三浦半島における放射線情報 (tokokのブログ)

横須賀を中心とした三浦半島における放射能汚染状況を話題したブログです。3月に起きた原発事故以降、ひたすら環境放射線の計測を続けています。三浦半島だけに限るなら、公園・幼稚園の空間線量、土壌放射能、農作物など、誰よりも手広く測定を行っているかも。


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 横須賀市の幼稚園では、秋の恒例行事としてみかん狩りが行われています。 

 葉物や根菜などと比較して、柑橘は比較的放射性セシウムが検出されやすいということで、みかん狩りにお子さんを参加させることに不安を感じている方もいらっしゃるようです。
(柑橘が検出されやすい理由は、土壌以外の葉や樹皮からの放射性セシウムの転流と推察されます)

 最近、横須賀市内の津久井浜観光農園で温州みかんの測定結果が発表されました。結果は放射性セシウムは不検出で、それぞれ
 - セシウム134 … 1.5 Bq/kg 未満
 - セシウム137 … 2.0 Bq/kg 未満
となっています。
 ちなみに 事故前のみかんのセシウム濃度はゼロであった訳ではなく、平成21年11月の愛媛県産のみかんで、セシウム137が 0.013 Bq/kg 含まれていました。 → 出典

 この結果を元に、三浦・津久井浜方面へのみかん狩りに幼稚園児が参加した場合のリスクの考え方についてまとめてみます。
 今回は、安全側に「放射性セシウムが最大量含まれている」と仮定してリスクを見積ってみましょう。すなわち、セシウム134は1.5 Bq/kg、セシウム137は2.0 Bq/kg の濃度で汚染されているとします。

 まず、みかん狩りで園児が食べるみかんの数を 5個 とします。みかん一個は約100グラム、そのうち可食部は80グラム(出典)ですので、園児がみかん狩りで食べるみかんの総量は 0.40 kg ということになります。

 また、このみかんには、元々放射性カリウム(カリウム40)が含まれていますが、その濃度は 46 Bq/kg 程度です。
(みかん可食部100 gに含まれるカリウム量は150 mg。これとカリウム40の同位体存在比より計算した)

 したがって、みかん狩りで園児が食べるみかんに含まれる放射性セシウムおよび放射性カリウムの総量は、
 - セシウム134 … 1.5 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 0.60 Bq

 - セシウム137 … 2.0 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 0.80 Bq

 - カリウム 40 … 46 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 18 Bq

と計算されます。

 さらに、これらの放射性物質を2~7歳の幼児が一度に摂取した場合、体外に排泄されるまで浴びる放射線量(実効線量)を見積もると、

 - セシウム134の摂取による被ばく線量 … 0.0078 μSv

 - セシウム137の摂取による被ばく線量 … 0.0077 μSv

 - カリウム40  の摂取による被ばく線量 … 0.39 μSv

となります。(計算には ICRP Pub.72の年齢別実効線量換算係数を用いた)

 というわけで、原発事故があろうが無かろうが、みかん狩りに行くことで 0.39 μSv という放射線被ばくによる発ガンリスクがあった。そこに、放射性セシウムの摂取による被ばくリスク 0.0155 μSv が上乗せされるというイメージになります。
 もちろん、放射性セシウムは最大量含まれていると仮定しているので、実際の放射性セシウムのリスクはこれ以下です。

念のため、 0.0155 μSvがどの程度の線量か比較するための例を挙げておくと、
 - 航空機の利用: 巡航高度にもよるが1時間あたり 1~2 μSv → 出典  
 - 自然放射線量の地域差: (事故前の)神奈川県の人が1日大阪府に住んだ場合に大地から余分に浴びる放射線量 0.74μSv → 出典

 みかん狩りによる放射性セシウム摂取によるリスク(最大 0.0155 μSv)を受け入れるかどうかは、保護者の判断かと思います。
 ただ、個人的には三浦・津久井浜方面へのみかん狩りのリスクは十分低いと考えています。このあたりは個人個人のリスクに対する考え方次第でしょう。

