さくらんぼとふたりんぼ 7~あもん史 妄想編~ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします



『ろくごーへGO~!!』
チェリーは朝から上機嫌であった
あもん達はこの日、麓郷へ行くことに決めたからだ
麓郷とはドラマ“北の国から”の舞台となった所であり
現在でもセットとして使用されている家などが観光地として一般公開されていた
元々過疎化していた地域だった麓郷はこのドラマと共に成長したと言えよう
その成長の大きさから富良野市までもが全国的に有名となり
北海道で道央の観光スポットして訪れる者は多かった
この日はあもんと森ケンとチェリーで麓郷へ行くことにした
あもん達はいつもみんなが一緒なわけでは無かった
元々は団体行動が苦手でひとり旅をしていた者である
昼間は好きな時間に起きキャンプ場で過ごす者や観光に行く者など
それぞれが自由に行動をしていた
ハカセは釣りに行くと言って朝早く出かけてしまった


チェリーは相変わらず人のバイクに乗るのが好きで
この日は行きはあもんのバイクに帰りは森ケンのバイクに乗って旅をした
富良野市からひとつ山を越えた所にあり意外と遠い
流石にこの辺りに来るとあもん達“内地の人間”が想像していた北海道であった
大きな山裾に広大な丘が続き平野にはほぼ直線の道が走っている
何処を見ても絶景と感じるのはこの雄大さから来ているのであろう
そもそもあもん達が想像する北海道の地というのは
この道央から道東や道北を差すのだと思われる
小樽や札幌は普通の都市であるし道南は内地でもあるような地形が続くからである
あもんの今回の旅は雨が多かったのだがこの頃から晴れの日が続いていた
景色も良ければ気分も良い、気候も少し寒いぐらいで気持ちが良かった
あもんはこの時、初めて北海道を走っていると実感をしたのだった
あもんの住んでいる広島には無い景色が次から次へと魅了させてくれる




あもん達は“麓郷の森”に着いた
ここでは黒板五郎の丸太小屋や風車の小屋があった



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自由に中に入れるようになっており意外にも狭い事を知った
『じゃぁ~あもん君は純で、私はホタル!森ケンは五郎さんよ』
とチェリーがまた、“北の国からごっこ”をしようと言ってきた
しかし“ごっこ”と言っても別に何かをする訳でもなく
ただチェリーが『お兄ちゃん』と呼ぶぐらいであった
森ケンは五郎役になったのが嬉しかったのか
この日は終日“似ていない五郎の真似”をしていた
あもんは夕張の時は高倉健でこの度は純であった為
チェリーはあもんを“不器用で頼り無い男”と見えているんだなと思った
“五郎の石の家”は先日放送された北の国から’95~秘密~によって建てられた家であったが
見ることができると言うことで少し先の方まで行ってみた
柵が設置されてあり近くまで行くことはできなかったがあもん達は『この前見たやつだ~』と単純に観光客となっていた




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『父さん…僕…富良野に帰ってきてもいいですか?』
あもんは森ケンに聞いた
『いいしょ!いいしょ!シュウと一緒にお風呂入るっしょ!』
森ケンは似ていない五郎で答えたし、何か違う気がする
チェリーも乗ってきた
『父さん…私…駆け落ちしてもいいですか?』
『や~るなら~いましかねぇ~や~るなら~いましかねぇ~』

森ケンの返しは全く違ったものになっていた








『まだ、子供が食べているでしょうが!!!』


森ケンの暴走が始まり始めたのであもんとチェリーは“北の国からごっこ”を止めた
せっかくなのでろくご展望台に行こうとバイクを進めると
“五郎がクマに襲われた所”など書かれた看板があった
チェリーはドラマ上の出来事であると分かっておりながら少し怯えていた
それからチェリーの要望によりふらのチーズ工場で試食大会を行った



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帰る途中にある公園に人だかりがあった
何かイベントをしているみたいだった
見ると、元WGPの平選手が講演を行っていた
意外にもレースが大好きな森ケンは先ほど以上に興奮をし
あもんとチェリーに平選手の凄さを語り始めた
二人ともレースにはあまり興味がなかったので聞き流しながら頷いていた
しかしあもんは平選手にブルゾンにサインをしてもらいなんだか得した気分になっていた




