アトピーはどれだけ遺伝と関係あるの?
こんにちは。橋本です。
アトピーがどれだけ遺伝と関係するのかは、世界で数多くの調査がされています。
たとえば、1つの例では、
・ 両親(片方)がアトピー → 子どものアトピー率が約2倍
・ 両親(両方)がアトピー → 子どものアトピー率が約3倍
と報告されています。
遺伝の影響は証明しにくい
しかし、両親から子どもへ遺伝しているかどうか、正確に判定する。
これって、けっこう難しいんですよね。
髪色の遺伝のように、「金髪か、黒髪か」のように、見ただけではっきり判定できないのがアトピー。
そのため、両親から子どもへの遺伝について、世界中で多数調査されているものの、その結果は大きくばらついています。
遺伝子レベルの研究でも、アトピーに関連する遺伝子が26か所の染色体で報告されていますが(参考文献 1 )、どれだけ遺伝するのかは、まだ明確に答えることはできません。
双子では
もう1つ、遺伝について、双子を調べた調査があります。
双子がともにアトピーを発症する確率を調べたものです。
・ 一卵性双生児では、72%の確率
・ 二卵性双生児では、23%の確率
と、およそ3倍もの開きがあるので、「遺伝が関係する」ことだけは間違いなさそうです。
ただ、強調したいのは、一卵性双生児の確率をみてもわかるように、「遺伝のみでアトピーが発症するわけではない」ことです。
さらに、ここ数十年間で、アトピーになる子どもが増えたという事実をみても、アトピーは遺伝の影響だけではないことは、あきらかです。
生まれたあとの「環境」が大切な理由
アトピー患者の家族がアトピーである割合を調査したもの(参考文献 2 )では、
兄弟・姉妹 > 母親 > 父親
という結果が出ています。
兄弟・姉妹でいちばん多く、父親がいちばん少ない。
ここから予測されることは、子どもは父親より母親と過ごす時間が長い。
そして、親よりも、兄弟・姉妹とのほうが同じ環境にいる時間が長い。
つまり。
アトピーが発症したり、長く続いたりするのは、遺伝が関係するものの、成長していく段階での「環境」の影響がより大きいのではないか、と考えられるわけです。
遺伝だからとあきらめるよりも、できる範囲で対策をおこなうことが大切なんですね。
親が、アトピーのことをよく理解して、日頃から悪化因子への対策をおこなうのはもちろん。
それを子どもが大きくなってきたときに、自然に自分でできるようにしてあげる。
そういう習慣は、後からみると、子どもへの大きなプレゼントになります。
参考文献:
1) Chikako Kiyohara, et al:Genetic Susceptibility to Atopic Dematitis, Allergol Int, 57(1): 39-56, 2008.
2) Diepgen TL. Atopic dermatitis: the role of environmental and social factors. J Am Acad Dermatol 2001; 45: S44-S48.