【開催報告】『日本人の神』(大野晋)|名古屋で朝活!!朝活@NGO | 名古屋で朝活!! 朝活@NGO

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日本人の神 (河出文庫)
日本人の神 (大野晋)

日本人の神 (河出文庫)
【kindle版】

今朝は国語学者の大野晋氏による日本宗教史、『日本人の神』が課題でした。

日本におけるカミとホトケの歴史が分かりやすく解説された本でもあり、言語学的に「カミ」のルーツを探るなど、国語学者ならではの深め方が面白い一冊です。


【管理人の読書メモ】
P.26「腹を沸き立たせる」とは、つまり不満を胸の中で煮えくり返らせること。タタルとはそれの自動詞で、腹の中が湧き返ること、怒ることである。

P.33 日本語では政治をマツリゴトといい習わしてきた。(中略)カミに対して奉仕するものはそれに先立って自身を清めるためにミソギやハラエをする。罪をケガレと捉え、罪を外側についた汚れと考える。だから、ミソギをすれば、つまり水に入って洗い流せばよいと考える。

P.49 ①から④にいたる神への祈願や⑤の罪の祓除について見ると、これは、今日の日本人の実際の政治の運用の仕方に対する基本的な考え方・対処の仕方の原型である。すなわちこれは金品を権力者に贈与することによって、下賜される便益を享受しようとする行動の原型であり、ハラヘの考え方は、今日広く行われているオハライの根源であって、罪過・公害・公金私用などは隠蔽し、先送りして行けば、いずれ消失するにちがいないとする考え方の原型をここに見ることができる。

P.51 神祀令では一年のうち、いつ、いかなる祭祀を行うべきか、即位とか、罪の祓除にはどうするかという説明が中心をなしていて、特別に神官がこういうことをしてはいけないという戒、または処罰には触れていない。(中略)ところが僧尼令には、いつ何という経文を読めとか、経文を読むにはせよというようなことは全く書かれずに、僧尼はこのようなことをしてはいけないという禁止事項が次々に列挙されている。

P.60 カミとホトケの習合の一つの形として天皇の仏法帰依を挙げるべきだろう。天皇はカミの子孫である。それが仏弟子となっていることが奈良時代から平安時代以後にかけて甚だ多い。

P.84 また国学は、カミの認識を変革し、ホトケは本来輸入品であるという事実を明確にした。そして文献以前、儒仏以前の日本こそ独自の日本であるという考えを導いた。

P.105 「(明治政府の)御一新とは神武の親政に復帰することである。神武のそれならば第一に神と仏との分離を明確にすることだ」という方針が行政の実務へとおろされ、神仏分離令、廃仏毀釈という行動がここから始まっていった。

P.116 このように庶民の住居や移動についてまで寺院は証明書の発行という形で深くかかわっていた。それは室町時代末期以来、各地で寺院が急速に増加し、檀家の葬儀を執行して、人々に安心を与えるという実績をつんでいたからだった。

P.141 現代語の「お金をハラウ」のハラフも対象物と同価値のお金を出すことで、「罪過に応じて物を差し出す」ことと基本的に共通する行為である。

P.188 和辻はモンスーン地域の気質を「忍従的」としているが、忍従的というよりも、日本人は「微妙な変化に対する適応・適合を第一とする」というべきではなかろうか。朝昼晩の気温・湿度の変化に合わせると同じく、常に相手に合わせようとし、成り行きに適応することが大事だとする。

P.189 砂漠では、自然のままでいることは死を意味する。だから生きるためには自然と対抗し、自然に対して「我」を意志的に主張し、自然に対して戦い続けなければならない。

P.194 旧約聖書の神は、やがて人間を祝福し、契約を結ぶ。

ディスカッションでの話題は、
・「ミ」の音に2種類あったなど、言語学的な歴史の流れ。
・日本人、文化、宗教のルーツ。
・語源など言葉の本来持つ意味の面白さと「言霊」的な考え方。
・日本の自然、風土と国民性や宗教の関連。諸外国との比較。
・カミや宗教の持つ力と政治の関係。

など。

目次を見ると難しそうに思えますが、専門書ではなく一般の読者向けレベルなので、上の読書メモで面白そうだと感じる方なら楽しんで読める本だと思います。

アミニズム的な「カミ」から仏教伝来での「ホトケ」の輸入。その後の神仏習合から明治時代の神仏分離令などの日本の思想史が一通り理解できて、寺社巡りの好きな方などは興味深く読めそうな内容。神と仏、神社と寺、それぞれのルーツや歴史の流れを知ると見方が変わってくるかも。

南インドのタミル語と日本語の共通性など、言語学的な面白みもあって、ディスカッションも楽しめました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。



来月6月15日、伏見の朝食読書会はこちらが課題です。過去にも同タイトルの新書が出版されてますが、今回は角川ソフィア文庫から4月に出たばかりの、エッセイがたくさん収録されているこちらで。お楽しみに。

美しい日本の私 (角川ソフィア文庫)
美しい日本の私 (角川ソフィア文庫)



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