葉物や根菜などと比較して、柑橘は比較的放射性セシウムが検出されやすいということで、みかん狩りにお子さんを参加させることに不安を感じている方もいらっしゃるようです。
(柑橘が検出されやすい理由は、土壌以外の葉や樹皮からの放射性セシウムの転流と推察されます)
最近、横須賀市内の津久井浜観光農園で温州みかんの測定結果が発表されました。結果は放射性セシウムは不検出で、それぞれ
- セシウム134 … 1.5 Bq/kg 未満
- セシウム137 … 2.0 Bq/kg 未満
となっています。
ちなみに 事故前のみかんのセシウム濃度はゼロであった訳ではなく、平成21年11月の愛媛県産のみかんで、セシウム137が 0.013 Bq/kg 含まれていました。 → 出典
この結果を元に、三浦・津久井浜方面へのみかん狩りに幼稚園児が参加した場合のリスクの考え方についてまとめてみます。
今回は、安全側に「放射性セシウムが最大量含まれている」と仮定してリスクを見積ってみましょう。すなわち、セシウム134は1.5 Bq/kg、セシウム137は2.0 Bq/kg の濃度で汚染されているとします。
まず、みかん狩りで園児が食べるみかんの数を 5個 とします。みかん一個は約100グラム、そのうち可食部は80グラム(出典)ですので、園児がみかん狩りで食べるみかんの総量は 0.40 kg ということになります。
また、このみかんには、元々放射性カリウム(カリウム40)が含まれていますが、その濃度は 46 Bq/kg 程度です。
(みかん可食部100 gに含まれるカリウム量は150 mg。これとカリウム40の同位体存在比より計算した)
したがって、みかん狩りで園児が食べるみかんに含まれる放射性セシウムおよび放射性カリウムの総量は、
- セシウム134 … 1.5 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 0.60 Bq
- セシウム137 … 2.0 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 0.80 Bq
- カリウム 40 … 46 [Bq/kg] × 0.40 [kg] = 18 Bq
と計算されます。
さらに、これらの放射性物質を2~7歳の幼児が一度に摂取した場合、体外に排泄されるまで浴びる放射線量(実効線量)を見積もると、
- セシウム134の摂取による被ばく線量 … 0.0078 μSv
- セシウム137の摂取による被ばく線量 … 0.0077 μSv
- カリウム40 の摂取による被ばく線量 … 0.39 μSv
となります。(計算には ICRP Pub.72の年齢別実効線量換算係数を用いた)
というわけで、原発事故があろうが無かろうが、みかん狩りに行くことで 0.39 μSv という放射線被ばくによる発ガンリスクがあった。そこに、放射性セシウムの摂取による被ばくリスク 0.0155 μSv が上乗せされるというイメージになります。
もちろん、放射性セシウムは最大量含まれていると仮定しているので、実際の放射性セシウムのリスクはこれ以下です。
念のため、 0.0155 μSvがどの程度の線量か比較するための例を挙げておくと、
- 航空機の利用: 巡航高度にもよるが1時間あたり 1~2 μSv → 出典
- 自然放射線量の地域差: (事故前の)神奈川県の人が1日大阪府に住んだ場合に大地から余分に浴びる放射線量 0.74μSv → 出典
みかん狩りによる放射性セシウム摂取によるリスク(最大 0.0155 μSv)を受け入れるかどうかは、保護者の判断かと思います。
ただ、個人的には三浦・津久井浜方面へのみかん狩りのリスクは十分低いと考えています。このあたりは個人個人のリスクに対する考え方次第でしょう。