今日の奥山 | 荒井修のブログ

荒井修のブログ

ブログの説明を入力します。

昨日のブログを読んで、どんないたずらをするのかを確かめに来てくれた人達が何人かいた。

勿論それだけのためにお越しいただいた方ばかりではなく、平成中村座の帰りに立ち寄ってくれた方もいたのだが、肌寒い奥山で「昨日のブログが気になって」と言われると仲間意識が暖かく感じさせてくれる。

しかし私のいたずらはほとんどの人が「今日のいたずらってなんなんですか?」と聞き、誰も一目ではわからなかったようだ。

実はいつも餅を焼いている火鉢型のコンロに乗せた銅のヤカンに湯を沸かし蓋を取って徳利が入っていたのだ、勿論手元には盃が置かれている。

徳利の方は直侍が蕎麦屋で飲んでいるような、胴が膨らんでいない、上から下まで同じ太さのシンプルなもので、柄は一切入っていないものであるが、これが有りそうでいてなかなかなく、私はこの徳利が大好きで、かれこれ20年ほど前に手に入れてから他の徳利を使おうと思わなくなったほどである。

この徳利を2本奥山に持って行き、1本には水を入れ、もう1本にはお茶を入れ、お燗により熱くなった白湯は熱燗の酒のように盃で飲み、お茶のほうは茶碗酒のように飲んでいたのである。

江戸の長屋住まいの職人が、そのまま生活をしているような景色を、浅草にみえた人に楽しんでもらいたいと言うか、私自身が楽しんでみたかったために思いついたいたずらなのである。

案の定お客様は「いいねぇ、こんな雰囲気で飲んでいる姿って」とか、「わーっ時代劇みたい」とか、いろいろな声が聞えてくる。

お茶を入れた徳利は、常にお茶を温めてある状態なので、いつでも熱いお茶が飲めて便利でもあった。

しかしこうして飲み続けると、どうしてもトイレが近くなり、何度もトイレに通うことになってしまった事だけは計算外であった。

その間小判の両替所から小判の切り餅を作ってくれと言う注文があり、私の店は扇屋なのに小判の切り餅ばかり作っていた。

閉店間際になって近所の住人から「自分も熱燗を飲みたい」と言う声が上がり、酒を用意しお燗をつけてあげた。

すると「電子レンジのお燗ばかり飲んでいるから、ヤカンのお湯の中に徳利を入れてつけた熱燗の方が旨く感ずると言っていた。

おかげで、奥山風景のような場所はみんなが時代をさかのぼってみようと考える事で、より楽しくなる場所なんだと再認識出来た。