新成人とサリン事件 | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

明日が成人の日ですね。

新成人というのは学年で定義するものだそうで、今年の成人の日に成人を祝われるのは、1994年4月2日から1995年4月1日までの生まれの人ということになります。彼らの生まれた年度は、いわば「サリン元年」。松本サリン事件(1994年6月)と地下鉄サリン事件(1995年3月)が、ともにこの年度に起こっています。

大学で教師をしていると、授業の中で社会問題について話す際、「何年に起こったあの事件の例にも見られたように……」と、歴史的な例を挙げて話をすることが多いのですが、受講生の世代は年ごとに若い世代になってゆくわけですから、最初は「みなさんも記憶していると思いますが……」と言いながら話せていた話題が、数年のうちに「みなさんはまだ物心ついていなかった時代の話ですが……」と言い直さなければならなくなってゆきます。

松本サリン事件で河野義行さんが犯人であるかのような疑いをかけられて、ひどい目にあったという話なども、2001年ごろの大学生に話したときには「みなさんも記憶していると思いますが」で話せたのですが、ほどなく「みなさんはまだ物心ついていなかった時代の話になりますが」と断わって、一から話さなければならない話題となりました。

そして、気がついてみると、来年度からは「みんさんの大多数はまだ生まれていなかった時代の話になりますが」と言わねばならないことになりました。

大学で教養科目担当である私の教室に集まる受講生は、たいがい1~2年生です。そこで、「サリン元年」生まれが3年生になってしまう来年度からは、受講生の大多数は、「サリン元年」にはまだ生まれていなかった世代ということになるわけです。

「サリン事件」というと、カルト教団による凶悪犯罪という側面だけが高校までの教育上で強調されているかもしれませんが、じつは、松本サリン事件が起こってから地下鉄サリン事件が起こるまでのあいだ、半年以上にわたって続いた、河野義行さんに対するいわれのない嫌疑と迫害という、もうひとつの側面を見落としてはいけません(警察だけでなく、マスコミと、その情報に踊らされた多くの一般市民が、事件の被害者である河野さんを逆に被疑者あつかいして、迫害する側にまわったのです!)。サリン事件当時まだ生まれていなかった世代が大学教育を受けるこれからの時代、「松本サリン冤罪事件」のほうの情報を、ますますしっかり教えねばと思います。

あの冤罪事件をほぼ事実どおりに描いた映画『日本の黒い夏』(熊井啓監督)は、若者必見の映画です。