君を守るチカラ ( 次世代編)  ~ Switch 3nd シーズン ~  第4話 | a guardian angel

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スキビ好きな私が無謀にも始めてしまった…

二次創作・ネタバレ・つぶやきを含む妄想ブログです。

当然のことながら、作者さま・出版社さま等とは一切無関係です。

(Side 蓮)


もう少しでキョーコに会える…この3カ月…本当に長かった。

電話やメール…ネット越しに見るキョーコの姿…

早くこの腕に君を抱きしめたくて…

一緒にいることがあたりまえになると…こんなにも寂しく感じるものなんだな…。

結婚して半年…のうち半分は仕事で会えてない…。

だけど、一緒に来て正解だった。じゃなきゃ…今頃…

日本で…キョーコに群がっているだろう馬の骨を思い浮かべてはイライラを募らせていたに違いない。

もうすぐ…子どもも産まれる…。

キョーコと築いていく何気ない毎日がすごく幸せで…

この幸せをずっと守って生きていけることが俺の生きがいとなってきている。


空港に着くと…タクシー乗り場へと急ぐ…。

そんな俺の視線の端に見知ったスーパーが映し出されているのに気づいた。

ふと足を止めてその大型スクリーンに視線を送ると爆発音とともに人が流れ出てくる。

その映像を見上げてる俺に携帯電話が鳴る。

電話の主は母だった。

「クオン?!あなた今どこにいるの?」

「今…空港に着いたところです。これからタクシーで家に…」

「キョーコが大変なの!近くにテレビはある?」

「ええ…今、ちょうど…見てたところで…」

画面の中に…逃げまどう人の流れに押されて倒れ込むキョーコの姿を見つけた。

「?!」

あれは…いや!まさか…でも俺が見間違うはずがない!!

「さっき、一緒に買い物に行ったキャシーから電話があったの。いつも行くスーパーで発砲事件が起きて…逃げていく人混みの中でキョーコを見失ったって…その後、爆発が起きて…その中の犠牲者には含まれていなかったのに姿が見えないって…」

母の声が…よく聞こえない…

テレビから流れる映像…がスローモーションのように目に焼きつく…

お腹を打ち付けるように転んだキョーコが…真っ青な顔で…

苦しそうな顔で…今にも倒れそうな足取りで歩きだす姿…

俺はもう走り出していた。

とにかく…キョーコのところへ!!

俺はタクシーに乗り込むと急いでスーパーに向かってくれっと叫んだ。

冷静でなんかいられなかった。

苦しそうな顔をしていたキョーコの顔ばかりが頭の中を占める。

キョーコ!キョーコ!キョーコ!!

君に何かあったら…そう思うだけで…生きた心地がしなかった。

どうか…どうかキョーコとお腹の子が無事でありますように!!


10分ほど走ったところで…また携帯が鳴った。

キョーコがみつかり、そのまま病院へ搬送されることになったと…。

俺はその言葉に心臓が止まるかと思った。

そんな俺を安心させるかのように…穏やかな口調で母が言った。

「はっきりしたことは分からないけど…キャシーの話だと体に異常はないそうよ?

ただ、ショックでお産が始まった…って。

私も今病院へ向かってるところ…キョーコは大丈夫よ!だから…

あなたも父親になるんだから…しっかりしなさい。」


病院に着いた俺は…分娩室の外で待つ母さん達と合流した。

病院に着いたキョーコは…意識を取り戻し…診察を受けるとそのまま分娩台へと上った。

そして…今初めての陣痛に苦しみながらも頑張っているのだと聞かされた。

落ち着かない様子でウロウロする俺に母さんが…

「クオン…少し落ち着いて?

