四季 夏 (講談社文庫)/森 博嗣

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☆☆☆
四季シリーズ第2弾です。本作は前作から5年後、真賀田四季が13歳~14歳までの物語です。ということはつまり「すべてがFになる」で語られたあの事件が語られるわけです。

さて前作の書評でも書きましたが、やはり四季シリーズは他の作品とは随分毛色が違うみたいですね。理系ミステリと言うよりは文学的、哲学的な表現が散見されます。逆にミステリー要素はすっかり息を潜めます。冒頭で四季シリーズの主要キャラの1人が変死をとげた過去が紹介され、それについて真賀田四季が部下に調査を依頼している描写が登場するものの、以降それについてのフォローはありません。(あるいは別シリーズと補完関係にあるエピソードかもしれませんし、四季シリーズの残り2作で明らかにされる可能性はありえますが)このように事件がおき、それの謎を解くというミステリー要素は皆無と言って程です。
つまり本作を楽しめるのは、この作品自体を文学作品として受け止められる方か、あるいは『S&Mシリーズ』や『Vシリーズ』のスピンオフ作品として楽しめる森博嗣フォロワーの方、と言うことになるでしょう。
ちなみに本作は『S&Mシリーズ』1作目「すべてがFになる」と『Vシリーズ』主要キャラたちとの関連性が強い作品です。私自身は『Vシリーズ』を未読の為、『Vシリーズ』主要キャラ絡みのエピソードについては楽しみきれなかった部分があります。

ただしそれを差っぴいたとしても前作「四季 春」と比較すると文学作品としては多少劣るかな?という印象です。しかし、森博嗣さん、恐ろしく文章力が上達してますね。『Vシリーズ』を読んでいなかったため10作分は飛ばして読んでいるわけですが、この間に随分上手くなっています。まあ『S&Mシリーズ』を飛ばし読みしたときも随分びっくりしましたけどね。(この辺については「今はもうない」の書評をご参照ください。)
本作では途中ベッドシーンが登場するんですが、そのシーンなんて是非ご一読いただきたいですね。森博嗣流のかな~り独特な理系的というか文学的な描写がなされているんですが、それでも官能的です。

四季シリーズをまとめた「四季シリーズまとめ」はこちら

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