未完:恋愛長編小説@第7話「先生の隣にいさせて。」 | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

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趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。












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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「先生の隣にいさせて。」第7話














―俺たちのことは内緒で―




内緒…


先生と私の秘密。







体育館で席に着くと、先生の姿を探した。



左前方の職員席。


校長先生の隣の隣に座っている。




「一同起立。」




ハッと気づけば、みんな立っていた。


遅れて急いで立ち上がる。




そっと先生の方を見れば、こっちを見ていて目が合った。


口元に手をあて、笑いをこらえている。


…やだ…見られた…恥かしい…




顔が熱い。


耳までも…ううん、全身が熱い。





そこからは、終始俯いたままでいた。



式は粛々と進んでいき、次はクラス全員の名前が呼ばれる。




「1年B組…


先生の声が、マイクを通して、力強く響いてくる。



「浅井健二。」



「はい。」




「石川雄太。」



「はい。」





だんだんと自分に近付くにつれ、心臓が悲鳴を上げる。


頬が引きつり、ぴくぴく動く。



毎日何度も「塔子ちゃん」と呼ばれているのに、なんでこんなに緊張するの?


拳を強く握りしめ、何度も深呼吸をした。






「美月塔子。」




「はい。」




…式の前、体育館に入るときに、みんなに向かって先生が言っていたことを思い出す。



「いいか、体育館で俺が名前を呼んだら、必ず俺と目を合わせろ。こっちを見るんだぞ、いいな?」





私は返事をして立ち上がり、先生の方を向く。


先生の目が、ほんの一瞬細くなった。






ホッとした。



それと同時に、突風で飛ばされた桜の花びらのように 心が舞った。





「美月塔子」





うちで名前を呼ばれるのとは、全然違う。




自分の中では消化しきれない何かが、そっと生まれようとしていた。






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