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暗くなる前にあもん達はキャンプ場に戻っていた
次第にそれぞれで出かけていたみんなが帰って来た
ハカセの釣りは成果があったみたいで大きなマスを持って帰った
『みんなで食べようぜ~』
とハカセは言い、慣れた手つきでマスをさばき始めた
あもんは魚などさばいたことが無かったので正直、ハカセを凄いなと思った
それにしても大きなマスである
『これってサケじゃねぇの?』
あもんはハカセに聞いた
『マスだよ。マス。サケとマスは生物学的には違いはないけど、今の時期ならマスだろ』
『知ってた?ほか弁とかのシャケ弁当ってほとんどがマス弁当なんだぜ!』
『え~マジで!知らんかった!大きいのがサケで小さいのがマスじゃねえの!』
『あはは!違うし!でも、結局、マスでも獲れたてが一番うまいし』

とハカセはマスをさばきながら話してくれた


ハカセが作ったのは“チャンチャン焼き”であった
チャンチャン焼きとは北海道の漁師料理であり
バターで焼いた魚にキャベツやもやしなどを大量に包み
味噌をたっぷりのせて蓋をし焼く料理である
味噌の蒸し焼きの状態になる
ハカセはマスをさばいた後に一匹そのままを焼き始めたので
なんとも豪華なおかずが出来上がってしまったのだ
そこにシンさんが帰って来た。どこに行っていたかは知らない
『そこでおじさんと話していたらメロン貰っちゃたよ~みんなで食べようよ~』
シンさんは顔が怖面だが、その愛嬌の良さから地元民と仲良くなるのが得意であった
福さんの彼女であるかよ作さんが味噌汁を作ってくれた
ご飯はそれぞれが焚いてみんなでチャンチャン焼きをつついた
ご飯を食べた後みんなでメロンを食べ、日本酒を飲んだ



『なんで、キャンプ場で食べる料理って美味しいんでしょうね』
あもんは酒を飲みながらシンさんに聞いてみた
シンさんなら大きな答えが返ってくると思ったがそれは予想通りだった
『やっぱ、人間って自然の中にいるのが一番自然なんだよね』
『そりゃ~自然は厳しいから暑いし寒いけど、厳しいだけじゃないんだ』
『気持ちいいそよ風や暖かい朝日や元気の出る雲なんか、やさしいと思わない?』
『料理だって一番おいしいのは直火だし、自然のスパイスが自然に入っているからね』
『大体、人間が快適な生活を誤認識しているんだ』
『寒くないようにストーブを付けるより寒さを楽しんで味わえるのが快適じゃないのかな』

シンさんの考えはあもんとの観点が全く違っていて、どんな話を聞いても新鮮である
一方、チェリーの考えもあもんにとって新鮮であった
『え~やっぱり、みんなで食べているから美味しいんだよ~』
『ひとりで食べるコンビニ弁当より、二人で食べる卵かけご飯の方が美味しいもん!』

その返答にシンさんもニコニコしながら頷いていた


福さんが持ってきていたラジオから曲が流れ始めた
『あっ、この歌!知ってる、私、歌えるもんね~』
チェリーがみんなに自慢し始めた
曲は最近徐々に話題になっている“実存しない歌手”の歌だった












チェリーは歌い始めた
『んんん~んんん~んんんんん~~』
『はい!ララ~ららら~ラララ~ラララ~』
『んんんんんん、んんんんん』
『えぇぇぇ~ラララのとこだけじゃん!』

森ケンが即座に突っ込んだ
確かにあもんでもそれだけは知っている
『いいの~ラララだけ知ってたらいいの!』
とチェリーは言ってまた『んんん♪』と歌い始めた
『この歌手は実存しているんだぜ、顔を出さないのはレコード会社の戦略だって』
ハカセがまた豆知識を言い始めた
『彼女は北海道出身で唯一、地元のラジオ番組に出ているんだ』
『聞いてみると結構、気さくで乗りのイイ女性だぜ』
『きっと、その内、みんなの前で歌い始めるぜ』



そんなハカセの話を全く聞いていなかったチェリーがみんなに言った
『さぁ~来るよ~みんな手を繫いで~みんなで歌うよ~』
その時のチェリーの勢いにみんなはハカセの話を聞き流し
全員で手を繫いで輪になった
そして曲に合わせてみんなで歌った
『ララ~ららら~ラララ~ラララ~』
『はい!もう一回!ララ~ららら~ラララ~ラララ~』

そしてチェリーは最後の一節をみんなに披露した
『ずっと、ずっと、ずぅううと一緒に居ようね~♪』

















あもんはそんなチェリーを見て思わず、可愛いと思った
多分、ここにいるみんながそう思っているであろう
あもんはチェリーが最後の一節を歌う時
あもんに微笑みながら歌っているように見えた
しかしあもんはその瞬間が妙に恥ずかしくなり
顔を伏せてしまったのである





続く