わたしを記憶するものは誰もいない。
巻頭の独白の一部です。不思議な文です。
すでに死んでしまった「わたし」が語っているようでもあり、
記憶している人がみんな亡くなったようでもあり、
「わたし」を憶えていた人が記憶を失ったのかもしれません。
語り伝えよという声のみが響く。
「わたし」に聞こえるこの声の主は誰でしょう?
そして誰に語りつぐのでしょうか?
◆
昔話ばなしモチーフにした三浦しをんの短篇集です。
- むかしのはなし / 三浦しをん (幻冬舎文庫)
¥576 Amazon.co.jp / ¥354 Kindle版
かぐや姫、花さかじいさん、浦島太郎といったおなじみの
昔ばなしをモチーフにした7篇です。
各篇の冒頭にモチーフの昔ばなしのあらすじが紹介されています。
知らない話があっても、ご心配なく。
◆
- あれ?もしかしたら・・・・。
読み進むうちに気づきました。
どうやら、各篇が関連づけられているようだと。
- ほう、そういうことかぁ。
終盤にさしかかると、さらに大きな仕掛けに気づきました。
巻頭の文章の背景や意味が輪郭をおびてきます。
昔ばなしをモチーフにしたのにも理由があったんですね。
◆
映画や小説でも時どき使われる物騒な設定も、
そこにヒューマン・ドラマを織り込むだけならありきたりに陥ります。
さらに大がかりな仕掛けがうきぼりになると、
とっくに読み終えた各篇に新たな意味あいが加わり、
この短篇集での位置づけが変わります。
◆
最初に読んだ時を体験した時点とすれば、
意味合いや位置づけをしなおした時点はその体験を振り返り時。
- むかしむかし、あるところに・・・・・・
昔ばなしが産声をあげる瞬間に立ち会った気分になりました。
<目次> ( )は関連する昔話
ラブレス (かぐや姫)
ロケットの思い出 (花咲か爺)
ディスタンス (天女の羽衣)
入江は緑 (浦島太郎)
たどりつくまで (鉢かつぎ)
花 (猿婿入り)
懐かしき川べりの町の物語せよ (桃太郎)
あとがき
[end]
*** 読書満腹メーター ***
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読みごたえレベル E■■■□□F
(ペタお返しできません。あしからず。)
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