「借金ですか。借金ならわたしにもあるなあ」
「借金があるんですか?」
わたしの側からは、たとえば、乱暴者の子どもを持つ親ごさんが、
「うちの子、全然いうこときかないんですよねえ」
と嘆くのに対して、
「あら、うちの子も同じですよ~」
そう答えるような、リップサービス的なものでした。
あなたと同じですよ、と表面上だけでも
同調することで、互いに親近感をもち、
嘆いているところの相手にも安心してもらおうとする、よくある会話パターンです。
それなのに、モラさんからの返事をきいたとたん、わたしの胸には何故か
「しまった」
そんな、深い悔いがおこりました。
目の前に黒い緞帳がざあっと降りてきたような、不吉で落ちつかない、不安感。
おしゃべりの相手は、それまで三年ものあいだ
わたしと他愛のない雑談を重ねてきた相手でした。
わたしに「友情」を覚えてくれて、毎日のようにメールをくれていた相手でした。
突然の、わたしの不安の正体。
それはなごやかに楽しく続いていたはずの、「親切なモラさん」との
交流のどこかでいつも、ちかちかとまたたいていたはずの、本能の警報では
なかったかと思います。
この人に「情報」を与えると、とんでもないことになる。
どこかで予感していた、その予感がはじめて、身に迫った気がした瞬間でした。
その予感は、実現します。
わたしも、わたしの交友関係も、めちゃくちゃにされていきました。
モラさんは、おそらくボーダーと呼ばれる人格障害にカテゴライズされる女性なのだと
思いますが、その後、6年のながきに渡ってストーカーされるとは。