カゲロウプロジェクト想像小説。透明アンサー。 その1。 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 カゲロウプロジェクト想像小説。透明アンサー。

 前書き。

 この小説は、カゲロウプロジェクトの自己解釈を元にしています。原作にはないキャラクターや独自解釈、設定、物語、キャラ改変等を含みます。


 キャラクター紹介。

 トガ。

 シンタロー改変キャラ。天才。物を見ただけでその構造を理解出来たり、数学に置いては高い演算能力を発揮する。「見ただけで答えがわかる」というような能力を持つ。

 反面、努力せずとも解答を得るので、自分独自の目的意識を持てない。「全ては代替可能」との考えから、自分が生きる理由を見いだせない。

 カガリ。

 アヤノ改変キャラ。容姿も大きく違う。基本的に劣等生だが、ポジティブで、物事を明るく考える事に長ける。自分の発想を活かした創作を好む。

 茶髪のショートカットで、Yシャツの上に学校指定の物とも違う、男性用の水色のネクタイを着用している。


 序。

 ずっと君に言えなかった事を言おうと想う。

 これはきっと、私の最期の言葉だから。

 はっきりと言えば。

 きっと私は君の事が嫌いだった。

 何もかもをわかっているというような、その諦めた表情が嫌いだった。

 ただ平気な顔で、どんな事でも淡々とこなし、解決してしまうその能力の高さが嫌だった。

 それなのに、「自分には生きる意味がない」だなんて、甘えた事を言うのが嫌いだった。

 結論から言って。

 私は君の事なんか大嫌いだったのだ。


 出会い。中学3年生。

 俺に言わせれば、世の中のほぼ全ての物は代替可能である。

 この日本に溢れている、「とにかく大学まで行ってサラリーマンに就職」というごく一般的な人間は「社会の歯車」に例えられる。

 しかし、突き詰めていくと、どんな職業を選んだとしても必ずその人間の「代わり」はいる。その人間が仮にいなくなったとしても、すぐに「歯車」は充填され、しばらく経てばもう平気な顔をして社会は回る。

 まあ世の中なんてそんなもんだ。

 大人に言わせれば、俺のこういう考えは「ニヒリズム」というらしい。厭世主義とか言ったか。

 俺が中学3年生にしてそこまで世を厭うのは、結局、俺の才能が影響しているのだろう。

 俺には全ての、ありとあらゆる物事の「答え」が見えてしまう。物を見れば、それがどのような工程を経て作られたが分かってしまう。なので、それを再現する事は容易だし、無駄な工程を省き、必要な工程を付け加えることで、「オリジナルよりも完成度の高いコピー」をたちどころに作ってしまう。

 特に俺の能力は数学関係に顕著に現れる。俺は一度も計算過程をノートに取った事がない。頭の中で全ては暗算により完成し、紙にはただその答えを書くだけで良かった。

 しかし、何事にも全て「答え」を弾き出す俺の才能は、きっと俺の健全な「心の成長」を妨げたのだろう。なんて、いかにもカウンセラーが言いそうな事を宣ってみる。

 俺には「目的意識」がない。

 与えられた「問題」にたちどころに「解答」を与える事は出来る。しかし、俺は例えば「まっさらなキャンパスにさあ絵を描きなさい」と筆を渡されても、何もする事は出来ないだろう。

 そこには明確に規定された「問題」がないからだ。

 心のない「演算機械」。

 きっと俺はそんな風な構造をしている。

 そんな俺は良く出来た「歯車」に過ぎず、俺の代わりの「歯車」だって、きっと世界には事欠かない。

 正直な所、俺は「生きていて楽しい」と想った事が一度もない。空疎に笑顔を形だけ作るのは得意だが、やがてそれも虚しくなってしまって、もう表情筋が固まってしまったように無表情を貫いている。

 「生きている意味」も良く分からない。今日生きている理由が分からない。自分が呼吸し、この世に存在している事と、自分が呼吸を止め、この世に存在しない事の違いが明確に規定出来ない。

 生きていても死んでいてもどうでもいいが、それでもただ何となく生きている。

 そんな亡霊のような天才、それが俺という人間だ。


 学校、義務教育課程の最後の年である、中学3年生という時分にも溢れているのが「テスト」という物だ。

 漢字の小テスト、英単語の小テスト、数学の小テスト、中間考査、期末考査、高校受験。

 俺は「テスト」という物に関しては、満点しか取った事がない。

 20点が満点であれば20点、100点満点であれば当然100点。

 答えが見えるのだから仕方がなかった。分かりやすく言えば、テスト答案の脇に、解答が並べて置いてあるような物だ。

 書き写すのに失敗する訳もないだろう。

 そんなある1つのテスト、夏休み前の期末考査が帰ってきた時の事だった。

 俺はテストの結果を見る事もなく、鞄に突っ込もうとした。見る必要がないからだ。

 しかし、その腕は、鞄の中に伸びる前に、ガシッと何者かに掴まれた。

「カガリか? 何だ」

「ナチュラルに呼び捨てですか……。君って頭良いの?」

「さあ」

 カガリは俺の手から答案を奪い取った。特に抵抗する必要を感じなかったが、正直、あまり良い気分ではなかった。当たり前だが。

$天田晃司のブログ

「ぜ、全部100点……」

「100点以外に取った事がない」

「な、何それ……それって凄いカンニングとか?」

「ある意味ではそうかもな……だが、全教科100点を取る生徒は、このクラスはおろかこの学年にすらいないはずだ。経験則から言えば」

「ど、どういう意味なんだ……謎過ぎるね君」

「トガだよ」

「え?」

「名前だ。俺には名前が付いているんだから、正しく呼んでくれ」

「正しくって何? トガくんって面白いね!」

「面白いかどうかは知らないが……用が済んだのなら返してくれないか?」

 俺はカガリからテストの用紙を受け取ると、綺麗に畳んで、鞄の中にしまった。

 テスト返しは帰りのホームルームでまとめて行われていた。

 カガリが何か言いたそうな顔をしていたが、俺はそのまま教室を出、下校した。

 次の日からの出来事で俺は教訓を得るのだが、話をしたそうにしている人間がいた場合、その時にちゃんと聞いてやる事だ。

 でないと俺のように痛い目を見る。


透明アンサー。その2。



 天田晃司のAmazonカゲプロショップ。

 天田晃司のツイッター。

 

 というワケで早速イラストを描いてくれた、トリキチさんの挿絵を入れさせて頂きました!

 ジェバンニだぜ! それに何かイラストがシャープで挿絵っぽくて良いです!