とにかく…今は無事子供が産まれてくるのを祈りましょう…」


********


それから…しばらくして…元気な産声が聞こえてきた。

その泣き声を聞いて少し安堵するが…

どうしてもさっきの映像が頭から消えなくて…そんな不安に支配されている。

今まで意識したことのなかった…愛する者の死を連想させるソレは

俺の心に暗い影を落としていた。

「元気な男の子ですよ。おめでとうございます。お父様どうぞ…」

ドアを開けるとそこには…わが子を抱いて聖母マリアのように優しく微笑むキョーコの姿があった。

俺はその姿に…安堵するとともに…

キョーコの胸ですやすやと眠るわが子に視線を落とすと

ぼやけていく視線の中で…子どもの背に天使の羽が見えたような気がした。


空港についてからここに来るまでの短い時間が…気が遠くなるほど長く感じられた。

やっと会えると思ったキョーコが…事件に巻き込まれ…

幸せの絶頂から真っ逆さまに落ちていくような…

キョーコを失うかもしれない恐怖で生きた心地がしなかった。

無事だと知らせを聞いた後も…その姿を見るまではどこか不安で…

そんな緊張感が解けたのもあってか…俺は泣いてしまった。

そんな俺をみて…何事もなかったかのような顔でキョーコが話しかける。


「おかしいですね~あなたのパパ…泣いてますよ?うふふっ」

俺はキョーコと産まれたきた子供に近づいて膝まづいた。

「無事で良かった。キョーコ…本当に…本当にありがとう。」

…こうして君に会えたことが何より嬉しい。そして初めてみるわが子に

胸の奥がくすぐったくなるような嬉しさを感じて…

子供ごとキョーコを優しく抱きしめた。

「ちょっ…ちょっと、クオンったら…まだ先生や看護師さんが…」

「ふふふ。続きは個室に行ってからにしてもらいましょうか?」

そう看護師さんににこやかに云われて…部屋を後にする。

後で聞かされた医師の診察結果は…奇跡が起きたとしか思えなかった。

お腹を強打した形跡があるのに…奇跡的に母子ともに異常が見られないと…

本来なら母子ともにかなり危険な状態だっただろうにと医師も首を傾げていた。

その言葉にキャシーが反応した。

「あの人が…キョーコお嬢様を見つけてくれた人が…

不思議な力を使ってキョーコお嬢様を見つけてくれたんです。

きっとあの人が…その力で助けてくれたんだわ!」

「あの人?」

「ええ…私ったら気が動転してて…名前を聞くことも忘れてしまったわ。

銀色の髪をした…そう…ぼっちゃまとキョーコお嬢さまの芸名を…

…あら…そういえば、どうしてわかったのかしら?」

「?」

キョーコが個室に移る準備をしているときに…玄関先を見てキャシーが大きな声を上げた。

「あっ、あの人ですよ!!キョーコお嬢さまを見つけてくれた人!!」

その声に振り返ると…そこには…かつて馬の骨の一人だった…

彼女を襲ったストーカー…ビーグールのレイノの姿があった。

「産まれたのか…。一緒に日本から姿を消したから…薄々感じてはいたが…まさか妊娠してたとはな。」

その言葉に…つい視線が鋭いものへと変わる。

「妻がお世話になったようで…」

俺の表情にはお構いなしで淡々と語っていく…。

「俺は…見つけただけだ。何もしていない。助かったのは…お前達の子供のおかげだ。」

「?」

子ども?何を云ってる?

「云っても信じないだろうがな…お前達の子どもには特別な力があるみたいだぞ。

死相の出ていたキョーコが無事なのは…奇跡が起きたとしか思えん。」

「・・・。」

奇跡…確かに奇跡が起きたのかもしれない。医師も…あのキョーコの表情も…

この男が…ふざけたことを云ってるようには聞こえなかった。

そういえば…あの夏の日も…この男は俺の姿を言い当てた…。

そんなことを思い出していると…ひゅんっと不意に紙袋を投げてよこした。

「それは…キョーコの落とし物と子どもへの祝いだ。

深緑の石は…モルダバイト

お前たちの子どもに…きっと必要なものになるだろう。」

「…。」

「…それじゃ、俺はこれで。」

「キョーコに…会いに来たんじゃないのか?」

「いや、ソレを届けに来ただけだ。いずれ…また会うだろうしな。」

「?」

「いや、俺はあんたが苦手でね。

そうだ…あんたがキョーコにあげた石だが…

アレは狂気に満ちてたからな…案外あの石のせいで今回の騒動に巻き込まれたのかもしれないぞ。まぁ、それも息子がキョーコを助ける時一緒に浄化してくれたみたいだがな。

今度はそんなことが起きないように、時々月の光にでも当てて浄化するように…キョーコによくいっておけ。」

「?!」

石…ってアイオライトのことか?

確かに…アレは負の感情を受け過ぎてたかもしれないが…こいつは一体…?

それにしても…アイツは何を云ってるんだ?

