図書館と本の売り上げの関係 | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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さて、今日は図書館と本の売上げの関係について、例によってあくまで私見という前提で。

「図書館のせいで、本の売上げが損なわれている」という理論が巷でよく聞かれます。
これについて、私個人の意見としては、
「図書館は、本の売上げを妨害しておらず、図書館と出版業界は共存できる」
というものであります。

というのは、私がもらうファンレターには
「最初は図書館で読みましたが、手元にほしくなったので、本屋さんで買いました」というご意見がたいへん多いのです。
そして、図書館の利用が自分の本の売上げにマイナスの影響を及ぼしているという感触は、持ったことがありません。
むしろ、図書館や学校図書室で出会いをサポートしてもらった結果が売上げに繋がっているとさえ思います。

私は、図書館は読者さんとの出会いを提供してくれる場所である、と認識しています。
中古書店と違って、図書館の本はあくまで貸し出しですから、図書館の本が「出版社や作家の収入にならないまま、読者さんの私有物になってしまう」ことはありません。
図書館で「試し読み」した結果、新刊書店で本を購入してくださるという読者さんは、とても多いと思うのです。

(中古書店については、中古書店「だけ」のご利用は、ご一考いただきたいという立場です。
中古書店での購入は、作家にとっても出版社にとっても収益にならない、ということをご理解いただきつつ、新刊書店で買ってもいいと思える本については、新刊書店に足を運んでいただければ幸いです( ̄^ ̄ゝ
古着屋さんも楽しいけど、新品のお洋服も楽しんでくださいね♪ という感じで一つ)

図書館で本を読んでもらった結果、「自分の本として手元にほしい」と思っていただけるかどうかは、本を送り出す側の責任ではないかと。
「ほしい」と思っていただけない責任を、図書館に求めるのは筋が違うと思います。
作家はほしいと思っていただける引力を作品に籠めるべきですし、出版社はほしいと思っていただける素敵なアイテムとしての本作りを目指すべきです。
「手元に持っておきたい本」を作れば、読者さんは必ず応えてくれる、というのが私の実感です。

そしてまた、出版界は、図書館に矛先を向ける前に、読者さんに「投資」の意味でのご購入をご理解いただく広報をすべきではと。
私ならむしろ、図書館にお願いして、
「面白かったら、新刊書店でのご購入をお願いしますね。出版業界、厳しいんです」
という趣旨のポスターか何かを掲示してもらいます。
作家がずらりと並んで、正座・お辞儀でお願いしている構図なんか、インパクトがあるんじゃないでしょうか。
「ほんとに大変なんだな」感も出ると思いますし。どっか作るんなら、私は協力します(笑)
全国の図書館・司書の皆さんに協力してもらえたら、出版界の現状をご理解いただく大きな窓口になっていただけたのではと……

何にせよ、自分の都合だけ一方的に押しつけても、物事はいい方向には向かいません。
「図書館で借りるな!」
「中古書店使うな!」
と狷介に叫んでも、世の中から図書館の利用も中古書店もなくなりませんし、お客さんの反感を買うばかりです。
人様に行動を強制することはできません。
利用の仕方を考えていただくことをお願いするくらいが、許される範囲じゃないでしょうか。

ただし、図書館の側にも、選書に関して少し考慮していただきたい部分が。
例えば、

・ベストセラーだけ大量に入れる。(いわゆる複本というやつですね)
・ベストセラーを大量に入れ、更にそれが文庫化したときも大量に入れる。

などは、出版側としては、ちょっと困ってしまうときも……
他の作家さん・他のジャンルの本との出会いに予算を振り分けていただけると、出版する側はとても幸せです。
一般の方ではなかなか手が届かない高価な専門書などを所蔵できるのも図書館の強みですから、全般的に「地域の知の所産」であっていただければなと思います。
(もちろん、図書館がそうあるべく、利用率だけで図書館の価値を計るような風潮も改まってくれないといけませんが)
(大量に入れないと利用者に迅速に貸し出すことができない、という理論に関しては、利用者の方に何とぞ「特急と普通電車」の関係を思い出していただければと思います。時間とお金は、反比例。どちらを優先するかは、ご自分の自由です♪)

でも、基本的には、図書館と出版界は共存できるものだと思っています。
これからも、「この本との出会いは図書館でした」という読者さんをたくさん生み出してくださると思います。
図書館をご利用の皆さまにおかれましては、善き出会いを図書館にいただけたら、ぜひ書店さんへと足をお運びください。
図書館ご利用の後、書店さんにも来ていただけるように、努力を尽くす所存です( ̄^ ̄ゝ

最後に、「これは、あくまで私個人の意見です」ということを繰り返して、終わります☆
(基本、こちらのblogは、一作家の一意見です。そこら辺は、どうぞご理解くださいませ)