Θ(シータ)は遊んでくれたよ (講談社ノベルス)/森 博嗣

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☆☆☆
Gシリーズ第2弾です。
今回は珍しくシリアルキラー(連続殺人)モノ(?)でした。
連続して起きる自殺。全ての自殺体には口紅で書かれたθの文字が。果たして事件は連続自殺か、はたまた連続殺人か?

前回紹介すると書いた3人の主役を簡単にご紹介します。
紅一点の加部谷恵美は事件に首を突っ込みたがる西之園萌絵のようなキャラクターです。ただし西之園萌絵程キレはなく彼女の披露する推理はどこか抜けています。
山吹早月は3人の中では極めて常識人です。話の筋を作っていくキャラクターと言い換えてもいいかもしれません。
海月及介は探偵役です。ただし異常に無口な上に、とても慎重なので彼はポイントポイントで半ば嫌々ヒントをくれるだけで積極的な発言はありません。犀川先生に少し似ていますが、彼の場合は社会科学や人文科学に通じており、その辺の話題が多いですね。そのためか事件の推理を話しながら気づくと哲学的な話になったりと、たまに話す彼の話は脱線が多く、どうも筋が追いにくいです。

さてGシリーズでは彼らがメインで事件を解決していくのかと思っていましたが、今作では犀川先生と西之園萌絵が結構活躍します。2作読んで分かったことは3人の主役と西之園萌絵、そしてGシリーズで初登場する謎の探偵赤柳初朗の5人がそれぞれ持ち寄った情報をその都度整理していき、必要なだけの情報が集まった時点で海月及介が真相を解きほぐすという流れのようです。ストーリー自体は極めてシンプルですし、読者が推理をし易い展開でもあります。(今作は森博嗣お得意のパターンだったのに私はまたも騙されましたが…)

ちなみにこれまでの2作では大筋の推理がなされるだけで、裏取りや後日談がないまま終了しています。つまり海月及介がこうだろう、という推測をして、それが矛盾のない説明だ、というだけでストーリーは終結します。森さんのミステリーはそれほ量を読めていないので、こういうテイストの作品は森博嗣作品の中では一般的な可能性もありますが、それも含めて全部複線だったらどうしようと疑いだしています。実はこれらの事件には裏でコントロールしている人が、その存在に気づくまでは一見すると矛盾のない別の推理が出来るように事件が組み立てられているとか…。
まあ、それやっちゃうとこのシリーズの作品、どっかの段階ですべの推理が覆されちゃいますから流石にそこまではしないと思いますが、今回真賀田四季の名前が登場したので、そんなことを疑っています。勿論、単品でしか読んでいない人はその作品で完結するので、覆すこと自体に問題はありませんし。ちなみに今作で保呂草も1シーンだけ登場するので段々と他シリーズとのリンクが始まり出しています。