[SB2次]孤独の華 11 | 三日茶坊主

三日茶坊主

“スキップ・ビート”の二次創作メインのブログです。
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弁当を食べ終え、キョーコが弁当と一緒に持参したお茶を飲んで一息ついた時に、キョーコはぽそりと聞いてきた。

「芹沢さん達、お変わりありませんか?」

それまで何度か一緒にした食事中の会話で、芹沢や他の何人かがキョーコの力によって自分の世界に閉じこもっている事、その中で癒されて生きる事に希望が見いだせれば自然に目覚める事を聞いていた。

「そうだね、今のところ誰も変化は見られないな。
やっぱり気になる?」
「そうですね…。
私に出来ることはもう無いって分かってはいるのですが…。」

寂しげな笑顔で答えるキョーコを見て、久遠はキョーコの過去に思いを馳せた。

この子は、こうして心に傷を負った人達を放っておく事が出来ず、吸血の代価と称して“夢”という逃避場所を提供し、その後も気にし続けて来たのだろう。
それは俺に対しても同じで、彼女の力が及ばなかった分、こうして頻繁に会いに来るのかもしれない。

そう、彼女にとって久遠も芹沢達と同じなのかもしれないと気付いた途端、胸がモヤモヤしたもので埋められたような、何とも言えない気分になった。

いつの間にか彼女にとって自分は特別だと思い込んでいた。
でもそうではないのだ。

さっきの彼女の嘘も、久遠とキョーコの間に線を引かれた気がした。久遠はキョーコとは違うのだから踏み込んでこないでと。

あの慌てぶりと辛そうな表情から、能力者に対する吸血に何らかのトラウマがあるのだと分かった。
だから、キョーコが話を聞いて久遠を救ってくれたように、今度はキョーコをそのトラウマから解放してあげたかった。
しかし、無理に聞き出そうとすれば彼女が久遠の前から消えてしまうような気がして踏み込めなかったのだ。

キョーコはその場に根を張っていない、いつでも姿を消してしまいそうな、そんな諦観した雰囲気が彼女にはある。
無理にその線を越えようとすれば、伸ばした手をするりとかわして逃げてしまうだろう。

だから、芹沢達を思うどこか寂しそうな諦めた笑顔に焦燥感にかられる。
久遠に対しても、いつか同じように『もう出来る事がない』と寂しげな笑顔を向けるのだろうか。
そして、その笑顔を残して久遠の前から姿を消すのだろうかと。

しかし、キョーコにそばに居て貰えるよう手を差し出す資格が自分にあるかと問えば、久遠には否としかまだ思えないのだった。