ソリューション・ゲーム 日常業務の謎 「このミス大賞」シリーズ)/伊園 旬

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☆☆
大学卒業後、定職につこうとしない東一俊。そんな彼が成り行き上、父親が経営執行役を務める「トライアンフ・マニュファクチャリング・コーポレーション」に採用されてしまった。入社早々に子会社への出向を命じられた東は、隣接したビルのワンフロアを占める「株式会社ソリューションワークス」へと向かう。元々社内のコンプライアンス対策室の一部だったチームをアウトソーシングしたというその会社は、資本金五千万、従業員数名、業務内容のほとんどは、親会社から委託された「調査対応」であった。東は代表取締役の染屋とともに、次々と持ち込まれるトラブル対応を引き受けることになる。(amazonより)

以前、こちらでご紹介した「ブレイクスルー・トライアル」の伊園旬の作品です。あの時は編集者がついてじっくり書けば才能が開花するかも?的なことを書いたのですが、どうもアイデア1発の作家だったみたいです。

タイトルからは作者自身の前職であるIT関係(もしかしたら現役かも?)の知識を活用したサイバーミステリーみたいなのを想像したんですが、端にIT企業のアウトソーシング先であるソリューションワークスで働くというものでしかありませんでした。しかもソリューションなんて今時っぽい言葉を使う割には結局のところ不法侵入や張り込みなどを行うなんでも屋でしたし。またミステリーとしても短編にありがちな話が極度に飛躍するものや全く飛躍しないものなどばかりでとても質が高いとは言えません。

この作品で唯一良かったのはワトソン役を務める主人公の頭が中々切れることですね。この手の作品のワトソン役は大抵、読者よりもかなり頭の切れが悪く、なんでその可能性を考慮しないわけ?なんて突っ込みどころが満載なケースが多いですよね。ところがこの作品の主役は読者がよく考えれば届くレベルのキレ(=ボヤっと読んでいる読者よりも少し上の知的レベル)を持っているのでその辺のイライラがありません。

とは言え読むなら「ブレイクスルー・トライアル」でしょう。