ジローのホットドッグ | 荒井修のブログ

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浅草にホッとドックの名店「ジロー」があった。

私が子供の頃から食べていたのだから、たぶん戦後すぐの創業だと思う。

ここのご主人は体の小さいマスターで痩せた人であったが、奥さんは反対に大柄な人で、いわゆるのみの夫婦といった体型であったが、二人とも実に優しい人で、当時にするとおしゃれな人であった。

マスターは赤い大柄なチェックのシャツに白いエプロンをかけ、コック帽をかぶり、店内には静かにジャズが流れていた。

この店のホッとドックはホッとドックと言いながらハンバーガーのように丸いパンであり、それも浅草の老舗のパンや「ペリカン」でこの店のために焼かせたパンを使っていた。

ホッとドックと言うとソーセージを挟んだものを想像するが、メインはハンバーグである、その他、卵・ソーセージ・カツ・ポークソテーなどがあり挟んでからもう一度オーブンで焼いていたようで、パンの表面がパリッとしていた。

私の店では時々お昼をこのホッとドックにし、一人づつに好みを聞いて買いに行ったものだ。

「僕はハンバーグとソーセージ」「私は卵とカツ」など大概は一人が2つ食べた。

店内で食べる時はこれにホワイトシチュウを注文するのだが、このホワイトシチュウがまた旨くて、コショウを好みで振ってすするのだが、これまた絶品であった。

それほど美味しくてファンもかなりいたのに7年ほど前に店を閉めてしまい、寂しく思っていたところへ、私がやはり子供の頃から父親に連れて行ってもらっていた、本来は江戸時代からの果物やだがホットケーキの名店神田の万惣が3月末に閉店してしまい、私の思い出の味がことごとくなくなってしまう寂しさを感じていたのだが、友人から思わぬ朗報が入ってきた。

それは、あのジローの当時若旦那であった雑賀さんからきめ細かにレシピを習い、その上ペリカンのパン屋さんに当時のジローのパンを作っていた職人さんが一人だけペリカンで今もパン作りをしていたと言う事で、浅草ではないが神田の神保町に店を出したと言うのである。

店の名前は「TOKU」と言う名前に変わってはいるが、味の方はほぼ同じである。

聞くとまだ開店したばかりでお土産はやっていないと言うが、事前に電話をしておけば頼めるらしい。

この店のホッとドックは冷めても美味しくて、昔京都の祇園の芸姑・舞子が浅草に来たお土産にいろいろなホッとドックを山ほど買って新幹線に乗ったほどであるので、私は何かの機会に頼もうと思っている。

我々浅草でここのホッとドックと言われるハンバーガーを食べて育った者は、マクドナルドが日本中で流行ってもジローのほうが旨いといって食べようとしなかったが、考えてみればマクドナルドは一つ100円台から200円台であり、ジローは400円台なのだから仕方ない話だし、贅沢なものを食べていたものなのである。

こうして「あの頃食べたあれは旨かったなー」という思いがつながれば、復活できる事もあるのだから、きっと何時の日か万惣の厨房にいた人があのホットケーキを小さな店で復活できるのではないかと私は期待している。

その時私はその店を訪ね、開店したばかりの店なのに、常連づらして記憶をたどりながら、食べているだろう。

店の雰囲気が変わっても、目を閉じて思い出に浸りながら。