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 鍋の季節を前にして、横須賀市内のスーパー長野県産ぶなしめじ12パック(約1.2 kg)を購入しました。
( 今年2月に測定したときは1パックしか買わなかったので、検出下限値がやや高めの不検出→ リンク )



 農林水産省による、キノコの菌床用培地の指標値が今年の4月1日から施行され、そろそろ普段食べている菌床栽培のキノコがどうなっているのか調べてみようかと思っていたところ。

 なお菌床用培地の指標は、放射性セシウム濃度で最大200 Bq/kgとなっています。これは「乾燥菌床培地から生シイタケ
への移行係数が0.5 であり、これ以下であれば一般食品の基準値(100 Bq/kg)を越えることはないだろう」ということを基に定められたものです →リンク
(ぶなしめじの菌床培地はおがくずと米糠・ふすまなどの栄養材で、菌床シイタケよりも移行係数が低いことが分かっている)

-- 事故以前のぶなしめじのセシウム濃度


 測定結果を見る前に、事故前はどの程度の汚染状況だったのかまとめてみます。出典は
坂内らの論文です→ こちら

 この報告によれば、2000年10月~12月に市場に出回っていたぶなしめじ(新潟産2品、長野産3品)の放射能濃度は、
 セシウム137 平均 0.09 Bq/kg
 カリウム40  平均 100 Bq/kg (5品の標準偏差 12 Bq/kg)
でした。いずれも生試料に対する放射能濃度です。
(セシウム137については、その濃度分布の傾向から幾何平均を取っている)

 また、ぶなしめじの年間摂取量は0.68 kg ですので、事故前のぶなしめじを食すことで取り込む放射性カリウム・セシウムの量は、セシウム137が年間 0.06 Bq、カリウム40が年間 68 Bqであることが分かります。

 
以上の結果から、ぶなしめじを1年間摂取することによる成人の内部被ばく線量を計算すると、
 セシウム137による内部被ばく  0.0012 μSv
 カリウム40による内部被ばく    0.42 μSv
となります。 

 なお、この計算にはICRP Pub.72の実効線量換算係数を用いていますが、この係数には消化管から放射性物質がどのように取り込まれ、どこの組織・器官にどの程度の期間留まり、どのような経路で排泄されるか等が考慮されています。そして放射性物質が体内に存在する期間に放出される放射線(ベータ線とガンマ線)による被ばく線量(Sv)を、その摂取量(Bq)から見積もることができます。

 したがって、
事故以前のぶなしめじを食べることでも放射性物質の取り込みによる発がんのリスクがゼロであったわけではなく
 0.42 μSv(放射性カリウム)+0.0012 μSv(放射性セシウム)
のリスク(成人:1年間摂取)があったと理解することが重要」かと思います。
そう考えると、放射性セシウムの有無は、カリウム40のサンプル毎の濃度バラつき(10%程度)の範囲内であると言えそうです。

-- ぶなしめじのセシウム濃度(測定結果)

 前置きが長くなりましたが、ぶなしめじ12パック分の測定結果です。試料を風乾した後、105度の定温乾燥器で乾燥させ粉砕したものです。乾物重量比は9.323%でした。124.6g 分を容器に封入してGe半導体検出器で58時間測定しました。




その結果、
 セシウム134:  0.47±0.07 Bq/kg(生)
 セシウム137:  1.16±0.12 Bq/kg(生)
と求まりました。検出限界値は両核種ともに約 0.3 Bq/kg(生) です。

微量の検出となりましたが、一般食品の基準値(100 Bq/kg)を下回る量です。セシウム134が検出されているので、この分は事故の影響、また、同位体比を考えるとセシウム137も 0.8 Bq/kg 程度は事故由来。というわけで、事故以前よりも若干ですが放射性セシウムの濃度が増えていることになります。

 行政による検査結果を見てみると、京都市の流通品検査で5月7日に長野県産シメジから Cs-134:0.6 Bq/kg、Cs-137:0.76 Bq/kg という結果がありますので、このくらいが長野県産のブナシメジの濃度なのかもしれません。
(ちなみに栃木県産のぶなしめじはもう少し高め)


-- 現在のぶなしめじ を食したときのリスクは?


