不死蝶 ~ フェアリー ~  君の帰る場所 5 | a guardian angel

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スキビ好きな私が無謀にも始めてしまった…

二次創作・ネタバレ・つぶやきを含む妄想ブログです。

当然のことながら、作者さま・出版社さま等とは一切無関係です。

( SIDE 蓮 )


ダークムーンの撮影も佳境に入り…一足先にクランクアップを迎えた彼女とは…撮影で一緒になることももうない。

だけど…運よく彼女を手に入れることに成功した俺は…

ヒール兄妹として…社長の指示のもと彼女との生活を送っている。


正直…男として意識されてないことに凹んだり…

自分の闇の部分を…彼女に知られたくなくて悩んだ…

…それでも、彼女のそばにいられることが…嬉しくて…

そんな生活の中でBJの撮影が始まった。

闇に囚われそうになる自分から…彼女を守りたくて離れようとした。

だけど…そんな罪深い俺さえも…彼女は受け入れてくれた。

まだ…話せていない秘密を…罪を抱えたまま…

そんな俺でもいいと…彼女が優しく包みこんでくれる。

彼女と過ごす甘い時間が嬉しくて…少し浮かれたいたんだ。

乗り越えなきゃいけない問題は…俺のことだけじゃない…

彼女が…彼の想いを知った時…どう思うのか…

二人の関係にどんな変化があるのか…

…ソレを考えることはひどく胸が痛くて…

目の前にある幸せに酔いしれて…いたかっただけなのかもしれない。


予定よりも早く撮影が進んで…早く帰れることになったからと…

彼女の声を聞くために携帯を手にした。

帰れば会える…そんな恵まれた状況だというのに…それでも足りない…。

彼女に会いたくて…声が聞きたくて…触れたくて…

手に入れたばかりの彼女を…俺のものだと実感していたくて…

溢れだした想いは…もう止められなくて…彼女が恋しくて堪らない。


TRRRRRRR・・・・・


期待を裏切るようにコール音だけがむなしく響き渡る…

何で出ないんだ…?

12時は過ぎたが…この時間ならまだ起きてるはず…。

…シャワーにでも入ってるのか…

そう思って電話を切ると社さんが近づいてきた。

「キョーコちゃんに帰るコールか?」

にまにまと嫌な笑みを浮かべて近づいてくる社さん…これは俺で遊ぶ気だな?

「それにしてもさ~…びっくりしたよ。

まさか…キョーコちゃんとこうも上手くいくなんてね…。

正直さ、社長の指示とはいえ…相手はあのキョーコちゃんだろ?

普通の子とは違うからね…あらゆる意味で…。

それにさ…聞けば聞くほど…キャラ設定といい…衣装といい

生殺しもいいとこだよな…って心配してたけど…

まっ、その甲斐あって…ヘタレ返上できたわけなんだから…

社長には感謝しなきゃ…だな?」

社長…にはまだ話していない…

社さんはずっと…俺とあの子の仲を見守ってくれてたから…

あの子の変化に気づいた社さんに問い詰められた。

あの日…つい調子に乗って無理をさせてしまったから…

彼女が歩けなくなってしまって…

仕事に穴を開けてしまったのは…俺のせいなんだけど。

まぁ…その辺は彼女のペースに合わせて…

俺のものだっていう印が消えない程度に…我慢してる。( ← 我慢してるのか?Σ(・ω・ノ)ノ!)

ただ…社長は…今回のことだって…

俺のことを心配しているようでいて…絶対俺達で遊んでるに違いないんだっ!

うまくいったなんてバレたら…次は何をさせられるか…。

「…社さん…そのことなんですが…

しばらくは社長には内緒にしておいてもらえませんか?」

「ん?…別にいいけど…俺が気付く位なんだから…社長にはもうバレてるんじゃないのか?」

「いえ…ここのところ接触してないんで…まだ…」

「まぁ…確かに今は邪魔されたくないもんな?」

「…ですね。社長には俺の方から折をみて話しますから…」

「いいよ。俺は知らない振りするから…って…それじゃ、帰るか?」

「そうですね」

そこへ緒方監督が声をかけてきた。

「敦賀君、社さん…これからスタッフと友人と飲みに行くんですが…よかったらお二人も一緒にいかがですか?」

「あ…俺は…」

断ろうとした時…監督を呼ぶ声に遮られた。

「啓文~っ…」

メガネをかけた年上の女性が近づいてくる…。監督の…彼女か?

