昔話を語りつぐということ ~ 「むかしのはなし」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。



  わたしを記憶するものは誰もいない。

巻頭の独白の一部です。不思議な文です。
すでに死んでしまった「わたし」が語っているようでもあり、
記憶している人がみんな亡くなったようでもあり、
「わたし」を憶えていた人が記憶を失ったのかもしれません。

  語り伝えよという声のみが響く。

「わたし」に聞こえるこの声の主は誰でしょう?
そして誰に語りつぐのでしょうか?

         


昔話ばなしモチーフにした三浦しをんの短篇集です。

むかしのはなし / 三浦しをん (幻冬舎文庫)
 ¥576 Amazon.co.jp / ¥354 Kindle版
(目次はブログ末尾をご参照ください)

かぐや姫、花さかじいさん、浦島太郎といったおなじみの
昔ばなしをモチーフにした7篇です。

各篇の冒頭にモチーフの昔ばなしのあらすじが紹介されています。
知らない話があっても、ご心配なく。

         

  - あれ?もしかしたら・・・・。

読み進むうちに気づきました。
どうやら、各篇が関連づけられているようだと。

  - ほう、そういうことかぁ。

終盤にさしかかると、さらに大きな仕掛けに気づきました。

巻頭の文章の背景や意味が輪郭をおびてきます。
昔ばなしをモチーフにしたのにも理由があったんですね。

         


映画や小説でも時どき使われる物騒な設定も、
そこにヒューマン・ドラマを織り込むだけならありきたりに陥ります。

さらに大がかりな仕掛けがうきぼりになると、
とっくに読み終えた各篇に新たな意味あいが加わり、
この短篇集での位置づけが変わります。

         


最初に読んだ時を体験した時点とすれば、
意味合いや位置づけをしなおした時点はその体験を振り返り時。

  - むかしむかし、あるところに・・・・・・

昔ばなしが産声をあげる瞬間に立ち会った気分になりました。



<目次> ( )は関連する昔話

ラブレス (かぐや姫)
ロケットの思い出 (花咲か爺)
ディスタンス (天女の羽衣)
入江は緑 (浦島太郎)
たどりつくまで (鉢かつぎ)
花 (猿婿入り)
懐かしき川べりの町の物語せよ (桃太郎)
あとがき


[end]


*** 読書満腹メーター ***
お気にいりレベル   E■■■□□F
読みごたえレベル  E■■■□□F

ペタしてね
(ペタお返しできません。あしからず。)

*****************************
作家別本の紹介の目次なら
日本人著者はこちら

海外の著者はこちら

*****************************


<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。