勝ちよぶ烏!?~七夕~ | 遊行楽紀行 ~風のささやき 水の行く末~

遊行楽紀行 ~風のささやき 水の行く末~

季節、暦、時事をみつめて、気ままに書き綴ります
吹く風と流れる水、自然のあるがままを訪ねて
小さな「幸せ」「豊かさ」「健康」は身近に
考え方の整理整頓で「明日」「生き方」「行動」が輝きます
心豊かに 笑顔で そして健康に

---勝ちよぶ烏!?~七夕~--- 
 七夕になると、大友家持さんの歌を思い出します。

かささぎの渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば夜ぞふけにける

中国の伝説、
牽牛星と織女星の、年に一度の逢瀬の際、かささぎがが、翼並べて、
天の川の橋となって恋橋渡しをしたとのこと。

この歌は、
冬の夜空、見上げれば天の川、いつにもまして白い、霜がおりたのだろうか。夜も更けて冷え込んでいる。といった解釈でしょうか。他の解釈もありますが・・・

ところで歌に登場する、カササギは、現在でも(原則)九州のみの鳥。本州にはいません。
また、中世以前にの日本には、持ち込まれたもの以外は見る術のない鳥でした。
しかし、中国の七夕の橋渡し伝説は、根強く、作家たちが読みます。書きます。

菅原道真さん。
♪彦星の 行合を待つ かささぎの と渡る橋を われにかさなん


(笑)・・・。私にもその便利な渡る橋を貸してほしい!と。

近松門左衛門さんは。
人形浄瑠璃『曾根崎心中』(道行)で

♪梅田の橋を かささぎの はしとちぎりて いつ迄も 我とそなたは 女夫(めおと)星

七五調の天才です。声に出して読むべき名調子です。
「会える会えない」、「結ばれる結ばれない」「叶う叶わない」などの、恵まれぬ2人には、「かささぎ」七夕伝説は、その表現として、しっくりします。

この語りの前後のくだりには「北斗七星」、「天の川」もでてきます。

♪鐘計かは草も木も 空もなごりと見上ぐれば。
雲心なき水の音 北斗はさえて影うつる
の妹背(いもせ)の天の川
梅田の橋を鵲(かささぎ)の橋と契りて
いつまでも。我とそなたは女夫星
かならず添ふと縋(すが)り寄り
二人が中に降る涙 川の水(み)かさもまさるべし

この「カササギ」、なんと『魏志倭人伝』に卑弥呼と同じく(笑)記載されています。

♪無牛馬虎豹羊


日本には、ウシ・ウマ・トラ・ヒョウ・ヒツジ・カササギはいないとの解説です。

おお「日本書紀」6世紀にも
推古天皇の条に
♪六年の夏四月に、難波吉士磐金(なにはわのきしいはかね)、新羅より至りて、二隻(かささぎふたつ)をたてまつる。すなはち難波社(なにはのもり)に養はしむ。
よりて枝に巣ひて産めり


卵まで産んだと・・・

12世紀、寂連法師(1139~1202)さん。

かささぎの雲のかけはし秋暮れて 夜はには霜やさえわたるらむ

ラスト、紫式部さん源氏物語「浮舟」です。

寒き州崎に立てるの姿

もう少し、前後の文章をみると・・・。
「山の方は霞隔てて、寒き洲崎に立てる鵲(かささぎ)の姿も、所からはいとをかしう見ゆるに、宇治橋のはるばると見わたさるるに」
・・・・?紫式部さんの時代に、かつ京都にはいないはず・・・。
別の鳥を、カササギと書いたのでしょう。との指摘も・・・。
しかし、「カササギ」には「橋」はつきもの、「宇治橋」とあります。
間違えたとの解説がありますが、敢えて、恋を橋渡す、「カササギ」としたのかもしれません。
プライド高き、才女だけに、仮に指摘しても間違えは認めません。きっと・・・。(笑)

カササギの実物を見たことはありません。
鳴き声は、なんと「カチ(勝ち) カチ(勝ち)」とか。よって「カチガラス」とも呼ばれるようです。
時に縁起の良い鳥かもしれません。