 ぶなしめじに含まれるカリウム40の量が事故以前と変わらないものと仮定して、今回測定したぶなしめじを1年間食した際に取り込む放射性カリウム・放射性セシウムの量は、
 セシウム137: 年間 0.79 Bq、
 セシウム134: 年間 0.32 Bq 
 カリウム 40: 年間 68 Bq
であることが分かります。
これから、年齢別の実効線量換算係数を用いて、各年齢階層における内部被ばく線量を見積もると以下の様になります。

  1~ 2歳 2.9 μSv(カリウム40)+0.015 μSv(放射性セシウム)
  2~ 7歳 1.4 μSv(カリウム40)+0.011 μSv(放射性セシウム)
  7~12歳 0.89 μSv(カリウム40)+0.012 μSv(放射性セシウム)
 12~17歳 0.52 μSv(カリウム40)+0.016 μSv(放射性セシウム)
 17歳以上 0.42 μSv(カリウム40)+0.016 μSv(放射性セシウム)

 というわけで、確かに事故以前よりも放射性セシウムの濃度は増えていますが、放射性物質の内部被ばくのリスクとしては、どの年齢階層においてもカリウム40の濃度変動(10%程度)に埋もれてしまう程度のものです。
 
 以上、長野県産のぶなしめじ(菌床)を食べる際のリスクについて長々と書き込んでしまいました。きのこ摂取によるリスクについて考える際に役立てば幸いです。
 もちろん、それでも放射性セシウムの摂取は少しでも避けたいとお考えの方は、無理してきのこを食べる必要はないかと思います。リスクに対する考え方は人それぞれだと思いますので。



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 家庭で毎日使用する水道水。原発事故後それなりに時間が経過しましたが、今現在、どの程度の放射性セシウムが水道水に含まれているのか、気になる人も多いかと思います。

 ここ最近の蛇口水中に含まれるセシウム濃度の精密な検査結果が文科省の資料にまとめられています。
 平成24年4月~6月(3ヶ月間採取)→ こちら
 平成24年1月~3月(3ヶ月間採取)→ こちら

 この検査では、毎日1.5リットルほどを蛇口から採取し、蒸発させて得られた残留物を3か月分まとめてゲルマニウム半導体検出器で測定しています。こうすることで、約100L分の水を測定したことに相当しますので、2Lのマリネリ容器に水道水を直接入れて測定する場合に比べ、検出限界値をぐっと引き下げることができます。
したがって、今まで検出できなかったようなミリベクレル/kg オーダーの微量放射性セシウムも検出可能になります。
(例えば千葉県の検査なら、検出下限値は0.5~0.6 mBq/kgぐらい)

 資料を見ると、放射性セシウムが検出されているのは東日本の都県です。例えば福島市における今年4~6月の水道水中の放射性セシウム濃度は、
 セシウム137: 4.8 mBq/kg
 セシウム134: 3.2 mBq/kg
となっており、半減期の比較的短いセシウム134が検出されていますので、過去の大気圏内核実験のせいではなく、今回の原発事故由来のセシウムと考えられます。
また、東京新宿区における今年4~6月の放射性セシウム濃度は、
 セシウム137: 2.9 mBq/kg
 セシウム134: 
2.0 mBq/kg
です。

 一方、最も汚染の激しかった昨年3月におけるセシウム濃度は、最大値で
 福島市 
  セシウム137: 33000 mBq/kg
  セシウム134: 25000 mBq/kg 
 新宿区 
  セシウム137:  1400 mBq/kg
  セシウム134:  1000 mBq/kg 
でした。さすがにこれに比べれば現在の水道水はかなり低い濃度であり、この1年で3桁ぐらいセシウム濃度が下がったことが分かります。
(この時期は、うちもミネラルウォーター生活でした)

