不死蝶 ~ フェアリー ~  君の帰る場所 6 | a guardian angel

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スキビ好きな私が無謀にも始めてしまった…

二次創作・ネタバレ・つぶやきを含む妄想ブログです。

当然のことながら、作者さま・出版社さま等とは一切無関係です。

( SIDE キョーコ )


私の手を握って眠るショータロー…久しぶりに見るその寝顔に…手の温もりに

私は…昔の自分の姿を思い出していた。

今…カインと…ヒール兄妹として彼と暮らしている。

ショータローと二人で過ごした日々は…今の暮らしと比べると…本当に

子どものままごとだったんだなって…思った。


確かにあの頃の私は…ショータローがすべてで…アイツに尽くすことが…

尚ちゃんが喜んでくれるから…その想いだけが…私を突き動かしていた。

あの日…ショータローと決別した日に言われたように…

ショータローに頼まれて…してたわけじゃない…。

無理して借りていたあの部屋も…ショータローの世話も…

私がしたくてしていたことだった…。

ただの自己満足…だったのかもしれない。

自分を犠牲にして…彼の為に頑張る私に…満足してた。

だんだん…ショータローが遠くになっていくのを寂しいと感じながらも

我儘なんて…自分の気持ちを口にしたことなんてなかった。

言わないでもわかってくれる…私は特別なんだって…

幼なじみとして過ごした時間がそんな奢りを持たせたのかもしれない。

京都にいる頃から…ショータローはモテていたし…

特定の子は作らなくても…仲のいい女の子はたくさんいた。

だから…東京に行く時…私を選んでくれたことが単純に嬉しかった。

私には…格好つける必要もなかったし…ただ便利な都合のいい女…

そんな理由だったとしても…

でも、実際に…あんなにも簡単に…切り捨てられて…

愛情を憎しみにすり替えることで…私は自分を保ってきたんだ。

だけど…彼と出逢って…『愛される』ってことを知った。

そして…わかったの。

私はただ…誰かに愛されたかったんだって…

それがたまたま…近くにいたショータローだったんじゃないかって

好きだったという気持ちさえ…遠くに感じる。

彼と過ごす甘い時間が…私の中の憎しみを和らげていく…。


だから…私はもう…忘れるって決めたの…

私が…好きなのは彼で…私の手を彼が必要としてくれてるから…

彼の抱える苦しみから…少しでも救うことができるのなら…

その悲しみを和らげさせてあげられるのなら…

私のこの手は彼を抱きしめる為に使いたい。


私の中にいるショータローは…ただの幼なじみになる…。

まだ…顔を見れば憎たらしいと思うし…

想いが完全に消えたわけじゃないけど…彼と過ごす日々が

きっと忘れさせてくれる…そう感じてる。


だから…考えないようにしてきた。

あの日のショータローの…こと。

なんで…?傷ついたみたいな顔をしたのか…

ソレを考えちゃいけないって…なのに…

私の手を離そうとしないショータローに腹が立った。


私を振り回さないで…もう、私はあんたを好きだった頃の私じゃない。


「…イヤだ。」

そう云って…私を抱きしめる腕が…震えてる…。

「イヤだって云ってるだろ?…」

耳元で囁かれて…ショータローに…男を感じてる自分が嫌だった。

「イヤッ…離して…っ」

ドキンドキンと…心臓の音が大きくなっていく。

どんなに暴れてもビクともしない…

ショータローの匂い…逞しい腕…

あの日…私のファーストキスを奪った時には感じなかったのに…

何かが…私の中で警鐘を鳴らしてる。

これ以上…近くにいちゃダメだ。

早くこの腕から逃げないと…掴まる…

掴まる…?

何に…?

わからない…とにかく逃げなきゃ…

私の帰る場所は…ここじゃない。


そんな私の迷いを見透かすように…

彼が…携帯の音が私を責め立てる。

私は彼のところに帰らなきゃ…

急いで帰らなきゃ…

私の中の何かが壊れる…予感に不安が募る。


「ちょっと…早く離してよ…

電話が…電話が切れちゃうじゃないっ。」


焦って…携帯の方ばかりみていた私は…

この時ショータローがどんな顔をしていたかなんて知らなかった。

「俺は…お前が…」

そう云ったショータローの声に…私の視界が反転する。

ドサッ…

押し倒されて…私の目には天井と…

私をまっすぐにみつめるショータローの顔…が映る。

泣きそうな顔…苦しくて…切なくて…そんな想いが顔に滲んでいた。

私の腕を拘束するショータローの腕…

…耳を塞ぐことも許されない。

…逃げ…られないっ。

ぎゅっと目を瞑った私に…絞り出すような声で…告げるショータロー…

「俺だけを…みてくれ…お願いだから…」

らしくない…弱気なセリフ…

「……。」

そのままの姿勢で沈黙が続く…。

そっと目を開けると…ショータローと目があった。

「キョーコ…お前の一番でいたいんだ…。

俺は…お前が…好きだ。」

そう云って…ショータローの顔が近づいてくる。

掴ま…る。

私の唇に重なるショータローの柔かい…唇の感触。

私に覆いかぶさるショータローの重みを感じながら…

気がつけば…部屋は静寂に包まれていて…

聞こえるのはお互いの吐息と…心臓の音だけ…。

あの日とは違う…優しい…キスが少しずつ深くなっていく。

時間が止まる…思考さえも奪うように…


(ダメ…違うのに…私の帰る場所は…)


→ 7話へ続く