パーティー嫌いの私は、自分の家では絶対にホームパーティーを開かなかった。
いや、開かせなかった。
「うちでパーティーするのは絶対に嫌」
とボーには何度も言っていた私。
ボーも私の嫌がることはしないでくれていた。
ある日の事。
その日は男友達と飲みの予定だったボー。
親友キムの家で飲み会とのことだった。
この時キムは彼女のイエナと同棲していた。
そして飲み会の約3時間前。
ボーが言った。
「なんかイエナが試験前で勉強してるらしく、結構カリカリしてるんだって。
あんまり騒げないかも…
ボードゲームとかしようって言ってたんだけど、無理そうだなぁ。」
「え?じゃあどうするの?
ずっとヒソヒソ話で喋らなきゃいけないってこと?」
と私。
「とりあえずは夕飯をキムの家で食べて、ちょっと飲んでから、
その後パブで飲み直すかも。
多分だけど…。」
とボー。
男同士のパーティー、楽しみにしていた分、ちょっと残念そうなボーの姿を見て気の毒になった私は、
「じゃあ、うちで飲んだら?
そしたら騒げるし、ボードゲームもできるでしょ?」
と提案した。
すると、予想外の私の言葉に、
とボーは目をキラキラと輝かせた。
「私はちょっと顔を出して、その後はキッチンでパソコンとか観る感じでいいでしょ?
男同士の飲み会なんだし、問題ないよね?
それでも良ければうちでパーティーしてもいいよ」
と言う私に、ボーは、
「うん、いいよ!
問題ないよ!!
じゃあ早速みんなに連絡してみるね」
と嬉しそうに返事をした。
そうしてボー友人達は私達のアパートに来ることになった。
とりあえず急に決まったことで、ご馳走を用意する時間もなかったので、
簡単にカレーを作ることにした。
ボーの友人にとっては初めてのジャパニーズカレー、彼らにとっては興味深いおもてなしになるかな、と思ったのだ。
パーティー開始1時間前。
カレーの準備をし始めたころ、ボーがばつの悪そうな顔をしてこう言ってきた。
はい!?
聞くと、イエナが自分も行きたいと急に言い出したのだという。
おめーさん、勉強はどうしたで?
「彼女が原因で場所を変更したのになんで!?」
と怒る私に、
「ごめん、断れなくて…」
としか言えないボー。
まぁ、ボーが悪いわけじゃないけど、
でも、なんで!?
そして私はあることに気づいた。
彼女が来るってことは、私もこの飲み会に参加しなくてはいけないんじゃないか…。
ボーに聞いてみた。
やっぱり…
ここまでくると、イエナに対して怒りしかわいてこない。
私の心の中はもうこんな状態↓。
ろびまろ、ならぬ、鬼まろ登場
日本語に浸る私の貴重なユーチューブタイムを邪魔した罪は重い
二度と会うまいと思った彼女だが、
まさかおもてなしをすることになろうとは…。
でもしょうがない。
今更断れない。
18時ごろだったか、ボー友人が訪問。
イエナとキムは愛犬を連れてやってきた。
私がカレーを作っている最中に、匂いにつられてかワンちゃんがキッチンのそばで待機し始めた。
するとイエナが何かの用事でキッチンにやってきて、
「あら、この子、ろびまろのことが好きなのね。」
と一言。
んなわけねーだろ、餌期待してんだよ
と心の中で毒吐きつつも、
「はははは、嬉しいわ」
と愛想笑いをする私。
彼女とはそれ以降言葉を交わすことはなかった。
カレーは友人たちには好評だった。
しかしイエナはちょっと残していた。
あんまり好みではなかったのか。
やばい!口に合わなかったかな
と思うより、
あ~あ、貴重なカレーを無駄にしてしまった
というのが本音であった。
結局飲み会は0時近くまで行われた。
それまで私はずーーーっと訳のわからんスウェ語を聞いて、
わけのわからんボードゲームをただ見ていた。
楽しそうにしている皆のそばにただ座っていた。
そして笑っているイエナを見て私は再び思った。
ねぇ、マジでなんで来たん!?
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今日はイエナの小話をもう一つ書いてみました。
これは結構前にもブログでお話したことなので、もう既に知っている方もいるかもしれません。
男同士の飲み会なら私が参加する必要はないでしょ、ということでの提案でした。
当時はボーが飲み会のたびに、ひとり家に残されることが不満で不機嫌になっていましたが、
この時はなんだか可哀そうだなと思って、自然と「うちで飲み会したら?」と提案していました。
ボーの嬉しそうな顔を見て、提案して良かったと思いました。
だって、騒げない飲み会なんてつまらないでしょ。
それにうちで飲み会をすれば、私は参加せずとも一人ぼっちではないし、
別部屋で気ままにユーチューブでも見ていようと思っていました。
しかし、まさかのイエナも参加。
正直、なんで?しか出てきません。
だって、イエナの勉強があるからキムの家での飲み会は難しいってことでうちになったのに…。
そして、イエナが参加するとなると、もうボーイズパーティーではなくなり、
パートナー同伴の普通のパーティーになってしまうんです。
この時ほど彼女を恨んだことはありませんでした。
そして、うちでパーティーしてもいいよ、と言った自分に激しく後悔
確かこの日は土曜日だったと思うのですが、
せっかく週末の夜をゆっくり過ごそうと思っていたのに、
大嫌いなパーティーを主催する立場になってしまうとは思いもよらず…。
勝手にお呼ばれされたイエナは、相変わらず私と話そうともせず。
0時近くまで滞在、それはもう楽しんでおりましたわ。
ねぇ、あんさん勉強あるんじゃないの?
2回会っても彼女の印象は変わらずで、もう本当に二度と会いたくないと思いました。
しかしその後もう一度会う事があったのです。
私達の結婚式です。
その頃彼らはストックホルムに引っ越していて、
車で5~6時間かけてやってきてくれました。
まぁボーの親友ですし、結婚式もパートナー同伴で参列するのが普通のお国なので、
その時ばかりはしょうがないと目をつぶりました。
この時も、イエナとは挨拶したくらいで、特に会話はしていません。
彼らはこの日ヨーテボリ滞在予定で、ボーが「うちのアパートを貸したら…」と言ってきて断固拒否した記憶があります(詳しくはこちら→『郷に入っても…』を参照)。
結局彼らはホテルをとった、とのことでしたが、
食事会中になんとイエナの祖母が亡くなったとの連絡が。
聞くところによると、ずっと危ない状態だったとのこと。
彼らはその日のうちにストックホルムに帰っていき、イエナは号泣しながら私達の結婚式を後にしました。
いや、お祖母さんのことは本当にお気の毒だったと思います。
でも、危ないのがわかっていたら無理して来なくても良かったのに…と思うのです。
だって、そんなに仲が良いわけではないのだから。
というか、ほぼ他人…。
号泣したイエナを見て、なんだかわざわざ足を運ばせてしまったことに申し訳なく思ってしまいました。
私が悪いわけじゃないけど…。
この日以来、私は彼女とは会っていません。
今後も会う予定もないし、会いたいとも思いません。
でもまたいつか、会わなければいけないときがくるのかな…