【書評】The 決断
誰の人生にも、何度かは、とても大切な決断をしなければならないときが必ず訪れる。
例えば、僕であれば、これまでにも「転職」だとか「結婚」だとか、大切な決断をしてきたつもりだし、恐らくはこれからも何度も「決断」しなければならない場面に出会うだろう。
その時に一体何を拠り所にして自分は決断をするのか・・・。
本書は、当時の日本最短上場記録を打ち立てた大久保さんが、ご自身の経営者として、一人の人間としての人生を振り返りながら、「決断」における大切なことを教えてくれている。
本書で紹介されている大久保さんの決断において印象的なエピソードを2つ紹介させていただく。
一つは、若かりし頃に、かの孫正義氏と一緒に手掛けたNCC・BOXの普及に関する取り組み。
これは書籍紹介の一文にも使われているけれど、京セラの稲盛会長とのやり取りの末に、自分達の信じるところに拠って、何十億という、それこそ目の前の現金を蹴ったエピソード。
何十億という現金を蹴った二人は、実は既に何十億という借金を背負っていて、本当であればのどから手が出るほど欲しいお金だったはず。
それでも、京セラとの取引を行わないという「決断」をしている。
もう一つは、独立前の会社を退職するときのエピソード。
ご自身の信じる「仕事」というものとのギャップにもがき苦しんだ末に、信じる道を行くために退職を決意する。
ギャップに気づかない振りをして、周りと馴れ合っていれば、やがては相応の給与がもらえるという、受け入れ難い道を歩くことはできなかった。
この点は僕も転職した時に、同じようなことを考えて転職に踏み切っているので、自分の経験と重なって共感してしまったところだ。
こうしたこと以外にも、大久保さんはこれまでの人生において様々な大きな決断をされてきている。
その根底にある「決断」の拠って立つところは何なのかという点を、僕らもしっかりと心に刻んでおきたい。
王道、或いは、正道という言葉があります。堂々と、正直に、良心に照らしたときにやましいところのない行動をとること。
この、誰にでも分かる、王道と邪道という考え方。実はこれが、正しい決断・成功する決断を導くための絶対的な判断基準になるのです。つまり、王道の選択をすれば、必ずその決断は実りある結果をもたらすということです。(P.68 一部省略)
決断をしなければならない場面であったり、決断をしなければならない内容というものは人それぞれ異なるものだけれど、この「王道に従う」という考え方は忘れたくない。
この王道の選択を導くものは、実は僕らが一番奥深いところにもっているはずの「善を求める働き」であり、そういった「魂」の基準に従うことに他ならないという。
僕は、この「王道」だとか「魂」だとかに基づいて、それがそれぞれの人の中で根付き、それぞれの人に特化して具体化していったものが「理念」や「志」なんだと感じた。
共感できる理念や志は、こうした人間存在の一番奥深いところにある善を求める働きに根差しているからこそ、人々に受け入れられるのだろう。
さらに、もう一つの決断の基準が「余命3ヶ月の仮定」。
こうした「死」を意識した考え方というのは、自分本来の王道や魂、またそれに基づく志を見つめるための手段だと個人的には感じているが、大切な場面で「余命3ヶ月だとしたら・・・」と仮定することで、決断を先延ばしにすることもなくなるし、本質的なことを見つめられるようになる。
この自分にとっての本質的なことを見つめられるということは、とても大切なことだがなかなか出来ないことだ。
正直、僕などはぶれぶれで困ってしまうほどだ。
そんな僕のような人間に対して大久保さんが提案されているのが、「魂」の5秒間テストだ。
行うことは極めて単純で、次の2つの質問を、暗闇の中で目を閉じて、それぞれ5秒間自分に問いかけるだけ。
「この社会の中で、自分の存在価値はどこにあるのか?」
「今、自分が歩いている人生に満足できているか?」
恥ずかしいことだが、正直に白状すれば、僕はこの5秒間テストに答えられなかった、つまりは、「魂」の声に本当には耳を傾けられていないということだ。
素直に大久保さんの提案に従い、毎日寝る前にでも、何度でも繰り返していきたい。
本書は経営者としての理念に基づいての判断などについての言及が多く、Amazonでも経営にカテゴライズされていたりするけれど、僕の中では完全に「人生論」。
経営者じゃなくても、ビジネスパーソンじゃなくても、誰にでも訪れる人生における大切な場面において、正しく、後悔なく、向き合って「決断」するために、身につけておきたい考え方を教えてくれる一冊だった。
【関連リンク】
【第十五回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー】
本レビューは 本魂!(ホンダマ) が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガーの独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき、感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。
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【基礎データ】
著者: 大久保秀夫
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン 2009年8月
ページ数: 192頁
紹介文:
そのとき、まだ二十代の僕らは、目の前に提示された何十億というお金を蹴っ飛ばすという、大きな大きな決断を下した。そして、それは、以後何百回と続く決断の始まりだった--
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