 現在検出されている数mBq/kgのセシウムがどの程度の量なのかを理解するために、過去の水道水の測定データと一緒にセシウム137の濃度をグラフにしてみました。(縦軸が対数表示になっていることに注意)
昨年夏頃のセシウム検出データがなかなか見当たらないのですが、横須賀市のデータがありましたのでそれもプロットしています。

蛇口水


 グラフから言えそうなことは、 
「この1年でセシウム濃度は急激に減少し、大気圏内核実験が盛んだった時代(1960年代)に検出されていたセシウム濃度程度にまで戻った。しかし、この3ヵ月の推移をみると濃度が下げ止まったようにも見えるので、今後は今の濃度を保ったまま、事故前と同じ程度の低下率で徐々に減衰して行きそうな感じである」 ということでしょうか。
いずれにせよ、今後も3ヶ月ごとに検査結果が公表されることでしょうから、どのように濃度が推移していくのか見守りたいと思います。
 
 ちなみに、数mBq/kgという量は、事故前の海水に含まれていたセシウム濃度とほぼ同じです。( 日本分析センターの報告書 PDF:880 kByte)

 念のため、現在の東京の水道水を一年間摂取した時の放射性セシウムによる内部被ばく線量(預託実効線量)を計算すると、
  大人 0.046 μSv (年間605 L摂取)
  幼児 0.020 μSv (年間365 L摂取)
と見積もられ、自然放射線被ばくによるリスクに比べれば十分低い量です。
(水の摂取量は原子力安全委員会の資料を参考にし、実効線量換算係数はICRP Pub.72の係数を使用)

以上、水道水摂取による被ばくリスクを考える際に、これらの情報が役に立てば幸いです。

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福島県外の住民が2011年3月に受けた被ばく線量に関する論文を読みました。
その中で、関東各地に住む成人の(主にヨウ素吸入による)内部被ばく線量が
推定されています。多くの方が興味をお持ちとだと思われたので概要を説明します。
(「昨年3月15日、関東地方にプルームが到達しているのも知らず
子どもを外で遊ばせてしまった」と後悔されている方、たまにお見かけしますので…)


 著者はIAEAに所属するカナダの研究者N.D.Priest氏。
福島県以外の地域に住む人の内部被ばくを含めた被ばく線量を評価し、
特に外国の機関が事故当時の一時的な滞在者への対応する際の参考になれば…
というのが動機のようです。
要するに福島県以外の人は汚染食材の
出荷規制以外に
避難措置など特別な予防
措置が取られてこなかったが、
それで本当に問題なかったのか検証するという目的だと思われます。

元論文はこちら(有料)、さらに詳しく知りたい方はどうぞ。

 論文では、事故直後3月15日から3月28日までの2週間における
外部被ばくおよび大気中の放射性物質吸入による内部被ばく
(預託実効線量)、さらにヨウ素摂取などに伴う甲状腺に対する等価線量を、
インターネット上に公開されている情報を元に
福島県を除く関東・東北の各県の成人について見積もっています。

 なお、この論文で評価した線量は、この2週間を常に屋外で過ごした
場合を仮定
したものであることに注意してください。
(実際には建物による放射線遮へい効果や、壁・フィルタ等による放射性物質の
建物内進入遮断効果があると考えられるので、安全側の評価になります)



*吸入摂取による内部被ばく

 大気中を漂う放射性物質の量は、
  * 群馬県高崎市のCTBT (データ)
   * 千葉県千葉市の日本分析センター (データ)
   * 東京都立産業技術研究センター (データ)
の3機関から公表されています。
 これらのデータを元に、成人男性の呼吸量を1日あたり23000リットルと仮定し、
大気中の放射性物質を屋外で吸い続けた場合の摂取量を求め、
取り込んだ放射性物質による内部被ばく線量(預託実効線量)を
見積もっています。
 ちなみに、国際放射線防護委員会(ICRP)の報告では、
成人男性の1日あたりの呼吸量は22200リットルであるとしています。
(ICRP pub.71,睡眠0.45m3/hで8.0時間、座った姿勢での活動0.54m3/hで6.0時間、
軽作業 1.5m3/hで9.75時間、重作業 3.0m3/hで0.25時間)


