ダメンズもかっこいい ~ 「阿弥陀堂だより」 | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

いぜんからこの本のタイトルに惹かれていながら、
なぜだか買いそびれていました。

阿弥陀堂のある舞台はどんな寺町か村なんだろう?
  阿弥陀堂にまつわる何を伝えたいんだろう?
便りで誰が誰に伝えたいんだろう?
  どんな人たちの関わり合いが描かれているんだろう?

地味にじわっと惹かれる魅力です。

    

阿弥陀堂だより/南木 佳士 (文春文庫)
¥530 Amazon.co.jp

新人賞受賞以来、本を出せない小説家孝夫、
彼の妻、美智子はその道では有名な医師。
あるできごとがあり、ふたりは孝夫の故郷の山里に移り住みます。

その山里で何十年にもわたり阿弥陀堂に暮らすおうめ婆さん。
声を失い東京から戻り役場につとめる小百合ちゃんが、
"阿弥陀堂だより"を綴ります。

    

何十年にもわたり阿弥陀堂を独り身で守るおうめ婆さん96歳。
40代前半の孝夫と美智子。20代の小百合。
異なる世代が、同じ村で同じ時間を共有しはじめます。

阿弥陀堂には、村で亡くなった人の名を書いた札がずらり。
むかしから脈々と流れてきた時間を感じます。

これらは命に向き合う時間でもあります。

少ない数のひとたちの人間関係は、距離をおきながらも、
互いを思いやる様がゆったり流れる時間の中で描かれてています。

    

孝夫の年収は20万円ほど。
経済的には医者美智子のおかげで成り立つ暮らしです。

世間からみれば、働きもせずぶらぶらしてる夫に見えるでしょう。
原稿用紙にろくに字すら書いていません。

でもなぜか、この夫婦、かっこいいです。
寄り添って暮らしている雰囲気ってかっこいいです。

    

読んでいて、
自分の血がさらさらになり、流れもゆったりしたような、
気の休まりを感じました。

今年の歳末、
その年に読んで心に残った作品を指折りふりかえるとき、
またこの作品を思い起こしそうです。

新しい本も、出てから時間が経った本も、
ことしは気持ちにしっくりとより添う作品に恵まれています。


[end]

***************************************
<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
 その本を紹介した記事にとびます。
***************************************
ペタしてね