この文書は誰が読むのか | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

自称職業プログラマの私だが、最近はプログラミングをしている時間はどんどん少なくなってきた。遂には顧客向けにシステム導入の提案書を書いている始末である。


技術者が提案書を作ると、システムの機能面を強調しがちだ。特に、事前に客先の担当者と打合せをし、システムの要件がある程度決まっているような場合には、いわゆる「能書き」の部分は「当り前のこと」として省略してしまう。「能書き」とは「そもそもそのシステムを導入することによるメリットは何であるか」といった、根本的なところの説明である。


確かに、顧客の担当者が読むだけなら「能書き」は必要ないだろう。しかし、彼がその提案書を上司に読ませたらどうか。決裁権を持つようなレベルの上司の多くにとっては、システムの細かい機能や実装技術などはどうでもよいことだろう。むしろ、そのシステムを導入することによって会社にどんなメリットがあるのか、ということこそが彼らの関心事なのだ。



この「当り前のことを省略してしまう」という行為は、実は色々なところで問題になりうる。例えば、社内の報告書。直属の上司が読んだ時には問題なかったのに、更にその上の上司が読んで、「意味が分からない」と言われたことはないだろうか。


システムの設計書でも同じだ。設計書の内容は、とりあえずはその開発プロジェクトの関係者に伝わればよいので、関係者にとって「当り前のこと」は省略されがちだ。しかし、プロジェクトに遅れて参加する人や、後から保守をするような人がその設計書を読んだ時に、「当り前の知識」がないために誤読し、不具合を生むようなことだってある。



文書を書く際には、読者層を想定する必要がある。それは書く内容(焦点)を絞り込むということでもある。しかし、あまりに読者を限定しすぎると上記のような問題が起こってしまう。最初に頭に浮かんだ読者の他に、第二、第三の読者がいないか、よく考えた方がよさそうだ。







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