「ちょんプロ」という言葉がある。プログラマが自分自身の作業を楽にするために作る簡単なプログラムのことである。私がこの言葉を初めて聞いたのは、おそらく職場だったろう。ネットで検索しても出てくるが、それほど頻繁に使われているわけでもなさそうである。語源は不明だが、おそらく「ちょっとしたプログラム」の略だろう。
「ちょっとした」というのは面白い言葉である。大辞林(goo辞書 )によると、ひとつには、「わずかな」「ささいな」といった意味がある。「ちょっとした風邪」、「ちょっとした感情の行き違い」といった使い方だ。一方で、「大層立派とはいえないまでも相当の」「かなりの」という意味もある。「ちょっとした会社の経営者」だとか「どうだ、ちょっとしたアイデアだろう」といった使い方である。
「ちょんプロ」という言葉には、その両方の意味が込められているように思う。ソースコードの量が少ないプログラム、あるいは、短い時間で作ったプログラムであるのは確かだが、それだけではない。何かしら実用的な機能を持っていたり、それ自体が技術調査を目的としたものであったりと、ちゃんと役立つものでなければ、ちょんプロとは呼ばれないのである(つまり、"Hello World!" と表示するだけでは駄目だ)。
つまり、ちょんプロを作るには、それなりの力が必要である。有用なプログラムをいかに短く、短時間で書けるかということだからだ。綿密なテストを行うわけでもないので、コーディングの品質も高くなければならない。
必要なのはプログラミングの技術力だけではない。そこには、企画から、要件定義、設計、実装といったソフトウェア開発工程の縮図がある。その全てをプログラマ自身で行うのだ。例えば、単純作業を自動化するためのプログラムが欲しいと思っても、それを作るのに時間がかかり過ぎるのなら、作るべきではない。そういったことを正しく判断するには、プログラミングに必要な時間を正確に見積もる力が必要だ。そしてそのためには、事前にある程度の実装方法までイメージできていなければならないだろう。
たかが「ちょんプロ」。されど、それを作る過程には、ソフトウェア開発者として学ぶところは多くありそうだ。
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