『物語のおわり』(湊かなえ/朝日新聞出版) | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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これについては、とても悔しい。
何が悔しいかといえば、「もっと売り伸ばせただろ、これ!」という意味において。
新聞社系の出版社さんは、営業に関して鷹揚というか、あまり粘られないので、それが大変もどかしい本でした(>_<)
すごく面白いのに、かなり早々と平台から消えてしまい……(平台に残してもらえるかどうかは、営業さんの粘りが物を言うので、ここが薄い出版社さんだとどうしても不利なのです)

湊さんの本は全部読んでいますが、私は最近のものとしてはこれが一番好きだったりします。
湊さんといえば、「清々しいまでの悪意の連鎖」が持ち味のように思われていますが(えぐいことを書いているのに、何故か読後が清々しいという、謎の魔法を使われます)、近年は悪意ややるせなさの中に、一匙の情や優しさが残る作品が増えてきていて、私はこの一匙の情が大好きなのです。

そして、この『物語のおわり』。
これは、「苦さを伴う優しさの連鎖」とでも言いましょうか。
読んでいる道行きも心温まり、読後はもっと心温まるという、従来の湊かなえのイメージで読みはじめると嬉しい意外性に足元を掬われる本なのです。

結末が書かれていない、書きかけの原稿が登場します。
誰が書いたかは分かりません。
その原稿が、偶然誰かの手に渡って読まれ、その誰かは自分なりの「この物語のおわり」を想像しながら、知り合った人にその原稿を「よかったら読んでみて」と託します。
そして、原稿を受け取った人が、また新たに自分なりの「この物語のおわり」を想像する……
人それぞれ、千差万別、さまざまな解釈が出てきます。
きっとああなったんじゃないか。こうなったんじゃないか。
その解釈は、彼ら自身の背中を押して、未来へと足を踏み出させる……
そして、物語がエンディングを迎えるとき、この書きかけの原稿も真のエンディングにたどり着きます。
真のエンディングは、きっと読む人すべての心を清々しく貫くはずです。
とても前向きな気持ちになれる物語です。

ネタバレになるのであまり書けないのが痛し痒しですが、これ、ほんともっと売れてほしい。
ほんとに面白かったのです。朝日新聞出版の営業さん、もっと粘って~~~(>_<)

というわけで、好きな本が売れてほしいという思いで、『物語のおわり』をこの年の終わりにご紹介してみました( ̄^ ̄ゝ
お正月休みに、ぜひ!

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