サッカー少年14 インサイドキック(復刻版)
今 年の5月のことです。それまで私は息子がどんなキックでパスをしているか知りませんでした。てゆうか、気にしていなかったのです。キックとは、インサイ ド、インステップ、インフロント、アウトサイドなどのボールの蹴り方です。てっきり短い距離のパスはインサイドキックだろうと思っていたのです。息子の キックはインサイドキックではなくインフロントで引っ掛けるように左足先で蹴っていることが分かりました。蹴った後の左足が軸足の右足とクロスするなんと もへんてこりんな蹴り方です。この蹴り方で息子は器用にボールをねらった場所にコントロールします。しかし時々ボールが大きく右側にそれました。そこで正しいインサイドキックを私も学び息子と練習することにしたのです。
インサイドキックはボールキックの基本中の基本です。息子もすぐにマスターすると思っていましたがいつまでたっても全く出来ません。インサイドキックは股関 節の使い方があり初めては難しいようです。しかし息子が出来ない理由はそれだけではありません。息子はインサイドキックを覚える気が無いからです。なぜな ら息子は今の蹴り方のインフロントキックで上手くコントロールが出きると思っています。また3年間蹴ってきた蹴り方を否定されるので面白くないのでしょう。
そこで私は息子とコントロール対決をすることにしました。お互いの前にマーカを二個置きボールを蹴って間を通す試合です。さすがに自信がある息子のインフロ ントキックに素人の私のインサイドキックは勝てませんでした。しかし私はインサイドキックの蹴り方を学習しフォームを修正することで徐々に息子に勝てるようになったのです。
インサイドキックは魔法のキックです。10mだろうが20mだろうが私のキックはピタリと息子の足元に収まりました。近い距離なら息子の右足または左足を狙うことだって出きるようになったのです。こうしてコントロール対決で勝てなくなった息子のインフロントキックは封印しました。そしてここからが本当の息子との戦いが始まったのです。
3年間についた息子の蹴り癖は治りません。どうしても息子はインフロントで蹴ってしまいます。息子のキックが少しでもインフロントぎみになろうことなら私は 怒鳴り声をあげました。私が息子に浴びせた言葉です。「お前のパスは変な回転がかかっていてトラップしにくい。チームメイトは皆嫌がっているぞ。」、「強めに蹴ると必ず右にそれるだろう。」、「蹴った後に足を変にクロスさせるな。」、「大会の試合のシュートがなぜゴール右ポストの横に外れたか思い出せ。」なんてことを練習中息子に言っていました。また叱られてやる気が無い態度やふて腐れたときには私は自転車を蹴り倒し練習を中断し出勤しました。気の弱い息子はいつもべそをかいていました。毎日泣きながらのキック練習です。ご近所の方から怒られながらよくがんばっていると褒められるし妻には怒るのをやめてと 何度も言われたのです。
しかしインサイドキックが上手くなりません。私はあせりました。片っ端からサッカーの参考資料に目を通したのです。地面にはだしになり靴を手に持って蹴り方 を示したことも何度もあります。そんなある日のことです。息子の蹴り方の名称が分かったのです。そして息子に言いました。「君の蹴り方は、“オンナゲリ”と言われているのだぞ。」(女性の皆さんすみません。)「お前の蹴り方はオンナ蹴りだ。」まだ小学2年生なのに「オンナみたい。」に反応したのです。効果がありました。その日から息子はすすんでインサイドキックの練習をするようになったのです。
今思い返してもあの5月からの3ヶ月間は息子と私にとって試練の日々でした。7月で特別練習が終わりましたが息子のインサイドキックはまだ不恰好です。最近 私が得たインサイドキックの蹴り方によるとヒザを支点にして振らなけばならないそうです。息子は足の付け根を支点にして振ってしまっているのかもしれません。今朝の練習の時に息子に注意してみました。やはりまだ不恰好です。でもあわてる必要はありません。息子と二人で毎日練習して少しずつ修正し上手くなっていけばよいのですから。
では、また。
コメント追記
息子の親子練習で私が怒鳴った回数が一番多かったのはこのインサイドキックの練習だったでしょう。小2の息子はいつも涙目でした。私は簡単なインサイドキックが出来ない息子にイライラがつのっていたのです。なぜに足を直角にして出せないのか。なぜに足を振り回すのか。まったく分かりませんでした。へんてこりんな蹴り方をしあがって。怒りまくりでした。3ヶ月くらい息子を泣かせたある日、ふと私は息子のインサイドキックがどうでもよくなったのです。向きになって怒るのが馬鹿らしくなってきたのです。何をそこまで怒る必要があるのか。息子はちゃんとゴールを続けています。徐々に直していけばいいのです。あれから息子のインサイドキックの蹴り方を私は気にしたことがありませんでした。したがって現在の息子は正しいインサイドキックが蹴れているかは分かりません。