終末のフール/伊坂 幸太郎

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☆☆☆☆
小惑星の激突で人類滅亡が約束されてから5年。混乱と狂気もひと段落し、束の間の小康状態を保っている人々。滅亡まであと3年のカウントダウンが始まった世界で生きる人々を描いた7つの短編。

アルマゲドンと同時期に上映されたディープインパクト(個人的にはこっちの方が好きです)から着想を得たのでしょうかね?作中でもディープインパクトを匂わせる映画がちょいちょい登場します。
ただし、この作品はパニックムービー(ムービーじゃない)でもなければ、空からの飛来物への対抗策を考え必死にサバイブしようという物語でもあたりません。ポイントはあらすじに書いた小康状態です。人は誰もがいつか死ぬって分かっています。でもいつ死ぬかなんて誰にも分かりません。分かっている人間は重い病気だったり、歳をとっていたり、あるいは死刑囚だったり、と肉体や精神が弱っている状態が普通です。しかしこの作品に登場する人々はごくごく健康的な人たちばかりです。そんな人たちが死へのカウントダウンを数えられた状態でどう生きるか、この作品の主眼はそこにあります。

例えば娘との仲直りを試みたり、恋人を求めたり、あいも変わらずキックボクシングのジムに通ったり、そうやって生きる人たちの物語です。
私が気に入ったのは、何一つ決めることが出来ない優柔不断な夫を持つ妻が身ごもってしまった「太陽のシール」と家族を失った女の子が同じ様に家族を失った人たちの元で家族ごっこをする「演劇のオール」です。

ちなみにこの作品はいつもの伊坂幸太郎の作品とは若干テイストが違います。例えば同じく短編集の「チルドレン」の陣内のようなぶっ飛んだキャラクターは登場しませんし、これも同じく短編集の「死神の精度」のようにそれぞれが独立しながらも全編がつながっていくというような要素もほぼないに等しいです。(全てのキャラクターが住んでいるのが同じマンションですのでちょい役で登場したりはします)また作品間リンクもほぼありません。
そういったいつも通りのテイストを期待している人は少々外された感じを受けるかもしれませんが、死を目前に控えそれでも真っ直ぐに生きるというのは如何にも伊坂さんが描いたキャラクターですし、ちょっと疲れた私たちに「ちょっと頑張って生きてみるか」と思わせる作品でもあります。

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