 以下の図は、各地の成人男子に対する吸入による内部被ばく線量と
核種毎の寄与
を示しています。
(摂取量から線量への換算はICRP pub.72の実効線量換算係数を用いている)



内部被ばく

 このグラフから分かることは、
  (1) 内部被ばくの9割程度が気体・粒子状のヨウ素131の摂取に起因
  (2) いずれの3地点も若干の差こそあれ、放射性核種の寄与率はほぼ同じ
ということでしょう。
 念のため他機関による評価と矛盾がないか確認したところ、
日本分析センターが独自に評価した
千葉市における吸入摂取の内部被ばく
(3月14日~3月29日の合計で67.6μSv)とは矛盾がありません。
ただし、放医研による見積もり(3月14日~4月11日の約1ヶ月間の東京における
吸入内部被ばく 約21μSv)と比べると、線量が大きく見積もられています。
この理由は、千葉のデータは気体状・粒子状のヨウ素をほぼ100%捕集できる
活性炭フィルターを使用して測定したものであるのに対し、東京のデータは粒子状の
ヨウ素のみ収集できるフィルターを使用した結果であることに起因しています。
すなわち、放医研の見積では(ホームページにも断りがあるように)
気体状のヨウ素摂取による線量を評価していないために、
内部被ばくを過小評価してしまっています。
 気体状ヨウ素の寄与を考慮するために、この論文では、
ヨウ素131の75%が気体状、25%が粒子状であったと仮定して
摂取量や被ばく線量を推定しています。
この仮定はCTBTの推奨する概算値(気体:粒子=4:1)と大きく矛盾しないものです。
また、Te-132やCs-136など、千葉や東京で測定されていない核種の寄与は、
高崎におけるCs-137に対する比から、大気中濃度を推定しています。


*外部被ばく線量との関係
 さて、この3地点のモニタリングポストの数値から、3/15~3/28の2週間を
屋外で過ごした場合の
外部被ばく線量(自然放射線を除く)を計算すると 、
 高崎: 26.1μSv,千葉: 14.9 μSv,東京: 21.4 μSv

となり、内部被ばくと同様に外部被ばく線量の大きさも
高崎→東京→千葉の順になっています。
さらに、
外部被ばくに対する吸入摂取による内部被ばく線量の比を取ると、

 高崎: 4.8、千葉: 4.4、東京: 3.6
となり、ほぼ4程度であるとなることが分かります。
 そこでこの論文では、各地に到達した放射性物質の割合や沈着具合などが
おおむね同じと考え、これら3地点の平均比率4.3を関東各地で測定された
外部被ばく線量にかけることで、他地域における吸入摂取による
内部被ばく線量を見積る
というかなり大胆な仮定に基づく評価を行っています。
(大胆とはいえ、他の地域の吸入被ばく線量をざっくり見積もるには
それほど悪くない仮定かなという印象を持っています。)



*関東各地の外部・内部被ばく線量
 以上の仮定を元に、関東圏の他の地域で測定されたモニタリングポストの
線量から自然放射線の寄与(プルーム到達前の値)を差し引き、
3/15~3/28の期間で積算した外部被ばく、それに係数をかけて得られた
内部被ばく甲状腺等価線量の推定値をまとめてマッピングしてみました。
(なお、甲状腺に対する等価線量については、上の3地点でそれぞれ、
 高崎: 2.33 mSv,千葉: 1.12 mSv,東京: 1.36 mSv
と見積もられているので、甲状腺等価線量と外部被ばく線量の比として
3地点の平均値77を係数として用いています。)




成人_関東




 図から読み取れるように、この期間の内部・外部被ばく線量の合計値は、
成人に対する実効線量で茨城 0.40 mSv、栃木 0.22 mSv 、群馬 0.15 mSv
の順となっており、5県が0.1 mSvを越しています。
ただ、いずれの県も日本の一般公衆に対する年間線量限度 1 mSvを
越しておらず、またICRPの避難基準 年20 mSvも越さなかったというのが、
この論文の結論です。


