■書評■ 「数字」は語る 3分で読み解く決算書入門 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ 「数字」は語る 3分で読み解く決算書入門

本書は著者の望月実様より献本いただいた。
まずは、厚く御礼申し上げたい。

僕は中小企業診断士の資格を保有しているけれど、本記事執筆時点で業務休止届を出しているし、会社内部の経営企画業務をメインとした仕事をしているため、「決算書」に関連するプロフェッショナルとは言えない。
ただ、金融機関における融資営業、貸付審査担当者としての経験もあるし、もちろん診断士としての知識もある。
そういう意味では、本書で想定されている読者層よりもやや外れている気がする。

僕が本書を読んでもらいたいと思った読者層は色々いる。
まずは、法人営業担当者が営業対象となる法人をよく知るために活用してもらいたい。
また、すべてのビジネスパーソンが、せめて自分の勤務する会社あるいは、転職を希望している会社の状況くらいは把握できる程度になるために活用してもらいたい。
(ただし、これらについては決算を開示していないオーナー中小企業が相手では難しいが。)
最後に、株式投資を行う個人投資家の方々に、自分の買っている商品の内容が分かるくらいには決算書が読めるようになるために活用してもらいたい。


本書でも著者の望月さんが「まえがき」で次のように書かれている。

本書で手に身につける力:これからのビジネスマンに求められる能力は誰もが手に入れることができる情報から価値を生み出す知的生産力です。(p.6)

特に上場会社の決算内容など、かなり詳しい内容まで誰にでも手に入れることができるわけで、会計的な専門用語を読みこなそうと思ったら相当大変だけれど、僕が本書を読んでもらいたいと思った読者層の方々であれば、というかほとんどの人々にとって、完璧に決算書を読みこなせる必要などないと思っている。
その点は、本書でも触れられている。

目的に合った見方:決算書を読む目的は、その人が置かれている立場によって変わってきます。(p.23)
決算書を読む目的を明確にすれば、ポイントとなる数字を拾うだけで業務に必要な情報を手に入れることができます。(p.26)

まさにこの通りなのである。
全員が全員、決算に関する細かな知識まで習得して、隅から隅まで読み解けるというのならそれに越したことはないけれど、そんなことは不可能だし、必要もない。
自分にとって必要な情報が決算のどこから得られるのか、ということを知ることがまず第一に行うべきことであり、解釈の仕方を学ぶことがその次にくる。

本書で例として挙げられている営業マンの方々は、まさにそれを具現化されて成功されている例。
多くのビジネスパーソンにとって参考になるに違いないし、本書はそのための格好の入門書になっている。


本書を読み解くために会計や簿記の知識はさほど必要ではないと思うが、さすがに「貸借対照表って何ですか?」とか「営業利益って何ですか?」いうレベルの方には辛い。
だが、決算書の「見方」(読み方ではない)の基礎的な知識さえ身についていれば心配はない。

とはいえ、そうした知識等なしで「3分で読み解く」ようには勿論ならない。
というか、知識だけあってもならない。
本書で言う「読み解く」とは「決算書の数字とその裏側にあるビジネスとのつながりを見抜くこと」である。
そのためには、本書でも紹介されているようなトレーニングは必須であるが、ビジネスに興味のある方であれば楽しんでできることだと思うし、何より本書を参考にしながら取り組めば、ハードルは思ったほど高くないはずだ。

個人的には、決算書の読み方を身につけるためには、経験を積むしかないと思っているが、本書もまさに同じ主張を元にして書かれている。
僕は仕事としてストイックに淡々と決算書を読み続けては、実地で確認するという機会に恵まれたのだが、そうではない大多数の方々でも、本書で要点を学べば、目的に適った読み方は十分に身につけられると思う。

知識としての決算書の見方ではなく、使えるスキルとしての決算書の読み方を身につけたいと思う方は、是非読んでいただきたい一冊だ。


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■基礎データ
著者: 望月実
出版社: 日本経済新聞出版社 2010年1月
ページ数: 179頁
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