できること、できないこと | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

「こういうことができるか?」といった質問を受けることがある。質問する方は簡単なのだが、答えるのは難しい。何かが「できる」ためには、いろんな要因があるからだ。


・理論的にできる/できない
・技術的にできる/できない
・時間的にできる/できない
・費用的にできる/できない
・感情的にできる/できない


など。


ソフトウェア開発者の中には、理論的・技術的な可能性にしか注目しない人がいる。例えば、「既存のシステムにこんな機能を追加したいが、可能か?」という質問があったとする。それが、システムの仕様として矛盾がなく、実装方法が頭に浮かぶようなら、「できます」と答えてしまう。


しかし、ほとんどの仕事には「いつまでに(納期)」「いくらで(予算)」など、他の条件があるはずだ。質問者と回答者の間で、そうしたことが全く話題にならなかったとしたら、誤解が生じている可能性がある。回答者は多忙で寝る時間もない状態なのに、質問者は「頼んだらすぐやってくれるのだろう」と思ってしまうかもしれない。



ついでに書いておくと、「できるか?」という質問の答えは「はい」か「いいえ」である。上記のように「条件」によって答えが変わる場合があっても、結局は「はい」か「いいえ」だ。


ところが、「できるか?」と聞かれて「がんばります」と答える人がいる。それは、できるの、できないの? がんばったらできるの? できないけどがんばるの?


いずれにせよ、できない可能性があるということなので、リスクを考えると、「がんばります」=「できない」と見なすしかない。


しかし、これを「できる」とみなす人もいて、困ってしまう。できる前提でスケジュールを立てて、結局は遅れてしまう。


その仕事の成果として最低限必要な部分を 100% とすると、「できるか?」という質問に対しては、その 100% の仕事ができるかできないかを明確に答えるべきである。「がんばる」という言葉を使うとしたら、更にそれ以上の成果、110%、120% を目指す場合にしか使うべきでない。



プロジェクトでスケジュールを立てる場合、どの仕事を誰がどの期間で行うのか、ということを組み合わせていく。リーダーから各作業者に「できるか?」という質問がなされる場合も多いだろう。この際、各人の「見積能力」が重要なことは言うまでもないのだが、コミュニケーションについても注意が必要、という話である。







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