「春樹…もう仕事終わったの?」

「ええ、スタジオがこの近くだったから…ここまで送ってもらったのよ。」

「そうか…あっ…敦賀君、紹介するね?

僕の親友の麻生春樹…キョーコさんとは不破君のプロモで一緒に仕事もした…音楽プロデューサーなんだ。」

不破の…音楽プロデューサー…そういえば、以前監督が倒れたときに…彼女から聞いたような気が…

「…敦賀です。」

「初めまして…啓文がお世話になってます。

でも…やっぱり、実物は違うわね?背も高いし…素敵だわ。

…尚が敵わないはずよね…ふふっ

活躍するフィールドは違うけど…狙ってるものは同じ…なのよね?」

そういって含みのある笑顔で俺を見上げた…。

「?!」

まさか…キョーコのことを云ってる?!

「…何の話?」

きょとんとした顔で俺と彼女の顔を見ながら聞いた監督の言葉には応えずに…

不敵な笑みを俺に送る。

…知ってるのか…彼女達のこと…そして俺の気持ちまで?!

「いえ…何でもないの…って電話だわ…ちょっとごめんなさい?」

そこへ…彼女の携帯が鳴った。

「もしもし…あっ…安芸さん?どうしたの…?ええっ?!尚が倒れたって大丈夫なの?

ええ…それで?…ええっ?キョーコちゃんと一緒に…そうなの…わかったわ。

そうね、明日は休ませていいわ。ええ…尚にもゆっくり休むように伝えて?

また後でかけるわ。ええ、それじゃ…。」

今…なんて言った…?

不破が倒れて…キョーコちゃんと一緒…一緒にいる…って?

キョーコが…不破と?!

…聞こえてきた言葉に耳を疑う…。

…どういうことなんだ?

驚いて声の出ない俺の代わりに社さんが聞いてくれた。

「麻生さん…不破君が倒れたって…キョーコちゃんが一緒ってどういうことですか?」

「えっ?!」

「彼女はうちの…LMEの大切なタレントです。

スキャンダルになるようなことにでもなったら…

彼女にはまだマネージャーが付いていません。

LMEのタレントをマネージメントする立場としては…代わりに状況を把握しておきたいんですが?」


社さんのおかげで…得た情報によると

歌番組の収録後…同じテレビ局でドラマの撮影をしてたキョーコに…会いに行って…

そこで不破が急に倒れたらしい…。

彼女が不破のマネージャーを呼んで…そのまま一緒に付き添っているのだと…。

アイツの家で…


何でなんだ…?どうして…彼女とアイツは…出逢ってしまうんだ?

…運命が引き寄せるとでもいうのか…二人を…二人が結ばれるために…?

携帯も変えさせた…彼女との連絡手段は断ったんだ。

それなのに…

彼女の特別は…もうお前じゃない…彼女を手にしたのは俺なんだ…。

なのに…なんでこんなに不安なんだ…。

今も…こうしている間にも…アイツが…彼女に想いを…

彼女をまた…無理矢理奪おうとしてるんじゃないかって…

目の前で奪われたキスのように…彼女自身を…そう思うだけで

「っつ…」

胸が…痛みで悲鳴を上げる。

どうして…キョーコはアイツに付き添って…

いや…彼女は…代マネの時…嫌いだったはずの俺の看病もしてくれたじゃないか…

あの子は…そういう子なんだ…。


だけど…わかってない。

一人暮らしの男の家がどれだけ危険で…アイツが君をどんな目で見ているのか…

君がどれだけ魅力的で…無防備なのか…まったくわかってないんだ。


俺がどれだけ…君を愛していて…この身を焦がしているかも…君はしらない…。

彼女を迎えに行くため…社さんを乗せて…アイツのマンションへと急ぐ車…。

気持ちばかり焦って…着くまでのわずかな距離を…すごく遠くに感じていた。


→ 6話へ続く