ただ頂くだけでは申し訳なかったので、その絵にあわせてSS書いてみました。
sunny様の素敵絵のイメージを壊してなければよいのですが…。
読んでやろうという方は以下から前編をどうぞ。後編は明日。
10月31日、それは魔物たちが跋扈する日。
ぞっくぅっ
仕事の為テレビ局にやってきたキョーコは突然寒気を覚えた。
この感じは!
バッ、バッと警戒感もあらわに左右を振り向き周囲を確認する。
特に怪しい人影は見えない。
キョーコが安心して気を抜こうとした瞬間。
ふーーーーーっ
ゾゾゾゾーーー
項に息が吹きかけられ、鳥肌が立つ。
「なっ…!ぶっ!」
振り返って身構えようとしたキョーコは思わず吹き出した。
「あんたいったい何のつもりよ!?」
「何って今日はハロウィンだろう。だから“ジャック・オ・ランタン”だ。」
そこにはジャック・オ・ランタンを被り、黒い服に黒マントという衣装のレイノが立っていた。
顔が描いてあるオレンジカボチャの口部分から顔を出している為“ジャック・オ・ランタン”というよりもオレンジカボチャのお化けに食べられているように見える。
こんなへんてこりんな格好をしているのに本人は全く動じることもなくいたって普通の表情をしている。
さすが魔界人。相変わらず訳が分からないわ。
「キョーコ、“トリック オア トリート?”」
「はぁ?
なんであんたにお菓子なんてやらなきゃならないのよ?」」
手を差し出すレイノを一蹴する。
「ほう、じゃぁ“トリック”を選ぶんだな?」
ニヤリと笑ってスススッと近寄ってくるレイノに、以前怨キョが人質にとられたことを思い出し、身の危険を感じて慌てて鞄の中を漁る。
辛うじて入っていたのはキョーコが手作りしたクッキーだった。
後でモー子さんと食べようと思って作ってきたけど…。
仕方がない、背に腹は変えられないわ。
しぶしぶクッキーの袋を差し出すと、レイノは不服そうな顔をして受け取ろうとしない。
「普通のクッキーだな。もっと怨念が篭っている物がいい。」
「そんなこと急に言われたって準備してるわけ無いでしょう!」
相変わらずの無茶な要求をするレイノに切れて言い返す。
それでも飄々と表情を変えないレイノ。
しかし、突然ビクッと顔を引きつらせたかと思うとキョーコが差し出しているクッキーを受け取った。
「仕方ない、今日はこれで妥協しよう。
来年はちゃんと怨念が篭ったものを用意して置けよ。」
と言いながら逃げるようにフェードアウトしていった。
何だったの?いったい…。
立ち去るレイノを呆然と見送っていたキョーコは気付いていなかった。
これを目撃した人物がいたことを。