こうして、森のカーテンというかもつれにもつれた網をようやっと抜けたら、今度は落ち葉でびっしり埋めつくされたくだり坂です。
その落ち葉は、いったい何年分つもったものか、底なしに深く分厚いのです。
落ち葉の道の両側には、大きな木々がひしめき、まっくろいトンネルをつくっています。
トンネルの道は、滑るようにくだっていきます。
くだり坂では、自然と足のはこびが速くなります。
だから、まるで何かが後ろから追いかけてくるような、へんな気分になるのです。
意味もなく怖くなったわたしは、さらに足を速めました。
でも、ピピはあかるい顔をしてそばにいて、いったいどんなふうに感じているのか、だまってスイスイ進んでいきます。
それが、わたしのおびえた心を支えました。
ついに、出口の穴のような光が見えました。
トンネルの左がわの壁が薄くなり、その先にある水いろの空や、下の家々が透けて見えます。
そして、わたしたちはいきなり
ぷっ!
と吐きだされ、新しくできた老人ホームの、広い敷地のはじっこに立っていました。
老人ホームは大きな明るい白い建物で、わたしたちは山を抜け、となりの地区に来たのです。