イナイ×イナイ (講談社ノベルス)/森 博嗣

¥945
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☆☆☆
Gシリーズ第6弾「ηなのに夢のよう 」の書評でご紹介したように、本書はGシリーズが完結する前に始まったXシリーズです。森さんのことですから、同時進行なんてやるからには、これが後々複線になってくるだろうと考え刊行順(「ηなのに夢のよう」 →Xシリーズ1~3弾→「目薬αで殺菌します」)に読んでいる次第であります。

さて新シリーズでは「四季 秋」で登場した椙田の探偵事務所で働く小川令子と真鍋瞬市、更に別の探偵鷹知祐一郎の3人を主役として事件が進みます。

簡単にあらすじはをご紹介します。
旧家に住まう美女佐竹千鶴が椙田探偵事務所を訪れたところから始まります。彼女の依頼は幼い頃死んだことにされて屋敷の地下牢に幽閉されている兄を見つけて欲しいという。

言葉を喋ることのできない使用人や、例え家族であっても家長とその妻以外入ることを許されない母屋など、森博嗣というよりは京極夏彦というよりは横溝正史の作品のようです。理系ミステリはどこへ…。また犯人の動機は解明されず、反則まがいながら文学的なトリックも使用されるという点ではGシリーズの1弾2弾に近いテイストですね。本書は他シリーズとのリンクも薄く1冊のみで楽しめる出来になっていますので、そういった意味では3作目以降のGシリーズよりは良心的です。(当たり前のことなんですが)とは言えGシリーズも12作目まではまともだったのでこのシリーズもこの先どうなるかは分かりませんが…。