)

3. とにかく実行に移せ

 アイディアよりも圧倒的に大事なのは実行力だ。
 思いつきより、考えたことを努力して、形にした人が本当に評価されるのだ。(p.79)

堀江さんから「努力して」という言葉が出てくるのは意外でしたが(努力したかどうかに関係なく、形にした人が…という方が彼っぽい)、おっしゃる通りです。
僕たちは知識社会になって、知的アウトプットに価値がある! なんて言っているわけですが、それらは最後まで形にならなければ一銭にもならない、チラシの裏の落書きと同じかもしれません。
優れたアイディアは確かに大切ですが、形にできてナンボということを考えれば、実行力こそが真の価値をもたらすものともいえます。

思いついたことを思いついただけで終わらせず、きちんと形にしてみせるということを意識していくと、自然といろいろなことを考えたり、チャレンジするようになるでしょう。
そんな自分でいられるのならば、たとえいくつになっても、確かに「オヤジ」とは程遠い存在でもあるなと思います。

4. 好きなことに没頭せよ

 好きなことを仕事にするのだから、何だって犠牲にできるはずだ。
 常に思考を埋めろ。(p.110)

僕にも一時期、色々なことを犠牲にしてはいたけれど、とても充実して楽しい時期がありました。
それでも、「何だって」と言えるほどではなかったですし、そこまでできるほどに「好きなこと」って一体何だろう? と思ってしまう自分もいます。

そこを突き詰めるというよりも、何にでも好奇心をもって首を突っ込み、とことんまで考え抜いてモノにしよう! という意識を持つことで、結果として思考を埋め続けることができれば、いいのではないかと解釈しています。
(これは成毛さんの「大人げない大人」の条件でもありますが。)
ただ、今は正直、子どものことまで頭から離れて没頭し続けるようなことというのは考えにくいですが(笑)

5. 包容力を持て

 奥田氏の持っている魅力を、ひと言で言うなら「包容力」だった。
 できる人もダメな人も、大いなる愛で包み込む。優秀な人は当然評価して、一歩遅れている人も、ちゃんとフォローして生活の面倒をみてあげる。大家族の中心にいる、頼れるパパのような姿だ。
 包容力を持つ人は、自分が持っている力や才能を、惜しみなく仲間や家族に分け与えている。もっと言うと、能力のない人に奉仕できる。それが、幸福だと感じているんだ。(p.132)

念の為に断っておきますと、堀江さんは自分にこういった包容力があるとは思っていません。
そもそもそんな発想はないとまで言っています。
それでも、こうした発想をもつ人たちと、その行動をリスペクトする気持ちは十分に伝わってきますので、ここでは脱オヤジ化のための心得の一つに加えさせていただきました。

最近読んだ本ですが、『浜矩子の「新しい経済学」 グローバル市民主義の薦め』で出てきた「君富論」という考え方にも似ています。
僕自身、こんな境地にまで達しているとは言いませんが、この考え方自体には共感できます。
実のところ、僕が目指すところというのはこういう人物像、そしてそれを活かした仕事なのだろうとも思っていますから。


「オヤジ」になんかなりたくない20代~30代の若手ビジネスパーソン、もしかしたら「オヤジ」に片足突っ込んでしまっているかもしれない30代以上の中堅ビジネスパーソンにお薦めします。
もちろん、腰までどっぷり「オヤジ」になってしまっている人でも、年齢や体力的なものではないのですから、遅くはないはずです(容易ではないでしょうけれど)。

これを読んでも「オヤジ」になる自分、「オヤジ」でいる自分を甘んじて受け入れられるのであれば、自己啓発なんて「面倒」なことは、きっとしていないでしょう。
でも、自己啓発に励みながらも、実は「オヤジ」化しつつある自分に気がついていないこともあるかもしれません。
そんな人にこそ、まさに「君がオヤジになる前に」読んでおいて欲しいと思います。


■ 関連リンク

著者ブログ: 六本木で働いていた元社長のアメブロ
著者Twitter: @takapon_jp


■ 基礎データ

著者: 堀江貴文
出版社: 徳間書店 2010年10月
ページ数:223頁
紹介文:
迷える「君」に贈るこの時代の知恵とルール

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堀江 貴文
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