【書評】シンプル族の反乱 | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

【書評】シンプル族の反乱

最近の若者はモノに対する欲求が薄くなっている・・・といった主張を目にすることが増えてきた。

そういった時の例示的に使用されるのが、「車」である。

昔ほどに若者が車に対する憧れを失い、欲しがらなくなっているという話。


そういった社会情勢の変化、価値観の変化による、今の時代の消費者分析といった内容が本書になろうか。

著書は、今の時代を牽引する新しいタイプの消費者層を「シンプル族」と名づけ、シンプル族の嗜好、消費性向などを分析している。



では、シンプル族とは具体的にどのような価値観を持つ消費者像なのか。

少し長くなるが抜粋させていただく。


生活原理

1. 物をあまり消費しない

2. 手仕事を重んじる

3. 基本的な生活を愛する


志向性

1. エコ志向

2. ナチュラル志向

3. レトロ志向・和志向

4. オムニボア志向

5. ソーシャル・キャピタル志向


実態(生活インタビューによる類型)

1. 無駄が嫌い(”必要ない”物に敏感)

2. 自然なものが好き(工業製品、特にプラスチックが嫌い)

3. 生活の細部までこだわる

4. 道具を本来の用途とは違うことに使う

5. 自分で物や料理を作るのが(昔から)好き

6. 文化や歴史を感じさせるものが好き

7. 古い物が好き(新奇だが中身のない物は嫌い)

8. 父母や祖父母から受け継いだ物を使う

9. いろいろな人と出会いたいと思っている

10. 職人が好き

11. 日本が好き

12. 世界遺産に感動する

13. 「人」につながっているモノに価値を感じる

14. 間に合わせのモノは買わない

15. 自分にとって”過不足ない”、”ちょっと不足”な暮らしが快適

16. 自分が見える範囲でシンプルに暮らしたい

17. 賢くよい物をもらう

18. なんとなく、縁起物、守り神を持っている


著者は、こうした特徴を挙げて、「シンプル族」の理念型を描き出している。

これにぴったりの人間がいるわけではないが、これらの特徴が強い人が「シンプル族」ということになる。


ちなみに、僕はあまりあてはまらず、対比に使われる「バブリー族」とか「モダン派」といった、旧来型の方がしっくり来る(汗)

本書に「共感します!この価値観をぜひ理解してください。」という推薦文を寄せている勝間和代さんも、どちらかと言えばシンプル族ではなく、モダン派の要素が強いと著者は分析している。



こうして「シンプル族」の特徴を描き出した上で、具体的な事例を使った分析等を進め、企業のマーケティングや商品開発等においては「シンプル族」を意識した取り組みが重要だと説く。


しかし、傾向としては何となく理解できるものの、僕にはどうも腑に落ちない。

それは僕が「シンプル族」的な価値観をあまり共有していないからだろうか。

それとも、アンケート調査結果を多用しているからだろうか。(社会調査は、知っていれば自説の展開に都合のいい結果を容易に導くことができる。それは、僕自身経験がある・・・。)


ただ、マーケティングや商品開発のように、消費者動向を把握する必要のある人にとっては、一つの見方として大切な視点であることは間違いない。

若者向けの企画などで、自分の企画を通したい人にとっても、有力なバックボーンを形成してくれる可能性がある。(逆に全く駄目だと気づかせてくれる結果になるかもしれない。)



個人的にもっとも興味を惹かれたのは「無印良品の分析」という一項目。

その中に、またしても「ストーリー性」が出てくるのだ。

企業経営、商品・サービス開発等におけるストーリーの重要性は、これまでに紹介してきた様々な書籍でも触れられている。

【書評】小さな会社のブランド戦略

【書評】価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ


今、僕の関心事は大きくこの点に向いているのだなということを改めて認識させられてしまった。

なお、無印良品の「ストーリー」については本書で直接確認してもらいたい。



【基礎データ】

著者: 三浦展

出版社: ベストセラーズ 2009年7月

ページ数: 216頁

紹介文:

自動車販売は減っているが自転車は人気だ。百貨店は苦しんでいるがユニクロは絶好調だ。エコ志向、ナチュラル志向、レトロ志向、和風好き、コミュニティ志向、先進国より世界遺産、農業回帰…

新しい価値観が台頭してきたのだ。

シンプル族が日本を変える!


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