借金 | 毒を持つ人

愛想よく、親身な態度で、近づいてきた人が。

ここぞという時には慰めの言葉、はげましの言葉を連ね、親切を全開にして

接近してきた、その相手が。



ある日、牙をむき出す。


「コトンさん、借金があるんですか?」



お金の話などするものではないことを承知で説明すると、わたしの「借金」とは

母から借りていた、少額のものでした。

親族が遺産を生前分与してくれ、わたしの分を、母があずかっていたのです。

そこから当時ひとり暮らしをしていたわたしに、必要であろうと、母が貸してくれていました。


際限なく無駄遣いしないよう、また、遺産をのこしてくれた人への恩義を忘れないように

それはあくまでも、一時的に借りているお金として扱われ、いずれはわたしから

母に返し、母がわたしの名義でプラスマイナスゼロにして、ちゃんと貯金しておいて

くれることになっていました。


「借金」のかたちにしたのは、生活費としてなし崩しに消えていくことを

母が好まなかった為です。

わたしもそれに同意していました。

とはいえ、肉親同士の甘えもあり、いつかまとめて返さなきゃと思いながらも

だらだらと母から借りたかっこうになったままのお金でした。

母は母で、結局は私のお金ですし、お金の大切さを知り、無駄遣いさえしなければ

それでいいと思っていたようです。


何ということのない、いつもの雑談の中。

その人(モラさんとします)が、半笑いの調子で、こう言いました。

「うちの親は、親戚にさんざん借金してた」


わたしは交流を通して、モラさんの実家の構成や、その生育環境、財政状況について

そこそこ把握していました。

(モラさんが自分の方から、そのあたりのことを、あっけらかんと喋るのです)

※後にこれがボーダー特有の、「誘い水」であったことを知ります。



この時のモラさんの告白も、モラさんのブログをとおして、すでに承知のことでした。

なにげなく、わたしは返答しました。

「借金ですか。借金ならわたしにもあるなあ(笑)」


その途端です。

モラさんは、大急ぎといった調子で、息せき切ってともいえる調子で、喰いついてきました。

「コトンさん、借金があるんですか?」



こうして文字にすると、一見なんでもない受け答えです。

ですがその瞬間、わたしの胸の中で、ボダさんとの初対面の時にも覚えた

正体不明の警報が、しずかに鳴りだしました。