*子供の場合はどうなのか?
 論文には記述がありませんが、子供はもっと影響が大きいのでは?という
疑問があると思うので、この論文と同じ手法で線量を見積もってみます。
子供の呼吸率は、年齢が下がるにつれて小さくなりますが、
吸入した放射性物質の量から内部被ばく線量へ換算する係数は、
子どもの方が一般に大きくなります。
 ここでは呼吸率としてICRP pub.71の値(例えば放医研のこのページの一番下)を
使います。また、各年齢ごとの吸入摂取による実効線量換算係数は、
ICRP pub.72の値を使います。外部被ばくの線量は、恐らく緊急時ということで
1Gy = 1Svという換算をしているはず(論文には特別な記述無し)なので、
各年齢とも同じものとします。
(厳密に言えば自分の体によって臓器が遮蔽されるので、外部被ばく線量は子どもの方が
若干大きくなります。モニタリングポストの値(Gy/h)から実効線量を換算するときは、
成人なら1Gy ~ 0.7 Sv倍、幼児なら1Gy~0.9Sv程度になります。 ICRP. pub74より)

 以下に、高崎・千葉・東京の順で各年齢ごとの被ばく線量の見積もりを載せます。
被ばく線量_高崎千葉

内部被ばく_東京

 呼吸量は若いほど少ないですが、放射性物質(特にヨウ素)吸引によるリスクが
子どもの方が高いため、成人よりもむしろ1~2歳児でもっとも内部被ばく線量が
高くなっている
ことが分かります。
 成人の場合と同様に、3地点の平均として外部被ばく線量→内部被ばくの係数を
求めると、
 0-1歳: 4.3倍、1-2歳: 7.4倍、2-7歳: 7.2倍、
 7-12歳: 6.5倍、12-17歳: 5.6倍
となります。また、外部被ばく線量→甲状腺等価線量の係数は、
 0-1歳: 81倍、1-2歳: 142倍、2-7歳: 140倍、
 7-12歳: 123倍、12-17歳: 104倍
です。

*横須賀は?
 準備が整ったので、地元である横須賀市浦賀中学校のモニタリングポストから、
3/15~3/28の期間ずっと屋外で暮らした場合の推定被ばく線量を
計算してみました。モニタリングポストのデータは、こちらからCSV形式で
ダウンロードすることができます。プルームが届く前の3/14のデータを
バックグランドとみなし、この期間の線量を積算し、1 Gy = 1 Svとして
実効線量を求めます。以下に、被ばく線量の計算結果をまとめます。

内部被ばく_横須賀浦賀

*で、どんなリスクがあるのか?
 横須賀の場合、内部・外部合わせた実効線量が1~2歳児で
224μSv = 0.224 mSvとなっています。この分余分に発ガン等のリスクが増加した
と言えますが、自然界から受ける被ばく線量の世界平均が2.4 mSv、
日本人平均が1.5 mSvである事実から考えて、0.22mSv分のリスク増加が
どの程度か、イメージできるかもしれません。
(一般公衆10万人に平均1mSvの被ばくが起こると、この放射線起因の生涯がん死亡数は
5人と計算される。日本のがん死亡は全死亡の約1/3であるから、1mSv被ばくによりがん死亡は
約3万人+5人になる。ATOMOICAより引用


 また、甲状腺等価線量が1~2歳児で3.5 mSvと見積もられていますが、
これがどういうリスクかについて一言。
 例えば原子力安全委員会の資料をみると、チェルノブイリの調査から得られた
小児甲状腺がんの発症リスクは、
1 Gyの被ばくで年間1万人当たり2~3件である
ことが分かります。1Gy = 1 Svとすると甲状腺等価線量で3.5 mSvという量は、
計算上100万人あたり年間 0.7~1.1件の甲状腺がん追加発症
のリスク
相当することになります。
 なお、この計算でいくと、上記マップでもっとも線量の高かった水戸の
1~2歳児の甲状腺等価線量は11 mSv程度になります。
何度も書きますが、この計算は常に屋外にいた場合の見積もりです。

