ただ頂くだけでは申し訳なかったので、その絵にあわせてSS書いてみました。
sunny様の素敵絵のイメージを壊してなければよいのですが…。
読んでやろうという方は以下から後編をどうぞ。
楽屋に辿り着いたキョーコは座り込みため息を吐いた。
もう!ホントになんなのよ!
っていうか“来年は”って来年も来るつもりなの!?
…敦賀さんが傍にいればこんな事ないのに。
来年は敦賀さんの傍に避難…、いやいやいや、忙しい大先輩にそんな迷惑掛けられないわ。
そんなことを考えていると、コンコンコンとドアをノックされた。
「はーい。」
立ち上がってドアを開けると、そこには先ほどまで思い描いていた人物が思いもよらぬ格好で立っていた。
「最上さん、おはよう。少しお邪魔してもいいかな?」
吸血鬼の格好をした蓮に、思わず言葉も発せず見入ってしまっていたキョーコは声を掛けられて我に返った。
「はっ!おはようございます。どうぞ入ってください。」
我に返ったキョーコは、先輩に挨拶もせずドアの前に立ちっぱなしにさせていることに気付き慌てて招き入れる。
さすが敦賀さん。
こんな胡散臭…、もとい奇抜な衣装でも格好良く着こなすなんて。
そんな少し失礼なことを思いつつ、蓮に衣装の理由を尋ねた。
「その格好どうなさったんですか?」
「ああ、今まだ撮影の途中なんだ。
ちょっと機材トラブルがあって休憩になったから一旦楽屋に戻ろうとしてたところに、最上さんの名前を見つけて寄ってみたんだ。」
「そうだったんですか。わざわざすいません。」
ぺこりと頭を下げるキョーコに蓮は似非紳士スマイルで声を掛ける。
「最上さん、“Trick or treat?”」
「へ?」
流麗な発音で言われ、一瞬意味を取り損ねる。
「あっ!すいません!お菓子何もないんです。」
でもすぐに意味に気付いて再びぺこぺこと頭を下げる。
その返事になぜか蓮の似非紳士スマイルのキュラキュラ度が増す。
「へぇ…。
ストーカー君にはプレゼントしていたみたいだけど。」
「見てたんですか!
あれは不可抗力です!いきなりやってきて難癖つけられたんです。
折角モー子さんと食べようと思ってたのに…。」
落ち込んだように言うキョーコに納得したのか蓮のキュラキュラ度が落ち着いた。
「それは災難だったね。」
「そうなんですよ!
いったい何のつもりなのかしら!」
キョーコはホッとして普段どおり話し始める。
話を聞いていた蓮は、ふとキョーコの左斜め後ろに目を向けると…。
「あっ!」
蓮は何かに驚いたように目を見開き声を上げた。
「え?」
キョーコが蓮の視線を追って振り返るが、特に何も無い様に見える。
何に驚いたんだろうと首を傾げていると、視界の右端を黒いものが動いたかと思うと…。
チューーーーッ
という音と共に首筋にチリッとした痛みを感じた。
それからそこをぺろりと舐められたことでキョーコは何をされたのか気付いて、がばっと後ずさり首筋を押さえた。
「な、な、な、何を…?」
真っ赤になってパクパクと口を開け閉めして尋ねる。
そんなキョーコに対し蓮は飄々と応える。
「俺“Trick or treat?”って言ったよね?
今は吸血鬼だからね。吸血鬼にとって甘い物を貰ったんだよ。ご馳走様。」
そうにこやかに言うと、驚愕の表情で固まっているキョーコを残し上機嫌で去っていった。
「いや~~~~~!!ハロウィンなんて大ッ嫌いよ~~~!!」
蓮が去った楽屋には、思いがけなく魔物の餌食とされたキョーコの叫び声が木霊していた。
fin.