- 死神の精度/伊坂 幸太郎
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本屋大賞受賞作家 伊坂幸太郎の新作。
CDショップに入り浸り、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人にさわろうとしない―。
そんな人が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断を下し、翌8日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。
多分、読んでいない人の方が少ないと思う。
伊坂文学は若い世代に共感を得ているらしいが、僕も心酔したうちの一人。
なんと言っても距離感がいい。人間との距離感。
人とべったりくっついて人間臭さを出す通常の作品に対して、人よりモノ、人より文化、というスタンスをとる人物を描くことでかえって人間を感じさせる作品になっている。
決して乾いているわけではない。登場人物からは愛情を感じる。
死神が少しズレた会話や行動で人に接することで、そこにたどり着こうとする登場人物の必死さを感じるのだ。
「なんで理解してくれないんだ!」って、死神の千葉に必死で訴える。「人間の熱さとか血とか傷みとか知ってんのか!」って。
クレーム処理係りの女の子やヤクザの子分、服屋の店員、美容師の女性。
死という、恐怖であるはずの瞬間を描くことでその必死さが全開になる。
運命の転換期であったり、人生の最期のときであったりするのに、千葉は淡々と仕事をこなし、付かず離れずの距離を保ってそれを見守る。
物語はすごくあたたかい。
それは、死神千葉も判定を下される登場人物たちも運命に納得し、最期の瞬間には「生きてやった感。」いっぱいでいるから。
映画も観たけど、すごくよかった。
久しぶりに席を立てなくなった作品で、爽快感いっぱい。
劇中と同じく観る前は雨が降っていたのに、映画館を出ると雨が止んでいた。
帰りに小西真奈美のCDを買ってしまった。
タイトルはサニーデイ。
いつか晴れるかな。