公共工事の労務単価を考える | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

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先日のエントリ『疑惑のグラフ』には多くの反響があった。多くの方がフェイスブックやツイッターで取り上げてくださったようで、ありがたいことである。そのほとんどは主旨に賛同する内容だったが、エントリの内容を批判して、三橋さんを擁護するコメントも見受けられた。


エントリでは、三橋さんが労務単価の一番落ち込みの激しかった長崎県のデータを使ったことに対し、全国平均の数値で論ずるべきだとして下記のグラフを提示した。残念ながら職種別の全国平均のデータがどこにも見当たらなかったので、全国・全職種平均のグラフを使ったのである。


これに対し、これでも2000年に労務単価が大きく低下するなど、三橋さんの示したデータとほぼ連動しているから問題ないと擁護する意見があった。両方を見比べればどちらが激しく下がっているかは明らかで話にならないが、そもそも論点はそこではない

問題は、全国のデータも各県のデータもあるのに、わざわざリンク先まで出典を確かめに行く私のような物好きでなければ気づかないチャンピオンデータで全体を論じていることだ。第一、私は2000年に労務単価が激しく下がり、それ以降も下がり続けていることは否定していない。

逆のチャンピオンデータである東京を取り上げて長崎と比較したのは、特殊な例を一般化して論じてはいけないという事例を示したかったからだ。

そして、もう一つの問題は『疑惑のグラフ』は2010年までのもので、労務単価が減少から増加に転じた最近のデータが掲載されていないことだ。ところがそれがわかる上記のグラフも次の注釈を根拠に労務単価がグラフどおりに引き上げられたとは言えないという意見が出てきた。

  単価算出手法の大幅変更
  ・法定複利費相当額の加算
  ・入札不調状況に応じた補正
             等を実施

しかし、この人は労務単価とは何かが分かっていないようだ。三橋さんも「(政府が)労務単価を、背筋が寒くなるほどの勢いで削っていった」と言っているから同様に勘違いしている節があるが、労務単価は政府の思惑で簡単に上げたり下げたりするものではない

そこで、公共工事の設計労務単価はどう設定されるのか国土交通省の資料で確認してみよう。
尚、赤字の部分は、人手不足を反映して市場の労働賃金が上がり始めた平成24年度の資料にのみ記載されている。

公共工事設計労務単価について 参考資料1(国交省)

労務単価の決め方は法令により決まっているのである。そして、基本的には賃金支払いの実態をベースに決めており、いわば労務単価を決めているのは建設業者なのである。
そして上記資料には、震災後の平成24年になり支払い単価の上昇が激しくなったことを受けて、年の途中から補正を始めたことが次のように書かれている。

→H24設計労務単価については、労務費調査後、労務単価の変動が見られたため、統計調査
 の結果等を活用し、上記により算出した単価を最新月へ補正

そこを理解したうえで一番下の『予定価格の積算体系』を見れば、労務単価の位置づけが分かるだろう。法廷複利費相当額を加算したり、入札不調状況に応じた補正をして加算単価算出方法を大幅に変えたのは建設工事の予定価格を上げるためだった。

国、地方公共団体などの公共工事の発注者はこの労務単価で予定価格を計算する。つまり、平成25年度以降のデータはそれ以前のデータと連続性がある。だから、平成26年の数値を「平成12年並の水準」だと以前のデータと比較できるのである。

つまり、法令の範囲内で入札不調などの実態を踏まえて補正し、三橋さんの主張するように労務単価を上げた結果が平成25年、26年の数値なのである。また、平成24年度も実際にはグラフの数字より高く補正された労務単価が採用されていたようだ。

歴代政府が公共事業を削減し続けたことが建設市場の供給過剰を招き、それが労務単価を間接的に引き下げたことは確かだ。しかし、政府が意図的に「背筋が寒くなるほどの勢いで削っていった」わけではないのである。では、なぜ労務単価はあれほど激しく下がったのか。

公共事業の多くを担っているのは国より地方公共団体だが、そこに対して今年1月に国土交通省と総務省からつぎのような要請が出されている。

予定価格の適正な設定について

内容はリンクを参照いただきたいが、発注者は予定価格を守り、一方的な値切りをするなという主旨だ。地方自治体に定着してしまっている「歩切り」つまり、予算の制約などから適正な積算にもとづく設計書金額から一定の率で値引きさせるなどの行為を禁じているのである。

この様な通達は繰り返し出されているようで、元請けが値切られ、下請け、孫請け、そのまた下請が値切られる悪弊がずっと続いてきた業界なのである。その結果、建設労働者の実態賃金も大きく下がり、それが翌年の労務単価に反映されることが繰り返されるマイナスのスパイラルに陥っていたのである。

『疑惑のグラフ』を使ったエントリで三橋さんは「市場に合わせた水準に労務単価を引き上げれば、応札不調の問題はなくなります」と述べた。しかし、いま見てきたように政府は市場に合わせた水準に労務単価を上げているし、応札不調の問題にも補正で対応しているのである。

しかも、実勢の賃金にそれが反映できるように自治体に働きかけてもいるのである。
三橋さんが、以上のような実態を知ったうえで労務単価の上がり方がまだまだ不十分というのなら、民間の建設への影響をどうするのかも含め、もっと具体的な提言をするべきである。

(以上)

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