『ランナウェイズ』 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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もう知らない人の方が多いのだろうとは思うが、
いわばガールズ・バンドの草分け的存在、
あのランナウェイズの伝記映画である。

Cherry Bombって曲、聴いたことないですか?
チチチチチチチってやつ。


ランナウェイズ

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まず何より、ジョーン・ジェットが
まったくもってそっくりなのに相当びっくり。
本当にこの人、若い頃はこんな感じだったに
違いないだろうなあくらいに思いました。


特にラスト近くの、あのほかには誰も
着こなすことなどできないであろうに違いない、
例の強烈な紫のジャケット姿。

よくこんなの探してきたなあとも思ったけれど、
まあ、やっぱりわざわざ作ったんだろうなあ。
でもこの格好だよね、と首を縦に振りました。


さて、この辺りで念のために説明しておくと、
ジョーンはロックに魅せられたギター少女で、
バンドの中心となった人物である。


なお、彼女はランナウェイズ解散後の82年に、
ソロ・アーティストとしてデビューし、
I Love Rock’n Rollのヒットを飛ばすことになる。

バンドはこのジェットとプロデューサーの
キム・フォウリーが出会い、彼が彼女にドラムスの
サンディ・ウェストを紹介したことで
スタート・ラインを切ることになる。


そして本作のもう一人のヒロインが、
バンドの初代ヴォーカリストとなった
シェリー・カーリーなる人物なのである。


あのコルセットとガーターベルトという
ある種すさまじい格好で
ステージに立っていたのが彼女である。

映画は彼女の自叙伝を元に構成されている。
もちろん原作はもっと先まであるらしいのだが、
本編は彼女のバンド脱退の少し先までで終わる。


どうやらこの人、家庭環境としてもやや複雑で、
しかも双子の姉妹がいたりして、
バンド在籍時もその後も、相当ヘヴィーな
人生を送ってきているらしい。


そしてエンドクレジットでさらに驚かされた。
このシェリー・カーリーを演じていたのが、
前回触れたダコタ・ファニングだったのである。

まあね、どこかで見たような顔だなあとは、
見ながら終始、なんとなく思ってはいたのですよ。
オープニングのテロップをちゃんと
見てなかったから、気づかなかったんですけどね。


制作は2010年。だから『アイ・アム・サム』から
8年後の姿ということになる。
なるほど、確かにいわれてみれば面影はありました。


さて、僕自身はこの作品で初めて知ったのだけれど、
このランナウェイズの人気/知名度というのは、
本国アメリカでは実は結局最後まで大したことはなくて、
むしろアジア地域、とりわけ日本でのそれが
どうやら極めて突出していたらしいのである。

特に我が国での人気は相当のものだったらしい。
映画でも描写されているけれど、
空港にはファンが大挙して押し寄せ、
当然警護も厳重で、スタッフは彼女たちを
下へも置かぬような扱いだった模様である。


ジェット自身、後年この時のことを
まるでビートルズ旋風だった、
みたいなこともいっているようである。


しかも、その火付け役となったのだろうと
思われるのが、あの篠山紀信氏の撮影による、
シェリー単独のやや過激なグラビアだったらしい。

本編にはこの一連のエピソードに十分過ぎるほどの
時間が割かれている。ある意味全編の
一つのクライマックスともいえるだろう。


つまり、バンドを直接的に瓦解させたのは、
結局のところこの日本公演だったといっても
たぶん間違いではないのだろうと思われる。


メンバーが集まり、次第にバンドが形になっていく。
前半に展開されるその過程には、
ある種のサクセス・ストーリー的な期待感もある。

その成功のピークがこのジャパン・ツアーで、
けれどその最中にバンドは空中分解を始めていく。


ベーシストの名前が仮名だったりして、
まあいろいろと脚色もあるのだろうけれど、
それでも頷ける場面はかなり多かった。
たぶんこんなだったんだろうなあ、と。


ジェット本人も一応監修に名を連ねているし。

ついでなので。このジョーン・ジェットなる人が
本当にすごいなあ、と思うのは、
ランナウェイズ解散後、ソロとしての契約を
なかなか大手と結んでもらえなかった時に、
結局自分でレコード会社を作ってしまうことである。


だから、ジョーン・ジェット&ブラック・ハーツの
クレジットによるアルバムは皆、
ブラック・ハーツ・レコードなるレーベルから
発売されているのである。


なお、この経緯にはケニー・ラグーナという重要人物が
関係してくるのだけれど、彼は映画には出てきていない。

最後になったが、ジョーンを鮮烈に演じたのは、
クリスティン・スチュワートなる女優である。
『トワイライト』シリーズが有名なのだけれど、
申し訳ないが僕はこちらは未見。


『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』よりも
面白いと誰かが勧めてくれたら観るのだけれど。