お腹の中にいた子どもがキョーコを助けたって?そんなこと…

疑問を残したまま立ち去ろうとしたアイツに…

キョーコを救ってくれた礼を述べた。

「今回は助かった…本当に…ありがとう。」

そういうと…アイツは振り返らずに手だけ振って出ていった。


個室に移ったキョーコの元へと行くと…

中では初孫を抱いた母さんが嬉しそうにあやしていた。

「は~い、輪くん。グランマよ~。うふふ。かわいいわ~。キョーコに似て黒髪なのね。でも瞳は私かしら?」

母さんのその台詞に反論するように会話に交じった。

「母さん!それをいうなら俺でしょう?ところで…輪っていうのは…」

「輪廻転生の 輪 です。

生まれ変ってもまた出逢えるように…

私とあなたとこの子とまた来世でも出逢えるようにって思って…ってダメ?」

キョーコに…可愛く上目遣いでお願いされたら…ダメなんて言えないの…わかってるくせに。

「いいよ?素敵な名前だね。来世でもまたキョーコとこの子に会えるなんて

…いっぱい愛し合えるってことだしね。」

「え?///」

頬を赤らめたキョーコを見て母さんが俺に釘を刺す。

「クオン~。しばらくはエッチは禁止よ~。

産後の体は大事にしないといけなんだから。もうしばらくは我慢しなさい。」

「わかってるよ。俺だってこれでもいろいろ勉強してるんだから。」


そうだ…キョーコと会えない間…育児書片手によ~く勉強したんだから。

オムツだってミルクだって完璧だ!!

それにしても…アイツ…ホントに不思議な男だ。

キャシーの話じゃ…アスファルトに手を当てて…キョーコの居場所を突き止めたって…云ってたよな。

確かそういうのをサイコメトリーって…昔そんなドラマがあったな…。

イマイチ…信用できないが、アイツのおかげでキョーコが助かったのは事実だからな。

発見がもう少し遅れていたら…いや…奇跡が起きていなかったら…

今のキョーコには会えていないはずなんだ…。

そう思うと…あんな奴でも感謝せずにはいられない…。

俺は…手渡されたその紙袋から…石を二つ取り出した。

「キョーコ…これ。」

そう云ってアイオライトを見せると…

「失くしたかと思ってたの…ありがとう、クオン!」

すごく嬉しそうに石を手に取って…光にかざしたキョーコ…。

外はもう夕陽が覗いている。

「あれ?これ…こんなに澄んだ色してたかしら?」

「浄化してくれたらしいよ。」

「誰が?」

「輪が…」

「ええ?何いってるの?クオン…」

「って…彼が言ってたんだよ。君を見つけてくれたビーグールのレイノ君がね。」

「なっ…私を助けてくれた銀髪って…魔界人だったの??」

「魔界人?」

「だって…あの人妖しい能力があるんだもの。昔…もそれでケンカしたじゃない?」

「そう…だったっけ?」

「そうです!!あの人…敦賀さんが苦手なのよ。ふふっ、バレンタインの時もそのおかげで助かった…あっ」

バレンタイン…ってアレか…あの『憎』チョコ…不破が…

昔のことなのにフツフツと…あの時の出来事に黒い感情が…

「それは何?もうひとつの…」

焦ったキョーコが話題を変えてきた。

「これは輪に…って渡されたんだ。なんでかわからないけど…」

「輪に…この緑の石を…みどり…

あのね…私…今日…お腹を打って…本当に痛くて死ぬかと思った…

その時…この子だけでも助けてって思って…だけど…

母がいない寂しさをこの子に味あわせたくなくて…

離れたくないって思ったの。…そしたら…緑色の柔かい光が…集まってきて

緑色の閃光が走った瞬間…痛みが和らいで…

沈んでいくような感覚がなくなったのだけ覚えてる。

それと…何か関係があるのかな…

3人は顔を合わせた…。確かに…何か奇跡がおきたのだろう…。

その奇跡に感謝しなきゃ…

「だけど、お産はすごく安産だったみたいで…この分なら若いし、たくさん産めるよって太鼓判もらったのよ?」

「しばらくは…いいよ。」

あんな恐怖は当分ごめんだ…。お産は…キョーコにも大きな負担を強いる。今回だって…身重じゃなければこんなことになってなかったはずだ。そう思うと…

「あら~…キョーコ、この子相当辛かったみたいよ。禁欲生活が…」

「えっ?!/// 」

「なっ…それは…

…ないとはいえないけど。」

「って…なに言ってるんですか!二人とも!!/// 」

遅れてきた父さんを交えて…さらに賑やかになった病室には笑いが絶えなかった。


余談だが…夜泣きやぐずった時に…あの石を持たせると…不思議と輪はご機嫌になった。

隕石と云われているこのモルダバイトというパワーストーン…

持つ者を選ぶらしいが…輪とはかなり相性がいいらしい。


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