清方/Kiyokata ノスタルジア | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

気づけば、今年も残りあとわずか。

年の瀬が近づいてまいりました。


街は、すっかりクリスマスムードクリスマスツリー

東京ミッドタウンの中も、クリスマスムード一色です。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ミッドタウン

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僕は、そんなクリスマスムードに、

わき目もふらず、一路、サントリー美術館へ。


来年1月11日まで開催されている、

“清方/Kiyokata ノスタルジア―名品でたどる 鏑木清方の美の世界―”

を、観賞してまいりました。


この美術展の主人公は、この方↓


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-清方



鏑木清方 (1878~1972) です。

彼は、上村松園 [=日本における女性画家のパイオニアの一人] 、

伊東深水 [=朝丘雪路の父親] と並び、近代の三大美人画家の一人に挙げられています。

彼の美人画の一番の特徴は、江戸情緒に溢れていること。

もちろん、清方は、江戸時代の人間ではありません。

活躍時期は、明治から昭和にかけてです。


どうも、彼は、伝統的な日本美術が好きだったようで、

美人画の作風にも、それが反映されているのです。

よく言えば、懐古趣味 (=ノスタルジア) 。

悪く言えば、

“あぁ、昔の女性は良かったのに…”

と、常に思っているお方。


そんな清方の代表作は、もちろんのこと、

初公開となる清方作品や、清方旧蔵の肉筆浮世絵などが展示されているのが、今回の美術展。



会場に入って、まず出会う美人さんが、こちら。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-春雪



《春雪》 という一枚です。

若い妻が、夫の羽織を畳んでいるというシーンです。

目元や髪の生え際など、至るところが女性的ですが、

特に女性らしさを感じたのは、羽織を畳む指先のしなやかさ。

さすが近代美人画の巨匠と呼ばれるだけはあります。


さて、この作品。

何よりも、スゴイのが、

清方が疎開先であった御殿場で見た富士山をモチーフにしたということ。

富士山を見て、こんな美人画を連想できるだなんて。

さすが近代美人画の巨匠と呼ばれるだけはあります。


ちなみに、画像では、そう伝わらないですが、

実物の着物の色は、もっと淡くて繊細で、えもいわれぬ美しさがあります。

日本画の魅力は、常々、日本ならではの微妙な色にあると思っていますが、

《春雪》 は、まさにその魅力が最大限に発揮されている一枚でした。



さて、お次に出会った美人さんは、こちらの方。

《朝涼》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-朝涼



やはり、こちらも髪を玩ぶ指先が、何とも色っぽい。

《春雪》 と比べると、凛とした美しさがある気がします。


これは、どうでもいいですが。

空の色がナメック星と同じ緑色なのですが、

どうして、清方が描くと、こんなにも美しい世界になってしまうのでしょうか。



古き良き美人さんが多い中で、

一番モダンだったのが、こちらの女性。

《秋宵》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-秋宵



バイオリンを持つ指先が…いや、もういいですね。

変に指フェチと勘違いされても困りますし (笑)

江戸情緒の作品が数ある中で、

大正ロマンな作風だったのが、妙に印象に残りました。




さてさて、ここまで紹介した美人さんは、

すべて第一展示室で出会えます。

続く第二、第三展示室でも、それなりに美人さんとは出会えますが。

どうも、一番初めに出会った 《春雪》 の衝撃が強すぎまして。

それを超える作品には、最後の最後まで、結局出会えませんでした。

あららら。。。


星

好みは人それぞれですが、

それでも、展示の前半に目玉作品が集中していたような。

展示の後半は常に心の中で、


“前半には、いい作品が多かったのになぁ”


と、呟いていました。

前半ノスタルジアです。





最近、多少、ランキングが下がってきました。。。

“昔は、もう少し上だったのになぁ”

ノスタルジアです (笑)

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