いぜんからこの本のタイトルに惹かれていながら、
なぜだか買いそびれていました。
阿弥陀堂のある舞台はどんな寺町か村なんだろう?
阿弥陀堂にまつわる何を伝えたいんだろう?
便りで誰が誰に伝えたいんだろう?
どんな人たちの関わり合いが描かれているんだろう?
地味にじわっと惹かれる魅力です。
◆
阿弥陀堂だより/南木 佳士 (文春文庫)
¥530 Amazon.co.jp
新人賞受賞以来、本を出せない小説家孝夫、
彼の妻、美智子はその道では有名な医師。
あるできごとがあり、ふたりは孝夫の故郷の山里に移り住みます。
その山里で何十年にもわたり阿弥陀堂に暮らすおうめ婆さん。
声を失い東京から戻り役場につとめる小百合ちゃんが、
"阿弥陀堂だより"を綴ります。
◆
何十年にもわたり阿弥陀堂を独り身で守るおうめ婆さん96歳。
40代前半の孝夫と美智子。20代の小百合。
異なる世代が、同じ村で同じ時間を共有しはじめます。
阿弥陀堂には、村で亡くなった人の名を書いた札がずらり。
むかしから脈々と流れてきた時間を感じます。
これらは命に向き合う時間でもあります。
少ない数のひとたちの人間関係は、距離をおきながらも、
互いを思いやる様がゆったり流れる時間の中で描かれてています。
◆
孝夫の年収は20万円ほど。
経済的には医者美智子のおかげで成り立つ暮らしです。
世間からみれば、働きもせずぶらぶらしてる夫に見えるでしょう。
原稿用紙にろくに字すら書いていません。
でもなぜか、この夫婦、かっこいいです。
寄り添って暮らしている雰囲気ってかっこいいです。
◆
読んでいて、
自分の血がさらさらになり、流れもゆったりしたような、
気の休まりを感じました。
今年の歳末、
その年に読んで心に残った作品を指折りふりかえるとき、
またこの作品を思い起こしそうです。
新しい本も、出てから時間が経った本も、
ことしは気持ちにしっくりとより添う作品に恵まれています。
[end]
***************************************
<----左側の
①「ライブラリーを見る」をクリックし、
②ライブラリの各本の"LINK"をクリックすると
その本を紹介した記事にとびます。
***************************************