the TEAM(ザ・チーム) (集英社文庫)/井上 夢人

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☆☆☆
黒いサングラスをかけた派手な衣装のおばさん。この人こそ、今をときめく、霊導師・能城あや子。テレビ番組の人気コーナーを持ち、個別の相談は30分8万円にもかかわらず、5カ月待ちという盛況ぶり。悩みをぴたっと言い当て、さらに奥深くにある真実を探り当てる。恐るべし霊視の力…ではなく、実は彼女のバックには、最強、最高の調査チームがついていたのだ。弱きを救い、悪を討つ。爽快・痛快連作短編集。 (amazonより)

宜保愛子や細木数子など数年に世を席巻する占い師の類が出てきますが、彼女たちをテレビで見ているとたまに固有名詞まで当ててしまって、「おいおいそこまで的中させると事前調査しているってバレバレなんだけど…」なんて思うことも多かったですし、実際調査チームがいるなんて報道も過去にはありました。

本書に登場する霊導師・能城あや子は宜保愛子や細木数子並にブレイクしているわけですが、作中の彼女の占いが驚異的な的中率を誇るわけは有能な1人のマネージャーと2人の調査メンバーがいるからです。作品は主にその調査と調査によって浮かび上がる調査対象(=占う対象)のドラマがメインなわけです。調査方法は一方が追跡や潜入の実力行使で、もう一方がハッキングなどによる情報戦略をとり、この辺の使い分けが作品に広がりを持たせています。またドラマパートは解決までは引っ張る割には構図そのものは勧善懲悪に徹されており、この辺りもバランス感覚の良さを感じさせますね。最近ご紹介したエンタメ系短編集だと「嘘をもうひとつだけ」「ソリューション・ゲーム 日常業務の謎」は大きな論理の飛躍が見られるものや、逆に飛躍がなさ過ぎて物語として成立していないものが多いと批判しましたが、この作品はその意味で非常にバランスの良い構成になっています。強いて言うならもう少し膨らませても面白いかな、と思うパートもいくつかあったので何も8つも短編を並べなくても良かったかな?というちょっとした不満はありますが。「占いのための調査で明らかになるドラマ」短編としてこれだけ適した題材もそうはないでしょう。

星は3つ星ですがエンタメ系の短編としては模範的な作品かな?という気もします。お勧めですね。

井上夢人さんがかつてコンビを組んでいた岡嶋二人の作品です。
そして扉が閉ざされた (講談社文庫)/岡嶋 二人

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