【書評】馬券会計学
最初に断っておきたいのだが、僕は競馬はやらない。
学生時代や独身時代などは、競馬を含めた所謂「ギャンブル」を色々とやったことはあるけれど、それぞれやらなくなって久しい。
そんな僕がなぜ本書を手に取ったのか。
端的に言ってしまえば、有名書評ブロガーである 鹿田尚樹 さんが激賞し、主催のセミナー講師に著者の丸の内龍太郎氏をお呼びすると聞いたので、これは一度読んでおかねばなるまいと思った次第である。
丸の内さんは、本書を書いた目的を
「まだまだ「ギャンブル」というネガティブなイメージが強い競馬だが、見方を変えれば確実な「投資」になりうることを、そして競馬というものの本質を、より多くの人に知ってもらえたら」
と書いているが、果たして競馬は「投資」足りえるのだろうか。
ちなみに、Wikipediaを見てみると
金融における投資は、投じたお金が経済活動に使われることによって得られる利益を、資金提供の見返りとして受け取ること。 例えば、証券(株式、債券等)購入を通じて提供されたお金で、企業が工場を増設して利益をあげ、その利益が企業価値の増大によるキャピタルゲインや配当として、投資家に還元される場合が該当する。 不動産に対する投資も、売買相手の損失によって儲けるのではなく、購入資産の利用によって儲けることを期待する場合は、投資とみなすことができる。高いリターンを目的に、リターンに見合わない、より高いリスクを取る投資のことを、投機と呼ぶ。
一方で、売買主体のリターンの合計が必ず0かマイナスになる対象への行為はギャンブルと呼ばれる。例としては、宝くじ、公営競技、パチンコなどが挙げられる。ただし投資のうち、株取引や先物取引などの投機的性格が強い投資についてはマネーゲームと言われることがあり、広い意味でのギャンブルに含められる場合もある。
とされており、ネガティブなイメージが強いどころか、はっきりと「ギャンブル」に分類されている。
そんな定義の話はさておき、丸の内さんのアプローチは徹底している。
馬券の儲けを増やすためには、①払戻額を極大化する、か、②購入額を極小化するの2つの方法を考えなければならないとし、ビジネスにおける売上と費用の考え方と同じだとする。
そして、「3つのルール」の徹底が馬券で儲けられるか否かの鍵を握る。
3つのルール
その1 「新馬戦」「未勝利戦」に絞って勝負せよ
その2 穴狙いに徹すること
その3 勝負レースを絞ること
さて、この3つのルールだが、実は競馬だけに限らず、ビジネスの場面やブログ運営でも同じようなことが言えると思っている。
競馬という土俵は、参加するだけで胴元に25%を召し上げられた上で勝負しなければならないという、通常のビジネス以上に厳しい前提条件が付けられている。
本書はビジネス書とは言い難い面があるが、こうした一分野に特化して、「成功」を果たしている方の考え方には、やはりどこか通ずるものがあるのかもしれないと思わされる。
そして、その点こそが、本書の読みどころではなかろうかと思うのである。
丸の内さんは公認会計士であり、本書中にも「監査」だとか「粉飾」だとかの会計用語は出てくるし、ビジネスも分かった上で書かれているけれど、基本的には本書は「会計学」を学ぶものではなく、「馬券での儲け方」を学ぶためのものである。
ただ、「競馬=ギャンブル」としてアレルギー反応を起こしてしまっている人も、一度ビジネス視点で読んでもらうと根底に流れる共通した考え方に、新たな気付きが得られるかもしれない。
基本的には程度の差こそあれ、競馬にお金を投じている人は一読の価値がある本なのではなかろうか。
そのほか、「馬券」という言葉だけで敬遠してしまうことなく、様々な場面で共通する「勝てる」考え方を落とし込みたい人にもお薦めの一冊。
【基礎データ】
著者: 丸の内龍太郎
出版社: KKベストセラーズ(ベスト新書) 2007年11月
ページ数: 208頁
紹介文:
公認会計士だから気がついた競馬の本質。
●さおだけ屋も馬券も「儲けのカラクリ」は同じだった。
●前走「12着」の「粉飾」を監査せよ。
●パドックはレースが終わってから見るものである。
●ディープインパクトと一生未勝利馬が一緒に走った新馬戦の意味。
●午前中だけのレースのオッズにだけある「歪んだ数字」。
●有馬で強豪ハーツクライの単勝が17倍もついた「会計的根拠」。
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