ここで述べた評価方法はかなり大雑把ですが、
近くのモニタリングポストのデータから吸入による内部被ばくを
ラフに見積もることが出来るという点でよいかと思い紹介致した次第です。
以上、長文にお付き合い頂きありがとうございました。



(付録)この論文の仮定など

(1) モニタリングポストの空間線量を、外部被ばく線量の代表値とする。
モニタリングポストの高さ(例えば東京は地上18mに設置)などは考慮しない。
(2) 関東圏全ての場所で同じプルームに晒された。すなわち、含んでいる
核種の比率は同じとする。ヨウ素131は気体:粒子=3:1
(3) 食物などからの経口摂取による内部被ばくは考えない。

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原発事故以前(~2010年)における畑のセシウム137放射能濃度のデータが、
農業環境技術研究所のホームページに公開されています。

http://psv92.niaes3.affrc.go.jp/vgai_agrip/sys_top.html

そのデータを元に、畑のセシウム137濃度の推移をグラフにしてみました。
青い点がその年における全国平均、オレンジの棒が各地の濃度のばらつきを表す標準偏差です。

作土層中のセシウム


1960年代前半までセシウム137の濃度が上昇し、
1960年代半ばから減少に転じるというグラフになっています。
これは、1963年まで米ソによって盛んに行われた
大気圏内核実験」による核分裂生成物の降下の影響です。

1963年に米ソ英で結ばれた「部分的核実験禁止条約」によって、
それまでビキニ環礁など大気圏内で行われていた核実験が地下に移りました。
その影響が、グラフに判りやすく表れています。
この条約が結ばれてからは、セシウム137の半減期(30年)にほぼ従ってゆっくりと減衰し、
2010年における全国平均とそのバラつきは 6.4±2.2 Bq/kg となっていました。

さて、このデータと、事故後の2011年9月9日に三浦市初声町の
下宮田と高円坊の2か所の生産農家の畑で採取した耕作土
(※耕作機でよく撹拌された土0~5cm)のセシウム濃度を比較してみます。

*三浦市初声町下宮田の耕作土:
 セシウム137 10±4 Bq/kg(乾土)
 セシウム134  5±2 Bq/kg(乾土)

*三浦市初声町高円坊の耕作土: 
 セシウム137  9±3 Bq/kg(乾土)
 セシウム134  5±2 Bq/kg(乾土)

事故前には存在しなかったであろう「セシウム134」というオマケが
5 Bq/kg 程度増えてしまいましたが、セシウム137だけで比べると、
現在の三浦の畑のセシウム濃度は
1990年~2000年ぐらいの汚染レベルに戻った程度であることになります。

三浦の農作物のページにまとめていますが、
三浦の葉物や根菜でこれまでセシウムを検出したのは
検出限界値を目いっぱいに下げて測定した下宮田の白菜
セシウム137 0.085±0.024 Bq/kg)だけです。
事故前(1997年)の白菜は0.03 Bq/kgだったというデータがありますが、
これと比べ差はそれほど大きくありません
(有意な差があるかどうか判断するにはもっと測定精度を上げる必要があります。)
※H24.8.10追記 環境科学技術研究所の塚田さんの資料をみると、
事故前の青森の白菜6サンプルの平均が0.079Bq/kgとありますので、
三浦の白菜は事故前と同じレベルと思ってよいです。)

三浦大根に至っては検出限界値 0.055 Bq/kg で不検出でした。
これも事故前のデータ(ダイコン 0.04 Bq/kg)と矛盾ありません。

という訳で、2ヵ所の農家さんしか調べていないとは言え、
三浦の主力農作物である葉物や根菜について、
放射性セシウムを気にする必要は無い
と言えそうです。

三浦のダイコン畑を見たことがある人なら分かると思いますが、
これだけ広大な畑の汚染が少なかったことは、まさに不幸中の幸いです。
地元の野菜をおいしく食べられることがどんなに素晴らしいことか、
今回の事故をきっかけに知ることが出来ました。

三浦の畑



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