それなりに長いあいだ生きていると、山や谷があって、
谷にはあっという間に転げおちても、
立ち止まってふりかえれば、見晴らしのいい高さを歩いています。
毎日に大きな変化がなくても、いつの間にか、
傾きに気づかないほど緩やかな上り坂を登っていたのでしょう。
この作家の作品は、性にあうようです。
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神かくし/南木 佳士 (文春文庫)
¥520 Amazon.co.jp
映画にもなったあの「阿弥陀堂だより」の著者の作品。
「神かくし」、「濃霧」、「火映」、「廃屋」、「底石を探す」の5篇が収まっています。
いずれも、信州あたり(?)の田舎に住む、
心の病を得てゆっくりと長年かけて快方に向かっている医者が主人公です。
老姉妹、複雑な関係の親戚、高校時代の同級生の原稿、
秋谷の実家、昔かよった釣り場といったものが語りのねたです。
◆
昔の記憶をたどりながらも、現在から逃げて懐かしさに浸るわけではなく、
今に至る軌跡をたしかめて、また今にすうっと戻るような感じです。
過去のシーンと今の間がつながらないときは、むりせず、また今に。
この過去から今にすうっと戻る語りが、今を生きていることを感じさせます。
主人公は、病から人づきあいを苦手としながらも、
周りの人たちとのちょっとした関わりが、迷いとともに描かれています。
そのあたりの速度感、温度感、時間軸の中での身のおきかたが、
私の欲しているものと波長があっているのか、心地よく読みすすめました。
◆
ただいま、朝4時45分。
さあ、また昨日とよく似た一日が始まります。
*** 読書満腹メーター ***
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読みごたえレベル E■■■□□F
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