■書評■ まな板の上の鯉、正論を吐く
ホリエモンこと堀江貴文さん。
著書やブログ、Twitterでのツイートなどを読んで思うのは、やはり僕はこの人の考え方は好感が持てる面が多いなあと思う。
世間的には評価の分かれる方だと思っていたけれど、最近読んだ辛坊治郎さん・辛坊正記さんの『日本経済の真実―ある日、この国は破産します』の中に、「現代日本の三悪人といえば、小泉、竹中、ホリエモンということで世の中の多くの人は納得しています。(同書p.152)」という記述があるくらいなので、もしかすると僕は少数派なのか!?
だからと言って、僕の彼に対する評価(上から目線っぽい単語で申し訳ないが)が変わるわけではないけれど。
本書は、現在、ライブドア事件で最高裁の判決を待つ状態にある堀江さんが、さりとて正論を発信し続けよう!という気持ちで、煩悩と同じ108の質問に答える形で、ビジネス・マネー・政治・事件・交遊術・未来についてまとめられている。
相変わらずの堀江調が全編に亘って炸裂しているのだが、この彼らしい歯に衣着せない物言いがいい。
意識しているわけではなく(いや、敢えて歯に衣着せようという意識をしていないという意味で意識しているとも言えるのだが)、恐らく思ったことをストレートに表現しているだけなのだが、それによってメッセージがシンプルに伝わる効果があると思う。
影響を受ける必要なんて全くないと思うけれど、僕自身、そうだよなと共感できる点を中心に、彼の「正論」の一部を紹介してみたい。
なかなかここまで割り切って考えることは難しいと思うけれど、正論だとも思う。
僕自身は、休日にまで時間を割こうと思えるような「友人」関係を同僚と築いてはいないし、積極的に築こうとも思っていない。
ただ、一緒に仕事をしていく中で、結果として「友人」になることまで排除するつもりは全くないけれど。
最近、好きな仕事というか面白い仕事のウェイトが増えてきて、転職などの考えが自分の中で一時的に後退している理由も、この点にあると思っている。
僕自身の身に実際に起こったわけではないけれど、このことを実感する出来事は経験がある。
この考え方が出来る人というのは、やはりベンチャービジネスを興すような、起業家的な発想が出来る人だと思うし、こうでないと「成功」は覚束ないのではないかとも感じている。
この考え方は、『ツイッターノミクス TwitterNomics』に共通するところであり、併せて読んでおくとよいと思われる。
※参考: ■書評■ ツイッターノミクス
これなんて常識的な考え方だと思うんだけどね。
企業活動にも政治活動にも、その先に実現しようとするビジョン・夢が重要であることは、僕自身、ブログの記事の中でも何度も触れてきたつもり。
エコだとか言って新商品を宣伝されても全然響かない。
その新商品が実現してくれる、僕らの生活における新しい価値を求めている。
アップルのiPadはまさにそのことを如実に示してくれていると思う。
ここまで言い切れるところが堀江さんっぽい。
夢は大切だけれど、それを見せるだけではダメで、実現するための手段をきちんと冷静に捉えなくてはいけない。
ところで、僕は企業活動において「理念」が大切だと言っているし、強くそう思っている。
ただ、ここで堀江さんが必要ないと言っている類の「理念」は僕も必要ないと思っていて、要は僕の言っている「理念」は堀江さんが本書で言っているところの「夢」や「理想」に近いもの。
体裁とか文言とかそういうことは二の次にして、胸の内にある熱い想いであり志のことなので、単にかっこいい「理念」なんてものの必要性は重視していない。
そういう意味で、この堀江さんの考えには共感できる。
今回、本書を読んで付箋を貼って抜き書きした箇所はかなりあるのだが、4点を紹介させていただいた。
ニュートラルに読めば、どれも常識的であまり異論を生まないような考え方なんじゃないかと思うのだが…。
とかく世の中は「正論」を思ったままに貫き通すことは難しいようで。
同じこともオブラートに包んで、遠まわしに、味方を作って周囲を固めながら浸透させていけば違うだろうけど、そういう生き方を選ばない堀江さんって、今の世では「不器用」なんだろうなと思う。
「正論」だからこそ生まれる軋轢を、放置しないで一人ひとりが考えていくことで、世の中が動いていけばいいと思う。
賛同なんてしなくてもいいけれど、「正論」をきっかけに、自分自身でも考えてみるきっかけとしてみてはどうだろう。
各種メディアから溢れ出る情報に流されて溺れてしまいそうな人にこそ、お薦めしておきたい。
■ 関連リンク
堀江貴文オフィシャルブログ: 六本木で働いていた元社長のアメブロ
著者Twitter: @takapon_jp
■ 基礎データ
著者: 堀江貴文
出版社: 洋泉社(新書y) 2010年4月
ページ数: 191頁
紹介文:
ホリエモンが至った「新たな境地」とは?
最高裁の判決を待つ身(まな板の上の鯉)ながらも活発に発言を続ける彼の頭の中に去来する思い――。
政治や仕事から事件のこと、プライベートな話題まで、縦横に、濃密に語りつくす!
「クビにしないように採る」のも企業の責任、僕の経験上、返済できる金利の上限は5%、今の日本は国家が借金したお金でGDPを支えている、核武装して周囲に摩擦を生むくらいなら今のままで十分……ほか彼の口から出る意外な正論に刮目せよ!
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『まな板の上の鯉、正論を吐く』『格差の壁をぶっ壊す!』