拝啓、ステージの神様。
撮影現場レポート(後編)です。
俳優として『オーシャンズ11』や『ショーシャンクの空に』など、話題の舞台にも数多く出演する角川裕明氏が、ミュージカル映画監督として初の長編ミュージカル映画『蝶~ラスト・レッスン~』を製作中。
その撮影現場レポートの後編をお届けします。(前編はコチラ)
1月某日/都内ハウススタジオ~撮影2日目
3階建ての白亜のハウススタジオで撮影は2日目を迎えていた。
スタッフの機敏で的確な動きで、撮影は順調に進んでいた。
出番のないキャスト達は、時折上の階から撮影の様子をチェックしつつも、
おおむね3階の一室にある控室にいた。
彼らの間に流れる空気は、明らかに二日前のリハーサルとは違っていた。
互いのキャラクターにツッコミを入れたりしつつ、リラックスした表情も見られる。
瞬発力と順応性が如何なく発揮されているという感じ。
階下では、物語のクライマックスに近づく園香(AKANE LIV)と
駿雄(芋洗坂係長)のシリアスなシーンのリハーサルがはじまった。
スタッフが微調整にあたる間、何度も台詞を読み合わせ、確認する2人。
これまでユーモラスな役を演じる機会の多かった芋洗坂係長だが、
今回は深い傷を持つ絵本作家という役どころだ。
角川監督の「よーい、ハイッ」の掛け声がかかると、和やかに談笑していた控室も一瞬息を飲み、
シーンと静まる。目に見えない連帯感がキャストとスタッフの間に生まれていることを感じる。
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撮影は時間との勝負、そして屋外でのシーンは天気との戦いでもある。
後日予定していた公園でのシーンを、助監督の中泉裕矢、撮影の河野晋也らスタッフの機転で急きょ行うことに。
1月の寒風吹く中、暮れる陽と競いながら、若者らしいシーンが撮影されていく。
このシーンが撮影できたことで、翌日のスタッフの入り時間が若干遅くできることになったという。
スタッフの士気もグンと高まる瞬間だった。
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1月某日/都内ホール~撮影最終日
この日の午前中、物語のクライマックスシーンを撮り終え、
AKANE LIV、芋洗坂係長、ダンサーの青年・榛名佐久弥役の上口耕平らはすでに撮影を終了し、
残るは数シーンのみ。
キャストとスタッフの間に流れる空気は、より親密かつリラックスしていた。
子役から活動する女優・大越舞彩を演じる甲斐知恵子は妹的存在、
元サッカー青年の飯塚慎次を演じる染谷洸太は、自身の動きやタイミングを試したり監督に提案するアイディアマン。
ママさん女優の山口咲を演じる宮本京佳は、快活な動きで場の雰囲気をオープンにする貫禄を持ち、
悩めるダンサー長谷川美麗を演じる井上美希は、不器用な真っ直ぐさを役と自らに重ねあわせながら演じていた。
ピアニストの青年・林丈瑠を演じる臼井ミトンは、その飄々とした雰囲気が役そのもので愛され&いじられキャラといったところだろうか。
『蝶~ラスト・レッスン~』は、そのタイトルからも想像する通り、さなぎが蝶になりはばたくが如く、もがき、ぶつかりながらゆっくりと羽根を広げていく人間たちの物語。
今作に参加したキャストらは、その道程を限られた撮影時間の中で表現することに力を尽くした。
スクリーンの中で彼らが何色のどんな形の羽根を開いて見せるのか期待が高まる。
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そして、メイド・イン・ジャパンのミュージカル映画を作りたいという志を掲げ、
これに賛同する仲間たちと今まさに産みの苦しみを味わっているミュージカル映画監督・角川裕明。
彼の挑戦も、作品が産声を上げる瞬間に、また形やサイズを変えて広がり続けるに違いない。
今作は、クラウドファンディングプラットフォーム「Motion Gallery」 において出資を募り、
webによる映画配信サービス「LOAD SHOW」での6月先行公開を予定している。
(ライター/栗原晶子)