のぼうの城/和田 竜

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時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった―。 (amazonより)

2009年本屋大賞ノミネート作品です。このブログでは東野圭吾の「流星の絆」貴志祐介「新世界より」に続いてのご紹介ですね。ちなみに先月の「読みたい本リスト」に書いた作品でもあります。

本作はかの有名な豊臣秀吉が北条氏の小田原城を落とした裏で展開していた石田三成による忍城攻めを描いた作品です。複数史料などから浮かび上がる史実をベースにしながらも、史料が残っていない人柄や合戦の細部などを創作で描いているため、史実に納得しながらも魅力的なキャラ設定や大胆な戦などに一々興奮しながら読むことが出来ました。またこういった要素に加え、物語中に「当時の武将は~」「現在でもこの水攻めの跡が○○県何駅近辺に~」といった解説が入ることから、時代小説というよりも映画やマンガなど非常にビジュアル的な作品であることを感じさせます。(実際に犬童一心監督による映画化が予定され、美味しんぼの花咲アキラ作画によるマンガ化がなされているようです。)

全体を通しての感想はポンポンとストーリーが展開していくのでページをめくる手が止められない状態になります。ページ数もそれ程の厚みが無いのであっという間に読めてしまうと思います。しかしながら作品を読んでいると嫌でも期待させられる、合戦における緻密な戦略や息を呑む心理戦は煽られる割には驚かされるようなポイントがなく、その点については少々物足りないです。またページ数やテンポを含めて非常に良くまとまった完成度の高い作品と言える一方で、あっさりとまとまり過ぎてしまって読んでいる最中は楽しめるものの余韻が少ない作品でもあります。もう少し1人1人のキャラクターやドラマを描いてもよかったのかな、という気はしますね。とは言えこの分量としてのまとめ方は絶妙なので、結局のところないものねだりでしかないのですが。

恐らく日頃から歴史小説を読みに慣れている方には物足りない作品だと思います。ただしエンタメ作品としての完成度は非常に高く、多くの人にとっては傑作と呼べる作品だと思います。本屋大賞ノミネートは納得ですね。


和田竜最新作です。結構はまってしまったのでこれも読みます。
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忍びの国/和田 竜

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