未完:恋愛長編小説@第6話「先生の隣にいさせて。」 | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

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趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。












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・・・・・・・・・・・・・・「先生の隣にいさせて。」第6話











さっ、私も用意しなきゃ。





部屋に戻って、真新しい制服に袖を通した。



パリッとしたシャツが、背筋をシャンとさせる。


首元の赤いリボン。


キュッとすれば苦しいし、ゆるくすればだらしない。


ちょうどいい場所を見つけるのに手間取った。





少し長めのスカートは、なんだか落ち着かない。


東京だし…そう思って、ウエストで一回折り返す。




髪は…結ぼうか…。



サイドの髪をちょっとつまんで、耳を出してみた。


う~ん…。



やっぱりこのままでいいや。






両親から入学祝いにもらった腕時計を、左腕につけてみる。


今まで時計なんて着けていなかったから、何だか気になって仕方がない。



やっぱり外そうか…。


いや、つけて行こう。




時計の針を合わそうと、部屋の時間を見る。

わっ、もうこんな時間!


あんなに早く起きたのに。




バタバタと用意して、リビングに向かう。




「お姉ちゃん、おはよう!」






「おはよう、塔子。」


綺麗にお化粧をして、春色のスーツを着たお姉ちゃんが、朝食をとっていた。





「ご飯できてるよ。」



「ありがとう!」



お姉ちゃんの作ってくれたご飯を、急いで食べる。







「ごちそうさま。お姉ちゃん、途中まで一緒に行こう。」



食器を片づけ、椅子の背にかけてあったブレザーを、手に取った。





「ブレザーのしつけ糸、はずしてある?」



お姉ちゃんに言われて、ブレザーの裾を見ると、×の形に縫われた糸がついていた。





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「これ、切るの?」



「切るんだよ。ほら、貸して。」






お姉ちゃんはパチンと糸を切って、窮屈そうに繋がれた2枚の布を解放してあげた。




「ポケットも見てごらん。」




「あっ、縫ってある!」



「これも取んなきゃ。そうしないと使えないよ。」





「へえ…お姉ちゃん、何でも知ってるんだね。」



「教えてもらったの、私も。…さ、これで大丈夫。」





お姉ちゃんはにっこり笑って、私にブレザーを着せてくれる。



肩の辺りをポンと叩いて、ぎゅっとした。




「うん、バッチリ。一枚写真撮らせてね。お父さんとお母さんに送るから。」



私は、いつもながらのピースサインで写真に納まった。





「じゃ、一緒に出ようか。」



「うん。」




ドアを開けて一歩外に出ると、春の風がサーッと吹き抜けていった。

















学校に着くと、名簿でクラスを確認するように言われた。




1年…B組…か。



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いろいろ入った分厚い封筒を受け取って、教室へと急いだ。




奥から2番目の教室に、1年B組の表示。







そっと中を覗けば、緊張した雰囲気が漂っている。




黒板に「入学おめでとう」の文字。


それと、出席番号順に座るようにと書いてあった。




全く知り合いのいない私は、そっと自分の席に着き、見るともなしに封筒の中の書類を出したり入れたりしながら、時間を潰していた。




前の席の子が、「よろしく」と話しかけてくれたので、私も挨拶をする。


彼女と仲良くなる前にチャイムが鳴って、ガラッとドアが開いた。




ビクッとして背筋がピンとなる。





「おはよう!」




その声にドキッとして、入ってきた人の顔を見れば、あまりの驚きに心臓が止まるかと思った。



見覚えのある黒の礼服と、その横顔。





…先生?うそでしょ?




「えー、これから入学式に…。」



話しながら教室の真ん中までくると、教卓に手をつき、私たちの方を向く。



ほどなく、ほぼ真正面に座っている私と目が合った。





「入学式に…。」




先生の言葉が止まり、手元の紙に視線を落とす。




そして、もう一度私を見た。



長めの瞬きを一つして、言葉を続けていく。





「えっと…に、入学式になりますが…えっと…じゃあ、とりあえず廊下に並んでください。」





クラスのみんなは、そろそろと立ち上がり、廊下に並び始めた。


私はその場から動けずに、ただぼーっと先生を見上げていた。




先生は、教壇から降りて私の横にそっと立ち止まり、他の生徒にわからないように私に声をかけた。




「やっぱり、塔子ちゃんだったんだ…。」




「えっ?」




「クラスの名簿を見たときに、塔子ちゃんと同じ名前だって気付いたんだけど…まさか、ほんとに塔子ちゃんだったとは…ギリギリでいろいろ決まったから、バタバタだったんだ。とりあえず、俺たちのことは内緒で…。」




「は、はい。」




「よし、じゃ、行こう。」




先生の後ろについて、教室を後にした。

あまりの展開に、じわっと汗がにじむ。





入学初日から秘密を持った私たち。


なんだか悪いことをしているようで冷や冷やする。





だけど、正直ホッとした。


一人きりで不安だった私は、先生のおかげでとても心強くなった。







こうして私の担任は、お姉ちゃんの彼氏、「成田くん」になった。